表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら戦国時代の米問屋だった ~武将でも剣豪でもない俺が、兵糧で天下統一を支えます~  作者: 水原伊織


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
91/102

第九十一話 町を作る者

江戸。


まだ大きな町とは呼べない。


しかし。


人の流れは、確実に増えていた。


武士が集まる。


職人が集まる。


商人が集まる。


未来を求める者たちが、この土地へ向かっている。


弥助は朝早くから町を歩いていた。


「若旦那。」


庄吉が地図を抱えて追いかける。


「また歩くんですか。」


「歩く。」


「昨日も港を見ましたよね。」


「昨日見たのは港だけだ。」


弥助は周囲を見る。


「今日は人を見る。」


---


江戸の町では、多くの人が暮らしている。


しかし。


まだ仕組みが追いついていない。


荷を置く場所。


商売をする場所。


人が集まる場所。


それぞれが別々に存在していた。


「町が成長しているのに。」


「流れが繋がっていない。」


弥助は呟く。


---


その頃。


黒潮屋では、源兵衛も江戸の調査を進めていた。


「土地を確保しました。」


玄蔵が報告する。


「商人たちも興味を示しています。」


源兵衛は満足そうに頷く。


「当然だ。」


「商人が欲しいものは分かりやすい。」


「安全な場所。」


「多くの客。」


「利益を生む仕組み。」


---


源兵衛の計画は明快だった。


大きな市場を作る。


そこへ商人を集める。


資金を投入し、短期間で江戸最大の商業地を作る。


「人は。」


「便利な場所へ集まる。」


源兵衛は言う。


「ならば。」


「最初に便利な場所を作ればいい。」


---


一方。


弥助は違う場所を見ていた。


「市場を作る前に。」


庄吉が尋ねる。


「何をするのですか?」


弥助は答える。


「人が流れる道を作る。」


---


弥助は江戸の地図に線を引いた。


港。


倉庫。


街道。


市場。


宿。


職人街。


それぞれを繋ぐ。


「町とは。」


「建物の集まりではない。」


「人の流れだ。」


---


弥助はまず、小さな提案をした。


それは、


**荷受け所制度**


だった。


---


今まで江戸へ届いた荷は、商人ごとに別々に管理されていた。


そのため、


荷が迷う。


置き場所が足りない。


必要な場所へ届かない。


そんな問題が起きていた。


---


弥助は港の近くに共同の荷受け所を作る。


荷を一度集める。


記録する。


目的地ごとに分ける。


そこから各地へ送る。


---


「つまり。」


庄吉が目を輝かせる。


「江戸全体の荷を整理する場所ですね。」


「そうだ。」


「市場より先に。」


「流れを整える。」


---


この話は、すぐ江戸の商人たちへ広がった。


「便利だ。」


「荷の受け取りが楽になる。」


「小さな商人でも使える。」


評判は少しずつ広がる。


---


しかし。


反対する者もいた。


「勝手に仕組みを変えられては困る。」


古くから江戸で商いをしていた商人たちだった。


「今まで問題なくやってきた。」


「新しい仕組みなど必要ない。」


---


弥助は反論しなかった。


「皆さんが守ってきたやり方には。」


「意味があります。」


商人たちは少し驚く。


「しかし。」


弥助は続けた。


「人が増えれば。」


「今までの方法だけでは足りなくなる。」


---


「昔のやり方を捨てるのではありません。」


「未来に合わせて。」


「変えていくのです。」


---


その言葉を聞いていた一人の老人がいた。


江戸で長く商いをしてきた男だった。


「不思議な若者だ。」


「普通なら。」


「古いやり方を否定する。」


「だが。」


「この男は残そうとする。」


---


その夜。


家康は報告を聞いていた。


「山本屋の弥助。」


「また人を巻き込んでおります。」


正信が笑う。


家康も少し笑った。


「力で町を作る者もいる。」


「しかし。」


「人が自ら動く町は強い。」


---


一方。


黒潮屋。


源兵衛は弥助の荷受け所の報告を受けていた。


「市場ではなく。」


「物流から始めたか。」


玄蔵が尋ねる。


「問題ですか?」


源兵衛は首を振る。


「いや。」


「やはり弥助らしい。」


---


源兵衛は江戸の地図を見る。


「私なら。」


「人を集める場所を作る。」


「弥助は。」


「人が集まる理由を作る。」


---


しばらく沈黙する。


そして。


源兵衛は笑った。


「面白い。」


「ならば。」


「どちらの町が。」


「より多くの人を惹きつけるか。」


---


江戸では。


二つの未来が動き始めていた。


一つは。


大きな市場を中心に発展する町。


もう一つは。


人と物の流れから成長する町。


まだ誰にも分からない。


どちらが正しいのか。


しかし。


江戸という器には。


新しい時代の商いが、少しずつ注ぎ込まれ始めていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ