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アイテムBOXに北海道丸ごと入っているので、異世界でも食べるものには困りません  作者: 柚木 冬


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2*面接っぽくなってきた

「今は、イベント会社にお勤めなんですね。どんなイベントを主にされているんですか?」

「色々ですね。小さいものだとカフェでの展示会や、新商品発表会のパーティや、アイドルのイベント、外科医会のシンポジウムとか。ファッションショーや万博のお手伝いもしました」


「すごいですねー。その中で花音さんはどんなお仕事をされているんですか?」


「主に事務方ですね。スケジュール立てて業者との折衝とか予算管理。でも人数の少ない会社なので、大きなイベントになると駆り出されることがありますね。現場で進行管理とかトラブル対応とか」


「色々されていたんですねー。大変だったイベントってあります?」


 佐伯さんが聞き上手で盛り上げてくれるので、問われるままに色々と話してしまう。

 何だか転職の面接みたいな気分になってきた。

 ついついよく見せようと大きく話してしまう。


 嘘は言っていない。やってきたことも全て真実だ。でもちょっと盛って、あたかも自分が仕切っていたみたいな空気を醸し出してしまっただけだ。いや、単なる事務方なんですが。

 大きなイベントは大きな会社が上にいるので、現場に駆り出されても小間使い的な仕事ばかりだ。


「そして仕事で成果を出されてマネージャーに就任。32歳の3月3日に突然逝去されたと。かなり忙しい仕事環境でしたか?」


「忙しいは忙しいですね。イベント前だと終電になることも多かったです。イベントも土日が多いので休日出勤が多かったです。でも代休も貰えてましたし、パワハラとかもありませんでしたし、一般的なブラック企業という訳ではなかったです。まぁイベント会社ならこんなものかと思います」


「一番楽しかったことって何ですか?」

「そうですね。やっぱりイベントが成功したときでしょうか。お客様の笑顔が見れて、演者にありがとうと言ってもらえたとき。大変だったけれどやり遂げて良かったという充足感があります」


 完全に就職面接の様に受け応えてしまった自分が可笑しくて、心の中で苦笑した。


 自分で企画から立ち上げて、会場や業者も選定して、2,000人集めて開催した親子のクリスマスイベントの話をする。

 何度も頓挫するかと思ったこともあったが、当日子供たちの笑顔を見た瞬間に全ての苦労が吹っ飛んだ。自分で作った企画だっただけに、今も思い出に残るイベントだ。


「劇団を呼んでミュージカルを? 楽しそうですねー私も見たかったです!」

「最近のミュージカルって凄いんですよ。小さい会場でも、昔とは全然技術が違って物凄く凝っています」

「お子さん方楽しかったでしょうね」

「盛り上がってましたよー」

 子供は反応が素直だから、こちらも嬉しい。



 そこで佐伯さんが急に真面目な顔をして、こちらを正視した。

「花音さんにお勧めしたい仕事があります」

 え? やっぱり転職の面接でした?


「仕事ですか?」

「受けて頂くかは自由ですが、お話を色々お伺いして花音さんに適すると私は思いました」


「えーと、それはここでの仕事なのでしょうか? 天国? 地獄?」

 仕事っていうのが解らず問いてしまう。まさか地獄の門番とかじゃないよね。


「え? 地獄?」

 逆に佐伯さんの方が、きょとんとした顔をした。


「あのーここは天国と地獄のどちらに行くか決める場所では無いのでしょうか?」

「ああ、そういう風に解釈されていたのですね」


「経歴を振り返って質問されるので、良い行いと悪い行いを確認して選別されるのだと思っていました」


「いいえ、選別とかはありません。人に依っては、前世を思い出せない方もいらっしゃるので、振り返りで思い出して頂くための面談です。前世を思い出した上で、これから来世はどう生きたいかを考えて頂くプログラムです」


 会社でもキャリアデザイン研修とかあったな。これからスキルシートとか作らされるの?

 死んでからもそんなことするの嫌だなぁ。


「まずこの世には、天国も地獄も存在しません」

「え?! 存在しないの?」

「しません」


「亡くなったあとの魂は……あ、今の花音さんの状態ですね。今が魂の状態です。この部屋にも沢山いらっしゃいます。魂は次に生まれる赤ちゃんの中に入り、輪廻の輪に戻ります」


「悪いことをした人も生まれ変わるんですか?」

「殺人を犯したとか重罪の者の魂は、ここに来る前に消滅しています」

「消滅ですか」

「魂の殻だけが残って、虫などに生まれ変わってリスタートです」

「虫かー。虫はちょっと嫌ですね」


「地球に転生するということ、これは修行なんです」

「修行?」


「魂を磨いています。何度も輪廻転生を繰り返し、魂が磨かれていきます。地獄は無いと言いましたが、言ってみれば地球の人生が地獄です。なんでこんなに、と辛いことが花音さんにもありましたよね?」


「うーん、そうですね。それなりに辛い時期もありました。ドラマになるような波乱万丈な人生ではなかったですが、そりゃあ死にたいと思うことも何度もありました。今は割と幸せですけど。でも死んじゃいましたけど、あはは」


「ふふっ。すみません、笑うところじゃないですね。そう、地球で生きていくのは厳しいです」


「そういう試練を神様が与えているんですか?」

「いいえ、神様いないですし」


「あ、そっか。天国も無いし神様もいない。閻魔様も?」

「いませんね。悪い魂は行軍の過程で消滅するシステムになっています」


「システム?! あ、じゃあ、初詣に行ってたのも意味なかったんですか? 全国民見てくれている訳ないとは思ってましたが、やっぱり見守ってくれてはいなかったという訳ですね」


「神様はいません。でも先程私が確認していた花音さんの経歴は、全部こちらで収集したデータです。全国民を見守っていますよ」

「じゃあ佐伯さんが私を? 神様じゃないなら天使ですか?」


「私ではなく、行動観察課という部署のメンバーが地球の全員を見ています」

「80億人も?」

「はいそうです。80億人見てます。あと、天使もいませんよー。私は、顧客担当課です」


 顧客……。崩れ落ちそうになった。まぁ体無いんですけど。魂ですから。


「じゃあここで働いている人たちって、どういう人たちなんですか?」


「地球の修行を終えた人です。何度か輪廻転生を繰り返して、修行が終わると、過去の記憶を全て取り戻してここに戻ります。私はこう見えてかなりのおばあちゃんなんです」


 やっぱり! 人生5回以上繰り返していると最初に思った!


「それで徳を積んだ人が天界に還り、人界を制するという訳ですね?!」


「えー……いえ、制しませんね。ここは単なる地球の運営会社。地球運営株式会社です。まぁ、官公庁みたいなものだと思って下さい。私は来てそんなに経っていないの


でまだ平社員です。昔銀行窓口やコールセンターやカウンセラーなどの経験があるので、この窓口担当になりました」


「地球運営株式会社……」

 まさかの会社! それも株式って、誰が株持ってるんだよ!


「社内持株制度があります。非上場です」

 そうでしょうね、聞いたことがありません。


「ということで、天国も地獄も無く、神様も閻魔様も天使も悪魔も存在しないのはご理解いただけましたでしょうか? 花音さんは本来地球の輪廻に戻る予定なのですが、経歴をお伺いして、もしかしたら花音さんにぴったりのお仕事があるかもしれないと思ったので、担当部署の方に推薦させて頂いても宜しいでしょうか?」


 急に自分が死んだと知らされて、

 天国も地獄も神様も閻魔様も天使も悪魔も無いと聞かされて、

 更にはここが「地球運営株式会社」だと知らされて、

 大混乱中の最中のため、全く判断力が無い。


「えっとそれは、地球での修行より厳しい仕事なのでしょうか?」


「それは状況に依りますね。でも新しいことに挑戦することが何より楽しい花音さんにぴったりで、とても楽しめるお仕事かと思います」


 言った、確かに。

 面接みたいで気分が上がっていた自分が、『新しいことに挑戦することが何より楽しい』だなんて台詞吐いた記憶がある。


 すみません、ちょっとノリで。

 今更『現状維持で楽なことが何より楽しい』とは言えない。


 でも、地球の修行の場に戻るよりは、辛くないかもしれないし。


「勿論話を聞いて断ることも出来ますし! それと、担当部署の方でNGが出る可能性もありますので、それはご承知おきください」


「ああ、それはそうですよね。勿論それはよく解ります」

 多分私なんかじゃダメだって言われるよ、きっと。


「では、後ろの席でもう少しお待ち頂けますか? またお呼びいたします」


 席を立ち、待合スペースへ戻る。みんな姿は見えないが、魂が存在しているのだけは解る。

 空いている席に腰掛ける。腰掛けているつもり。


 カウンターの向こうで佐伯さんも席を立って、(多分私の)書類を持って、小走りに部屋を出て行く。


 走っていく様が可愛いな。

 あれで人生何度も繰り返しているおばあちゃんとは思えない。



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