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Episode0.最果てという名の地

雨が降っている。


そこは最果ての地、


ヴェイル王国女王直属の部隊「アンバラ」はそこにいた。


「ここまで何もいないのはかなり稀ですね…。」


部隊員が馬を歩かせながら問いかける。


「そういう時もあります。いくら『最果ての地』といえど、常に異形の者たちがいるとは限りません。」


部隊長のニコスが続けて言う。


「だからと言って、気を抜くことは死を意味します。それが最果ての地です。」


ニコス・キュレス。裏の顔は、王女直属部隊を率いる部隊長である。


ニコスが土の後に何かを見つけ、馬の手綱を引いた。


「ヒヒィィィィィン!!」


馬のいななきが雨の音を掻い潜り、響き渡る。

…と同時にニコスの馬が足を止める。


「みなさん、一度止まってください。」


ニコスが馬を降りて、手綱を掴んだまま何かを見つけた方へと近づく。


部隊員たちは馬を止め、ニコスの行動に注目する。


「どうしたのですか?」


部隊員の一人がニコスに震えているような声で聞いた。


「これはもしかして、人間の足跡ですか?まだ小さいですね…。」


「まさか、こんなところに人の足跡など…」


その刹那


「ギィィィィィイイッッ!!!」

金属を擦り合わせたような不快な声が、雨の音を遮り響き渡る。


隊員たちは一斉に肌が引き裂かれたような感覚を覚え呼吸が止まる。

それでも皆、すぐに武器の柄に手をかけ呼吸を始める。

ニコスはすぐさま馬にまたがり、気を集中させる。



林の方から、ガサッと音がして、皆がそちらに目をやる。

その音の主は草むらを揺らしながら、何かから逃げるように、飛び出してきた。

子供だ。フードを被り身体中泥と傷だらけになりながら、必死に走り抜けていく。


その後ろからは異形の者『デム』がギィギィと醜い歯に雨と唾液を滴らせ、フードの子供を追っていた。

「みなさんっ!!子供の救助を優先し、速やかに保護してくださいっ!!」

ニコスが、ハリのある声で指示を飛ばす。


皆すぐに馬を走らせ、「デム」の足止めをする者と

「子供」を救出する者に分かれる。

ニコスは「デム」の方へと馬を走らせた。



追いついたものから武器を構え、慎重に近づき攻撃を始める。

だが、デムに叩きつけた刃はいとも簡単に弾き返される。

デムの攻撃はなかなか当たらないものの、当たったものは確実に致命傷を負わされる。

後方で様子を伺っていたニコスが子供の救出に成功したのを見て、指示を出す。


「一度下がりましょう!!私が足止めします!!」


ニコスの合図をもとに、部隊員たちが隙を見て後方へと下がり始める。


皆が下がり終える時を見計らったかのように、ニコスを薄色の光が包む。


雨の音が一瞬止んだように、ニコスの声が響く。


   「意縛」



瞬間、デムの動きが止まる。


動きは止まっているが、殺したいとばかりに体が震えている。


「この準備ができていない状況では、歯が立ちません!あの子は保護できたみたいですので、今日はもう引き返しましょう!」


一同はすぐに引き返し始め、異形のものたちはどんどん遠ざかっていく。


数百メートル走ったところで部隊員がニコスに賛辞の言葉を送る。


「さすがニコスさん!!あのデムたちも悔しいでしょうね!!」


「ただの精神干渉です。彼らももう動き始めているでしょう。」


「油断は禁物、でしょう?!わかってますよ!

この程度の負傷で済んだんだ!みんな無事で帰りましょう!!」



雨の音が次第に消えていく…


救出した子供の身体は泥と傷に塗れているが、まだ助かるだろう。


子供の手には文字の書かれたプレートが握られている。


ニコスは振り返り遠ざかっていく最果ての地が、黒い雲に覆われていくのを見た。


この子供はいったいどこから来たのだろう?


これから何か不穏なことが起ころうとしているのか…


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