#11 うまく説明できない
圭は不意にふらついて膝を突いた。リバとルクフェネが駆け寄る。
「ケ、ケイ!?」
「圭!?」
「ちょっと力が抜けただけ」
あのとき圭はとっさにユクルユフェーアを紡いでいた。
(風のように隼のように)
瞬間的にスピードアップするユーグネアだ。ただ自分のスピードを上げたところでたかが知れている。だから圭はその力の行き先をリバに振り向けたのだ。加速したリバは圭をかっさらった。勢いがつきすぎて、戻ってくるのに時間がかかってしまったけれども。
「ごめん、わたしのせいなの」
「?」
「集中できてなくて、だからセグレンデの二つ耳が弱まってしまって」
「そうなんだ」
「……聞かないの? どうして集中できなかったのかって。聞かれてもうまく説明できないから困るけど……」
「別にそういうときもあるでしょ?」
「……」
「それよりコンビネーションうまくいったよ。リバもすごかったし」
「いや〜、それほどでも〜♪」リバは素直に喜ぶ。
「僕はやっぱり防御のユーグネアがいちばんしっくりくる——といってもぜんぶルクフェネの力だけどね。それじゃ戻ろうっか。せっかくだから常総線にでも乗ってく? リバは屋根の上になっちゃうけど」
「えっ!? 電車!? あのビリビリの……!? パンタグラフ怖い……」
「それ無いから心配いらないよ」
【常総線】
取手駅から筑西市の下館駅までを結ぶ鉄道路線。パンタグラフは存在しないのでリバも安心して屋根の上に乗れます(電化されていないから)。
戸頭駅から乗車した列車はトコトコのんびり走っていく。取手駅までは15分ほど。リバは屋根の上でご満悦だ。
ルクフェネは車窓をぼんやりと見つめていた。
❖
翌日、お昼過ぎ。
圭はデスクで事務作業をこなしていた。ルクフェネはソファで休憩中。
「いちご甘〜い♪ 酸味もほどよい感じで、あとジューシー♪」
「そっちは〝いばらキッス〟かな。名前のセンスは半世紀くらい遅れてる気がするけどおいしいでしょ?」
「おいしい♪ 取り寄せてくれたんでしょ? ありがと♪ こっちは……わあ〝ふさの香〟改め〝うさの香〟♪ もう名前が変わってる♪ こっちも甘〜い♪ わあ、香りが違う! キャッチコピーは『麗しき兎の香りをあなたもご堪能あれ』ってどうかな?」
「いいんじゃない?(兎の香りってよくわかんないけど……)」
圭から見ても、昨日のルクフェネは何かに思い悩んでいる様子で口数も少なかった。
(ちょっと疲れただけだっていってたけど、今日はいつもどおりのルクフェネだし、元気になってくれたかな?)
【いばらキッス】
茨城県のいちご。ネーミングセンスに昭和感が漂うものの、実は平成生まれ。
【ふさの香】
千葉県のいちご。ブランドは〝うさこがね〟に変わることがすでに決まっている(誰も反対しなかった)。




