21*プロジェクションマッピング
岩場の上からずっと海を眺めていたいが、ここにいるのは危ないので、さっさと戻ることにする。
今日森を抜けたといっても、端にある海に出ただけだ。
町に行くには、小屋から北へ20km位歩かないとならない。
明日から少しずつ、森を抜けるための実戦訓練を行う予定になっている。
緊張で震えていた行きと違い、水弾1発で片付くのが解ったので、帰りは少し余裕が出来てきた。索敵は常時発動しつつ(接敵の最中は索敵が切れるのが危ない。同時に使えるように練習しないと)、森に戻る。
魔素が濃い箇所が気になったので見に行くと案の定、魔石が落ちていた。直径3cm程度のキラキラした魔石だ。魔素が溜まって出来た石で、魔法の元になる。
うちの冷蔵庫なども魔石で動いているし、地球人も魔素に慣れさせるために、いっぱい魔石を集めなくてはならない。
魔石は見付けたら拾ってBOXに入れておく。
屈んだ瞬間に、後ろから魔兎が走ってきた。
水弾。
油断も隙もありゃしない。
魔兎もBOXに収納する。
魔獣にも魔素が溜まっているので、体内に魔石があるらしい。どこにあるのか解らないので、今はこのまま持っている。
町に行って冒険者ギルドで解体してもらえるか相談してみよう。
分解スキルで魔獣の解体も出来そうだが、キレイすぎる切り口とか見て不審がられるのも嫌だし、だからといって自分で解体するのは絶対無理。
異世界モノならギルドで絶対解体してくれる筈だよね。
水弾を撃ちながら、魔石を拾いつつ小屋に戻った。
魔石を拾うために寄り道したので、帰りは30分ほどかかった。
小屋が見えず、道を間違えたかとタブレットの地図を見ようとしたら、いきなり目の前に小屋があった。
「え?! びっくりしたー」
慌てて柵の中に入る。保護膜に入ったので、これで安心だ。
「いきなり小屋が出てきたんですが、どうして?」
「外からは見えないようにしてあるから」
イヤーカフから甲田さんの声がする。
今までずっと見守ってくれていた。敷地内に戻ったので、安心して声を掛けてくれたのだろう。
「そんな魔法があるんですね。隠蔽魔法とか隠密魔法とか?」
「いや、プロジェクションマッピングです」
「……は? んーと、それって。ビルの壁とかに景色映すやつ」
「そう、この小屋の外側に森の画像を映してます」
「あー凄いけど、もっと魔法っぽいものだと思ってました」
「大変なんですよ。こんな奥深く誰も来ないとは思いますが、もし万が一誰かに見つかるかもしれないんですから」
大変ですよね。どこから映しているのか解らないけれど、大変だと思う。
でも、ちょっと寂しい自分がいる。
誰か解ってくれるかな。
魔法じゃないんだって。
「ところで、瞬殺でしたね」
「魔獣ですか? 魔熊が出て来なかったですね。魔熊出てきたらどうしようと怖かったです」
「でも豹とか狼とかいましたよね?」
「足速いしすっごく怖かったです」
「瞬殺でしたよね」
「たまたまですよ。複数体出てきたら終わってましたね。甲田さん、思ったんですけど、索敵魔法が攻撃魔法を使うと途切れちゃうんです。あの間に後ろから来られたら終わりなので、同時発動を練習しなくちゃダメだと思います」
「まあ、確かに」
甲田さんが諦めたような声を出す。
今までも適当に勉強していた訳ではないが、やはり実践して初めて色々と理解できた。
きっと不真面目だった私が急にやる気になったから、困惑しているのだろう。
「ですよね! 私頑張ります!」
午後は複数魔法の発動練習と、複数に襲われた場合のシミュレーションを考えた。
敷地から少し出たところで、索敵を使いながら色々な魔法を使ってみる。
複数の魔獣がいたとき、広範囲魔法は良いが、その分広く浅くで攻撃力が弱まる。仕留められなかったら、複数から襲われることになってしまう。やはり確実に一匹ずつが良い。
そして、一発目と二発目の間隔を早くしよう。連射できるように、早く、早く。
ちなみに武器はベルトに付けたサバイバルナイフだけだ。
武器として持っているというより、蔦を切ったりするためだ。蔦を切ったこともまだ無いが、いざというときナイフ位持ってないと、ねえ。
剣や槍などは邪魔になるので、持ちたくない。いちいちBOXから出して攻撃とかは私には無理だろう。
あの魔豹たちのスピードには適わない。
大体BOXには剣や槍は入っていないだろうから。
逆に、銃は有りそうだな。
北海道には自衛隊基地が沢山あるので、沢山ありそうだ。住人が避難する前にコピペした北海道だから、自衛隊もまるっと入っているだろう。警察や猟友会とかもあるし。
もしかすると、オフロード車より戦車の方が良かったかもしれない。
この時代に戦車、まずいな、封印だ。
そんなことを考えながら、たまにやって来る魔獣を倒しながら、小屋の周りで魔法の練習を続ける。
晩ごはんはユイとディナー兼打ち合わせ。
本日のディナーは、天婦羅御膳です。最高です。御膳ってなにさ御膳。殿様感漂うよね。
ぷりっぷりの大海老。
十二単着せられたんかいって言うほど、衣まとった海老じゃなくて、丁度良い感じに花を散らせた衣をまとった海老。ぷりっぷりです、ぷりっぷりですよ。
キスも油っこくないんです。サクサクフワフワ。
ご飯になるとかなり語彙力ヤバいよね、私。昔から知ってたけど食レポはホント無理だわ。
ということで、ディナー兼打ち合わせだった筈なのに、ユイと二人で「うまー」「うまー」しか言わないディナーを終え、食後のシャーベットを食べて温かいお茶を飲み、やっと話が始まった。
「例の魂さんたち頑張りの甲斐あって、北海道の整理が順調に進んでいます。全て写真撮ってタグ付けされて、再生魔法も付与済だよ。検索も使いやすくなった。BOXに反映されているから、少しずつ要らないものは処分していこう」
「おー。パワハラリーダーは元気?」
「相変わらずだね。注意はしてるんだけど、自分のことだと解っていないみたい。来世は一人で研究とかするといいと思う」
「仕事はできるんだけどねー巻き込まれた人が可哀想」
「ではちゃちゃっと行きますか。建物はどれ位残す?」
「えーどの位あるんだろう? 1割? いや、1%?」
「まだ途中だけど、300万以上」
「300万!」
「ものすっごく大きい高層ビルも小屋も入れてだから」
「ものすっごく大きい高層ビルは絶対使わないよね」
「でも分解したら色々使える。とりあえず分解して、日本で高値で売れそうな資材は引き取るね」
「任せたー。歴史的建物とか壊すには忍びないカッコいい建物は残しておいて。あと、博物館とか美術館とか図書館とか学校とかホテルとかホールとかドームとかも少し残して欲しいな。それと、戦火に追われて難民になった人たちと出会い、住む場所なら私に任せておいてっていう夢を見たの。将来の予知夢かもしれないので、難民の住処はいくらか置いておきたい」
「それ夢じゃなくてアニメでしょ?」
ジト目でユイがこっちを見る。
「そういうのあったら困るじゃん」
「まぁ、比較的キレイなのは置いておくよ」
「そうして。後は分解で、使えるものがあれば持って行って。そういえばお墓とかはどうなるの?」
「どうって? こっちはコピーだし、現物あるならいらないでしょう。墓石は表面削って処分、結構いい石使っているから高く売れる。墓や納骨所の遺骨は大地に還ってもらおうよ」
「結構ドライなのね」
「えー私のこと? だって死んだら魂はここ(運営)来るだけでしょう? 遺体に意味は無いもん。土に還るだけ」
「そうだねー。そう考えるのがシンプルでいいね。どうせコピーだしね。納得しました」
運営にとっちゃ死とか普通のことだもんね。お墓とかそりゃ興味ないか。




