第68話「やはり勝負はオリジナル!新たな曲を作り出す」
岩崎、高村たちとの対バンイベントが着実に近づいてくる。
気づけばライブ当日まで、一か月を切った。
この日は全三曲を通しで弾き、ライブ当日を意識しながら確認している。
「ライブ当日のセットリストは、この順でいいか?」
「いや、コピーが一曲入っているんだろ? なら最初にやったほうがいいんじゃね?」
「うむ。やはり、オリジナルを後にするが一番だろう」
コピーが一曲目、オリジナル二曲の順番で演奏する形で決まりつつある中、シゲがずっと黙っている。
「シゲ、どうした? なにか問題があったか?」
「ううん。僕もこの順番で大丈夫だよ? けど……あの」
なにか歯切れが悪そうに、シゲは言葉を詰まらせる。なにか言いたそうにしているようだった。
「ふむ……言いたいことがあれば、遠慮なく言ってもよいのだぞ?」
「そーそー! どうせ言ったところで、仙道に却下されるだろうからな!」
「成瀬……てめえ」
俺たちがそう話していると、シゲはこちらを目を向けて口を開く。
「実は……また新しい曲を考えたんだ」
その言葉を聞いた俺たちは、驚く。
ずっと練習の毎日で忙しかったはずなのに、その間に新曲を考えていたなんて。
「すげえじゃねーか! それで、どんな曲なんだ? 楽譜とかねーのか?」
「有本の作曲は素晴らしいからな……俺も気になる」
俺と小野寺はシゲが作ったであろう新曲が気になって仕方ない。
「えっと……それがね」
目を輝かせている俺たちに、シゲは申し訳なさそうに目を逸らした。
「待てよ! 今はライブが近いんだし、新曲どころじゃねーだろうが」
いきなり、成瀬が俺たちに向かって叫ぶ。やつにしては珍しく、目前のライブを優先するような口ぶりだ。
「……ったく! 俺らがやるべきことは、野外コンサートのライブだろ」
「成瀬……おまえ、そこまでライブのことを考えていたなんて……」
「うむ。まさか、成瀬がそんなことを言うとはな」
「あったりめーだろ! ライブには、俺が呼んだ女たちも来るんだ。俺様のかっこいいところを見せなきゃいけねー」
俺たちが感心しているのを裏切るように、成瀬は自分の欲望をぶちまける。
ため息をついて落胆する俺。
「でも、新しい曲っていってもまだ形にしてないんだよ。イメージだけ、だから成瀬君が言うように今はライブの曲を優先しよう」
「けどよ、シゲ。このタイミングで新曲があるって言ったのは、なにか意味があんだろ?」
シゲがなにも目的がなく言うのは、過去にない。なにかしら、意志があって俺たちに話したはず。
「うん……高村さんは全曲オリジナルでしょう? 岩崎さんたちはギャルゲーソングのカバーだろうけど、それはインパクトがあると思うんだ」
「まあ、オリジナル曲に劣らないようなインパクトを観客は感じるだろうな」
「僕たちもオリジナル曲はあるけど、カバーもあると他の人たちに差が出ると思ったんだ」
「カバー曲って、ニルヴァーナだろ? あれ、ライブでウケるのかよ」
たしかに、シゲが言いたいこともわかる。成瀬が思っているように、初めにやる曲としてはウケるかは微妙だ。
「僕たちはオリジナル曲を中心にやるバンドなはずだから、全曲オリジナルで勝負したほうがいいかなって……」
「ふむ。それで、有本は新しい曲を考えたということか」
「けど、もっと早く作ればよかったかなって……」
「今からオリジナルを増やしても、本番に間に合わねーだろ? あと、一か月しか時間はないんだしよ」
そう。ライブ本番まで、残された時間は少ない。成瀬の言う通り、今できる曲で勝負するしかないはず。
だが、俺はなにを決めたようにみんなに向かってさけぶ。
「シゲの考えに俺は乗るぜ! やろうじゃねーか、新曲をよ」
その言葉に、みんなは驚いた顔をする。
「バカかおめーは! 俺がさっきから言ってんだろ。今からオリジナル作っても、絶対間に合わないに決まってる!」
「そうだよ、晴君。僕の言ったことは気にしなくていいから、セットリスト通りの三曲でいこう」
「いーや! 三曲全部をオリジナルで固めるんだ! じゃねーと、岩崎や高村に勝てねー」
このライブで俺たちが一番すごいライブをやるという想いが俺にはあった。
「ふむ。だが、まだ形になっていないのだろう? それは、かなり時間が必要だろう」
「だろうな! けどよ、どんな曲になるか、楽しみじゃねーか! やろうぜ」
シゲが作る曲は、どれも衝撃が走るようなものばかりだ。新しい曲が、俺をどんな気持ちにさせてくれるか、楽しみである。
「だああああ! おめえがそう言ったら、やらなきゃいけねー雰囲気になるだろうが」
「ふっ、だが成瀬よ。おまえも新曲と聞いて、内心では気になっているし作りたがっているのだろう?」
「自分にしか作れねーフレーズとかあるしな!」
「ちっ……わかったよ。だが、間に合わなかったら、セットリスト通りの曲だからな」
渋々納得する成瀬はそう吐き捨てるが、すでにベースラインをどうするか考えているようだった。
「晴君……みんな」
「ほら、シゲ! おまえの頭ん中にあるイメージを俺たちに教えろ! 作ろうぜ……新曲」
申し訳なさそうにするシゲに、俺はそう話してギターを構える。
すでに場の空気は、曲を作ろうとしていた。後は、シゲのイメージを形にしていくだけだった。
シゲは嬉しそうな顔をして、自分のイメージしている曲を俺たちに伝える。
ーー完全なるロック。
王道な曲調でありながら、様々なテクニックを取り入れる難易度が高い曲。
コンセプトを聞いた俺は、まだ作ってもいないのになぜか興奮する。誰も思いつかないロックな曲を作りたい意志が伝わったくるからだ。
「けどよー、どう弾けばそんな曲になるんだ? パターンは似たり寄ったりになるだろ」
「とにかくいろいろ弾いてみて、しっくりくるやつを見つかるしかねーだろ」
この日から予定を変え、新曲作りをメインにやっていくことになった。
時間は少なく無謀な賭けになるかもしれないが、それでも作っていく。他のバンドより勝るような、最高のロック。
そんな曲を生み出すのは、俺たちしかいない。




