#7 きっとうまくいく
ユクルユフェーアを紡ぐ者、アルテリウア・ユーヴェあるいは単にアルテリウア。
アルテリウアにもタイプがある。攻撃か防御か治癒・補助か、一点突破か範囲拡散か、近距離・直接か遠距離・間接か。
ルクフェネはありとあらゆる場面に対応できる、いわゆる万能タイプだ。死角はない。しかし近距離・直接か遠距離・間接かについてはよくわからない——。
——それは前日のこと。ルクフェネと圭は事務作業をひととおり済ませて、さしま茶の香りを楽しんでいた。
「よくわからないの?」圭は首を傾げた。
「遠距離・間接のユーグネアもオリジナルをいくつも創ったし。でも近距離・直接のユーグネアで十分でしょ、いつも」
「確かにそうだね、ルクフェネはいつだって強いし。でも、困ったときはちゃんと頼ってね、こんな頼りない僕だけど。……どうしたの?」
ルクフェネはいつにかなく曖昧であやふやで、言葉がうまくまとまらない。圭はせっくこともなく、ただ黙ってルクフェネが話したくなるまで待ってあげる。
「……失敗したことがあるの、それも肝心なときに」
「そうなんだ」
「そのときから一度も使ったことがなくて。近距離・直接のユーグネアだけでやってこれちゃったからかもしれない。よくないとは思ってるの、攻めるにしろ守るにしろ、どうしてもバリエーションが少なくなっちゃうから」
「ねえルクフェネ、それだと、きのうまでのルクフェネがかわいそうだと思わない?」
「きのうまでのわたし?」
「だって、たったひとりで頑張ってきた証でしょ、ぜんぶ。肯定してあげなくちゃっ、ね?」
「うん……。でも怖いの。試そうと思ったことは何回もあるけど、また失敗したらどうしようって。一回の失敗なら二回目があるって信じられるけど、二回も失敗したら、三回目に成功するなんてとても思えない。だから、あれから試したことは一回もないの」
「だいじょぶ、だいじょぶ、三回失敗したって四回目があるし、四回失敗したって五回目もあるから。失敗の見本市みたいな僕がいうんだから保証付きだよ。……あれ? でも高校やめて防衛局に逃げ込んできたわけだから参考にならないかな?」
「圭、最後のは失敗に数えちゃダメ。さっき頼りないとかいってたけど、すごく頼りになってるし、なにもよりもわたしは圭がここに来てくれて、いまここにいてくれてとても嬉しいから」
「ほんと!? もっともっと頑張らなくっちゃって気分になった!」
「ねえ、明日のわたしだったら成功するかな?」
「それはわからないよ」
「えーっ!? そこは『ぜったい成功するよ』じゃないの!?」
「不確かなことで元気づけられたら、成功しても失敗しても納得できないでしょ、きっと」
「なんだか、こころを見透かされてる気がしてきちゃった。でもそれも不思議に嬉しいけど」
「失敗しても次の手を考えればいいんだよ。あと僕もいるし、リバもいてくれるし」
「ありがと——」
——ルクフェネは弦を引き絞った。
(圭が肩にそっと手を添えてくれてるみたい)
胸が温かくなる。
ゴーグルを通じた映像の中では〈宇宙の扉〉に赤い輝点が重なっている。侵入者の現在位置だ。赤い輝点は明滅を繰り返している。その間隔はどんどん狭まってくる。相手が自由行動を開始しようとしているのだ。
予想される進路、つまり〈宇宙の扉〉から遠ざかる直線はいくらか補正され、付加情報が増える。
ルクフェネは角度と力を補正する。
(きっとうまくいく……いまだ!!)
ルクフェネは虹色の矢を放った。
輝点が激しく明滅して〈宇宙の扉〉から一気に離れる。突破した瞬間に移動をはじめたのだ。その進路は圭が導き出した直線にぴったり重なる。
輝く矢は七色の軌跡を描いて見えなくなる——が、次の瞬間きらめく光を視覚がとらえた。
(当たった……!!)
光は高速で落下する。しかし衝撃音も震動も観測されない。直前で急減速したのだ。




