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アイテムBOXに北海道丸ごと入っているので、異世界でも食べるものには困りません  作者: 柚木 冬


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17*初めて第7に足を下ろす

 おっと、魔力どこいった、集中集中。


 体内の魔力をくるくる回しているだけだと、メテオ撃ったら魔力なくなるよね。また魔力を取り込むにはどうすればいいんだろう。


 そうか、空気には魔力が含まれているのだから、外から吸収すればいいんだ。


 魔石から魔力を吸いだしたのを思い出して、空気から魔力を吸収!

 ぶわわわーといった感じで、その辺の空気が入ってきた。


 今まで口と鼻からしか吸収できないと思っていたけど、さっき手から魔石の魔素を取り込んだ。

 周辺の魔素をいっぱい集めるつもりで、両手を大きく広げて吸収!


 魔石の濃厚な魔力ほどではないが、小さな粒子の粒粒が体内に入った気がする。

 体内をくるくる回しているうちに、元の魔力と混じり合って溶けていく。

 さっきより少しだけ魔力の量が増えた気がする。


 それをまた体の外周に沿って一周する。

 足の指にぐるぐる回すのは難しくて隣の指に進むのは時間がかかる。そしてまた上に登っていき、頭まで回す。

 うーん、これはクセになる。


 さっき周りから吸収したけど、逆に出すことは可能なの? 魔石に流したように。


 また、左手の人差し指まで下りてきた魔力を、少しだけ放出!


「うわぁー!」

 人差し指からいきなり水が吹き出した。水浸しだ!


「ああ、魔石が。魔石にかかってしまった。きゃー、タオル持ってきます!」

 慌ててキッチンに走ってタオルを掴んで戻ってきた。

 魔石やテーブルを拭う。放出した魔力が少しで良かった。全部出してたらとんでもないことになるところだった。


「魔石大丈夫でしょうか? びっくりした」


「水属性ってことですね。一人で目を瞑って集中してたかと思ったのに、何をしてるんですか」


「すみません。周りの魔素を吸収できないかなと思ったら出来たので、放出もできるかと試してみたらこんなことに。大昔に魔素が吹き出して、いきなり手から水が出た人ってこういうことだったんですね。そりゃびっくりしますよね。水ってことは、体内を回っていたときも水だったんですか? どちらかといえば風の感じでしたけど」


「初日にそこまでとは規格外な。ここまでする人は初めて見ました」

「すみません。勝手に先走りました。ごめんなさい」


「まぁ大丈夫ですよ。水で良かったけど、火だったら大火傷してましたよ。勝手にやらないで、順を追って進めるように」

「はい、すみません」


 反省しています。

 火傷するところだったのか。小屋も火事になっていたかもしれない。それは大変困る!


「体内にあるときは水ではありません。分子の塊で、モヤが動いているような雰囲気でしょうか。カノンさんの場合は、指から迸るような意識をして放出したんでしょうね。勢いよく吹き出すのが水っぽいので、水になったのだと思います。点火の様に意識したら火になったかもしれません」


「やってみます」

「やらないでください。大きな火の玉が出てきたらどうするんですか。火事になります」

「そうでした。自粛します」

 再度また反省。


「魔素を集めて魔力に変換して放出まで出来るとは、凄い才能ですが、今日は魔力を体内に回すまでにしておきましょう。この後は魔法の仕組みや理論を理解してから先に進みます。今日は体内で回すことだけを練習してください。右回り、左回り、もっと早くできるか、引っかからずにスムーズに回せるか、食事をとりながらでも出来るか、色々練習してみてください。言っておきますが、絶対放出はしないように! 明日来たら部屋が無くなっている、なんてことが無いように!」


 私は項垂れるだけだった。

 いかにも調子にのってやりそうなタイプに見えたのだろう。


 解ります、甲田さん。私も自分自身が信用できないから。


 ひたすら釘を刺されて授業が終わった。



 そっかー水魔法かーつい頬が緩んじゃうよね。


 火水土風の中で何の魔法がいいかってなると、やっぱり水じゃない?

 飲料水にも困らないし、お風呂や生活にも役に立つ。


 折角異世界に来たけど、実は魔法が使えない体質でしたなんてことになったら、皆に迷惑を掛けちゃうと思ってたのよ。

 ちょこっと水が出ただけだから、使い物になるかは解らないけど、才能あるって言われたし。


 体力つける必要あるって言ってたよね。寝る前のストレッチだけじゃダメだよね。まだ外に出られないから走るのは出来ないけど、腹筋位はやった方がいいのかも。


「小屋の柵の中だけなら外に出ても大丈夫だよ」

 そう考えていたら、ユイの声がした。

 考えていたこと伝わったのか?


「ひとりごと喋ってたけど?」


「あ、そう? 一人でずっといるから、思ったこと全部口に出るようになってるんだよな、まずいまずい」


「私もひとりごと多いよー。で、外に出てみる?」

「いいの? 魔素平気?」


「さっき甲田さんが、カノンがめっちゃ魔素吸い込んでたって言ってたけど? ちょっと外に出てやばかったら戻ろう」


 おおーっ、走り出したい気持ちはあるが、ずっと引きこもってたから外に出るのが怖い気持ちもある。

 ドキドキしながら、靴を履いてドアノブを回す。



 初めての第7惑星。異世界の第一歩。


 窓から覗いていただけだったが、めちゃくちゃ森だった。


 私の知っている森とは、低い山の登山道だけ。登山道からまばらに見える木々の緑。森林浴している気になっている程度の自然。

 その程度の森しか知らなかったのに、目の前に広がっている森はその想像の上をいっていた。


 遥か上まで伸びる木の葉っぱが空を覆っていて、殆ど空の青が見えない。間伐もされておらず、木々の距離が近く、それが辺り一面の緑の森になっている。


 深呼吸してみたが、魔素は特に大丈夫そうだ。いきなり頭が痛くなったりは今のところない。


 小屋の周りだけ木がなくて、柵で囲われている。10mほどだろうか。

 左にあるのが、前に言っていた貯水槽と浄化槽だろう。小屋にくっついている。


「おーい、大丈夫?」

 タブレットを部屋に置いてきたので、声だけがイヤーカフから聞こえる。


「今のところ平気」


 とりあえず小屋の周りを一周してみよう。

 異世界を初めて歩いていると言いたいところだが、何も変わり映えのない景色だな。四方ともに森だし、木以外に何も見当たらない。


「よくこんなところに小屋建てられたね」


「現地行って、小屋組んだわけじゃないしね。こっちでセッティングした小屋を輸送しただけだから、下に何があっても知らない」


「もしここに人がいたらどうなるの?」

「輸送前に生物感知はかけてる筈だよ」


「でも虫とかはいたよね、きっと」

「虫までは知らない」

 ちょっとダークなユイ出てきたな。まあ、私も虫はどうでもいいが。


「柵までが保護膜張ってるの? 柵からちょっと顔出すとか可能? 魔素100%って大丈夫かな」


「向こうからは入ってこないようにしてるから、こっちは顔出す程度は大丈夫だけど、近くに魔獣がいるかもしれないからね、気を付けて。まだカノンは魔獣への防御方法持ってないんだから」


「そっか、気を付ける」


 静かに見えるけど、この大木の後ろに魔獣がいたら見えないもんね。いきなり襲い掛かってきたらどうしようと、急に寒気がした。


 ちょっと顔だけを出してみた。金魚みたいに口パクパクして、すぐに顔をひっこめる。


「おお」

「どうしたの?」

「確かに濃い気がする。でも、頭痛いとか気持ち悪いとかじゃなくて……」


「大丈夫?!」


「……美味しい。濃くて美味しい」


 はーっ、ユイの大きなため息が聞こえた。

「やばいわ、カノン」


「やっぱり? えーっと、多分午前中の魔法訓練のせいだと思うな。少し魔力に慣れたから」


「楽しそうに言ってくれるね、初日のクセして。甲田さんも、いきなり初日に教えてもいないのに魔法発動した問題児がいたって言ってたけど、第7を魔法で吹き飛ばすようなことはやめてね」


「初日でそんなことできないよー」

「いつか出来そうで怖いわ。お願いだから勇者とか名乗らないように」


 魔王いないって言ってたよね?

 それに第7吹き飛ばすなら勇者より魔王だ。


「怖いから早く小屋に戻りなよ。今日の日替わりランチは唐揚げだよ」

「おおっ、唐揚げ久しぶり。私も食べる!」


 唐揚げにうまく乗せられて、小屋に急ぎ足で戻る。ちょろくていいのだ、唐揚げは正義。


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