第3話 一緒に寝よ?
ゲームを終え、風呂も済ませて、時計の針はもうすぐ23時を指そうとしていた。
寝る準備を整えて自分の部屋に入ると、そこには夢乃がいた。
「おかえり陽くん~」
まるで自分の部屋かのように、ベッドの上でくつろぎながら漫画を読んでいる。
うつ伏せに寝そべった脱力スタイルのまま、両足をパタパタと動かしていた。
「……」
夢乃の服装に、思わず視線が引き寄せられる。
もこもこのパーカーに、短パン。そしてパーカーの下はキャミソールという、完全な部屋着スタイル。
ふわっとした袖から見える白い手、片方だけ下がったキャミソールの肩紐。
何気なく目を落とした先には、白く柔らかな太ももがあらわになっていて、俺は慌てて視線をそらした。
「どうしたの?」
「……くつろぎすぎだろ、お前」
思わずそう言うと、夢乃は漫画から顔を上げて、にっこり笑った。
「だって~、このベッド、ふかふかで気持ちいいんだもん♪ それに陽くんの匂いがして、なんだか落ち着く~」
いや、その格好でくつろがれると、こっちは落ち着かねぇっての。
「なぁ夢乃……やっぱり一緒に寝るのはどうかと思うぞ」
夢乃は漫画をパタンと閉じると、上半身を起こして俺の方をじっと見つめてきた。
そしてまっすぐな目で問いかけてきた。
「ダメ? 陽くんは……私と寝るの、いや?」
「……そんなことないけど」
俺がそう答えると、夢乃の表情がふわっとほころぶ。
「じゃあ、一緒に寝よ?」
次の瞬間、夢乃はベッドの上から手を伸ばして、俺の手をぎゅっとつかんだ。
ぐいっと引かれる力に抗えず、俺は夢乃の隣へと倒れ込んでしまった。
鼓動がドクンドクンと早くなる。
今、夢乃と同じ布団で寝ている。
さっきから太ももが当たってる。柔らかい感触に、俺は動くことができなかった。
「ん~、やっぱ陽くんってあったかい……」
そう言いながら、夢乃がこちらに体を預けてくる。
柔らかすぎる感触が二の腕に当たっている。
「ちょっ、おまっ……もうちょい離れろって……!」
「えーヤダ~。せっかく陽くんと一緒に寝てるんだもん。くっついた方が、ぐっすり眠れるよ?」
ぴとっ。
夢乃が、俺の腕を抱きついてきた。
「陽くんってさ……女の子にくっつかれると、意識しちゃうタイプ?」
「そ、そんなこと聞くなよ……!」
夢乃はにこっと笑って、俺の顔をのぞき込んできた。
そして、そっとささやく。
「私、なんだかフワフワしてるんだ~……体がぽかぽかして……眠くなっちゃうよ」
そう言いながら、俺の胸元に頬をすり寄せてきた。
髪がふわっと触れて、甘い香りが鼻をかすめる。
耳元で夢乃の吐息がかかって、体温が一気に上がった。
「……ねえ陽くん」
「な、なんだよ」
「このまま寝ちゃってもいい?」
「……好きにしろよ」
ささやきに近い声で、夢乃が言う。
「……もし私が、寝ぼけて、何かしちゃっても……怒らないでね?」
ドクン、と鼓動が跳ねた。
その意味を、考えたくても頭が回らない。
夢乃はくすっと笑い、そのまま俺の腕に顔をうずめた。
「あのさ……一緒に寝るのは早いと思うんだ。ほら普通は……こういうのは付き合った男女がするもんだろ?俺たち今日話したばっかりだし」
意を決して、俺は言った。
これ以上はマジで危ない。理性が壊れてしてしまう。
「付き合わないと一緒に寝たらダメなの?」
「それはそうだろ」
「じゃあ、私たち付き合おうか?私、陽くんの彼女になるよ」
「……は?」
夢乃が、ふにゃっと笑う。
悪びれる様子も、冗談めいた雰囲気もない。
まっすぐ、真顔で、さらっととんでもないことを言ってのけた。
「おまっ……なに言っているんだよ。告白するなら好きな人にしろよ」
「ん?私の好きな人は陽くんだよ」
言葉が詰まる。
部屋の空気が、一気に熱を帯びた気がした。
「……そういう冗談はよせよ」
「ううん。本当に好きだよ、陽くんのこと」
「からかうんじゃねよ。俺はもう寝るからな!」
「おやすみ。陽くん」
夢乃はくすっと笑い、そのまま俺の腕に顔をうずめて、目を閉じた。
俺の体に、柔らかく、温かいぬくもりがぴったりくっついている。
……これ、寝れるわけないだろ。




