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俺たちのロッケンロールデイズ!!  作者: 獅子尾ケイ
活動!新たなるライブ編
39/77

第39話「一曲目!カバーでガッタでフィーリング」

 スーパーマーケットでのライブが始まり、演奏が始まる。


 駐車場の空きスペースでやるのはいいのだが、人が近寄ってくる気配はまだない。


 俺は軽いノイズ音を出すギターのボリュームを下げ、弦にピックを押し当てる。


 ーージャンージャン! ジャカジャーンジャン!


 一曲目はカバーで、ビートルズを弾く。


 選曲はみんなで決めて、オリジナルを含む三曲。


 まずはシゲが選んだ、アイヴガッタフィーリング。


 ビートルズの代表曲の一つであるが、やつはなぜこの曲を選んだのだろう。


 イントロのロックさはないが、ギターは割と弾きやすい。


「ビートルズっていうより、どちらかと言えば漫画のバンドが弾くやつをカバーしようよ」


 練習の時、シゲはそうにこやかに提案した。バンド系の漫画で、主人公がこの曲をカバーしていたらしく、そのアレンジが良さそうだと話していた。


 最初は乗り気でいなかった俺だが、曲を聴いて驚いた。


「すげえな、めちゃくちゃかっこいいじゃねーか」


 ギターだけでなく、ベースやドラムも原曲とは少し違う。


 俺の知っているアイヴガッタフィーリングよりも、好みなアレンジだった。


 ーーと思って弾いてるけど、なかなか人が集まってこないな。


 ギターを鳴らし曲を歌っているが、立ち止まって聴いている人はいない。


 横をスッと通り、ちらりとこちらに目をやるくらいだ。


 決して曲が悪いわけでもないし、やはり演奏がまだ下手なのだろうか。


 俺だけがギターで繰り返し弾いて、同じ歌詞を歌い続ける。


 ーー曲を弾き始めて、約一分。


 ずっと同じフレーズを弾き同じ歌詞を歌っていると、小野寺のドラムが入ってきた。


 ギターとドラムだけの演奏だが、ドラムが入るだけで安心感がある。


 小野寺が叩くドラムの音を、俺はしっかりと後ろから聴くことができる。


 ーーへえ、ドラムのリズムが安定しているじゃないか。


 ドラムの音は練習の時よりも、さらに安定していて上達していた。


 それだけ、小野寺がドラムを熱心に叩いてきたのが伝わる。


 ーーなに、楽しそうに叩いてんだよ。


 少し目線を後ろにやると、小野寺は楽しみながらドラムを叩いていた。


 俺はにやりと笑いながら、ギターを弾いては歌う。


 すると、まだギターを弾いていないシゲが俺を見ながら、指を前に指す。


 ーーなんだ? シゲ、前を見ろって?


 そう言われているような気がした俺は、正面を見る。


 目の前に車が駐車しており、中にいた運転手が窓を開けて聴いている姿が見える。


 数は少ないものの、きちんと聴いている人がいるのに俺は驚いた。


 ーーちゃんと聴いている人もいるよ? 晴君。


 そう言いたげそうに、シゲは笑いながらギターを弾かずに構えている。


 ーーああ、そうだな。ライブハウスみたいな感じにはならないけど、聴いている人がいるだけで嬉しいもんだな。


 そう思いながら弾くギターの音色は、どこか気持ちがいい。


 そこへ、ベースの低音が割り込んでくる。ドラムに続いて、成瀬がベストなタイミングでギターに音を重ねてくる。


 太い弦を指で弾き、綺麗なベースラインがスピーカーから鳴る。


 ーーこういうベースラインも、俺はできるんだぜ?


 成瀬は横で体を軽く揺らしながら、出番がやっときたかと言わんばかりに演奏する。


 普段、成瀬が好むようなスラップやら速弾きではない曲だが、それでもやつはきちんと弾きこなす。


 ーーったく、できんなら最初から素直にそういう弾き方もしろや。


 スローテンポで弾くベースが、俺のギターと小野寺のドラムに重なり曲が進む。


 サビの歌詞を歌い、また同じフレーズをループする。


 ーージャンジャカ、ジャカジャンジャン!


 曲を演奏して、二分ばかりが過ぎた。


 ギターから始まり、ドラムとベースが順番に入ってくるアレンジの曲が珍しいのか、徐々に聴く人が増えていく。


 最初はこちらをちらりと見るだけの人も、足を止める。車の中にいる人は、待っている間に演奏を聴いている。


 人だまりが集まるほどではないが、まずまずのライブになってきていた。


 ーーけど、さすがに演奏をループしすぎじゃないか? 何分でも弾けちまうじゃねーか。


 そろそろ、ここらへんで曲の締めに入りたい。


 そう思っている中、成瀬はベースのフレーズを変え、ソロみたいなものを弾き始める。


 ーーさすがに同じじゃあ、俺たちも飽きてくるだろ? ここは任せな。


 成瀬はそんなアイコンタクトをすると、ベースソロを弾く。


 また自分勝手に弾いて、曲をめちゃくちゃにするんじゃないかと俺は思ったが、成瀬は曲に合うようにしていた。


 だが、やはり成瀬はベースが上手い。


 俺たちの弾く音の邪魔をせず、なおかつあまり目立たないソロをやっている。


 ーーちっ、弾いている本人はがっつり目立たせてやがるけどな。


 以前のような身勝手な振る舞いはしていない。


 日に日に、成瀬もきちんと俺たちの音を聴いてできるくらい成長している。


 聴いている人も、成瀬のソロにわあっと驚いていて、悪くない反応だ。


 ーーさて、後はシゲのギターがどう入るかだな。


 最後に残っているのは、シゲのギター。


 練習の時は、俺と同じフレーズを弾いて入ってくる予定だ。


 しかし、それでは面白くない。


「シゲ、おまえは好きなように弾いて構わない。おまえが好むギターを弾いたれ!」


 練習の時に、俺はそうシゲに話す。


 はたして、本番ではどう重ねてくるか。俺はその時を待った。


 シゲはギターを構え、すうっと息を吸い込んでいる。俺はそれを横目で見て、後半の歌を歌う。


 そこへ、成瀬のベースパートが鳴った後、シゲは勢いよくギターを弾いた。


 ーーギュワァァァァン!


 歪ませたギターの音が鳴り、いきなりギターソロが始まる。ソロが演奏に加わって、曲が一気にロックなものに変わった。


 シゲは堂々とした姿で、ギターを弾いて見せている。


 ーーまさかいきなりソロからか……すげえよ、シゲ。


 予想していたものより、遥かにイカしたギターを弾くシゲに俺はつい顔がにやける。


 他の連中同様に、シゲもかなりギターが上手くなっていた。それはもう、立派なギタリストだろう。


 メンバー全員が弾く音が一つになり、これが俺たちのアイヴガッタフィーリング。カバーだけれど、最高な演奏に違いない。


 最後の歌のメロディを歌い、アウトロに入る。


 ーージャンァァン! ジャカジャン!


 こうして、無事に一曲目を終える。


 演奏を終えると、先ほどよりもさらに人が俺たちを注目していた。


「えー、まだまだ演奏は続きます! 次の曲は……」


 集まっている人に驚いている暇はなく、俺は次の曲名をマイクに向かって話す。


 一曲目の余韻に浸らず、俺たちは二曲目をすぐに取りかかる。


 まだ、俺たちの路上ライブは始まったばかりだ。

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