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シモウサへようこそ!  作者: 一ノ宮ガユウ
4. 前ぶれ
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#7 きっとうまくいく

挿絵(By みてみん)


 ユクルユフェーアを紡ぐ者、アルテリウア・ユーヴェあるいは単にアルテリウア。


 アルテリウアにもタイプがある。攻撃か防御か治癒・補助か、一点突破か範囲拡散か、近距離・直接か遠距離・間接か。


 ルクフェネはありとあらゆる場面に対応できる、いわゆる万能タイプだ。死角はない。しかし近距離・直接か遠距離・間接かについてはよくわからない——。


 ——それは前日のこと。ルクフェネと圭は事務作業をひととおり済ませて、さしま茶の香りを楽しんでいた。


「よくわからないの?」圭は首を傾げた。


「遠距離・間接のユーグネアもオリジナルをいくつも創ったし。でも近距離・直接のユーグネアで十分でしょ、いつも」


「確かにそうだね、ルクフェネはいつだって強いし。でも、困ったときはちゃんと頼ってね、こんな頼りない僕だけど。……どうしたの?」


 ルクフェネはいつにかなく曖昧であやふやで、言葉がうまくまとまらない。圭はせっくこともなく、ただ黙ってルクフェネが話したくなるまで待ってあげる。


「……失敗したことがあるの、それも肝心なときに」


「そうなんだ」


「そのときから一度も使ったことがなくて。近距離・直接のユーグネアだけでやってこれちゃったからかもしれない。よくないとは思ってるの、攻めるにしろ守るにしろ、どうしてもバリエーションが少なくなっちゃうから」


「ねえルクフェネ、それだと、きのうまでのルクフェネがかわいそうだと思わない?」


「きのうまでのわたし?」


「だって、たったひとりで頑張ってきた証でしょ、ぜんぶ。肯定してあげなくちゃっ、ね?」


「うん……。でも怖いの。試そうと思ったことは何回もあるけど、また失敗したらどうしようって。一回の失敗なら二回目があるって信じられるけど、二回も失敗したら、三回目に成功するなんてとても思えない。だから、あれから試したことは一回もないの」


「だいじょぶ、だいじょぶ、三回失敗したって四回目があるし、四回失敗したって五回目もあるから。失敗の見本市みたいな僕がいうんだから保証付きだよ。……あれ? でも高校やめて防衛局(ここ)に逃げ込んできたわけだから参考にならないかな?」


「圭、最後のは失敗に数えちゃダメ。さっき頼りないとかいってたけど、すごく頼りになってるし、なにもよりもわたしは圭がここに来てくれて、いまここにいてくれてとても嬉しいから」


「ほんと!? もっともっと頑張らなくっちゃって気分になった!」


「ねえ、明日のわたしだったら成功するかな?」


「それはわからないよ」


「えーっ!? そこは『ぜったい成功するよ』じゃないの!?」


「不確かなことで元気づけられたら、成功しても失敗しても納得できないでしょ、きっと」


「なんだか、こころを見透かされてる気がしてきちゃった。でもそれも不思議に嬉しいけど」


「失敗しても次の手を考えればいいんだよ。あと僕もいるし、リバもいてくれるし」


「ありがと——」


 ——ルクフェネは弦を引き絞った。


(圭が肩にそっと手を添えてくれてるみたい)


 胸が温かくなる。


 ゴーグルを通じた映像の中では〈宇(ソ)宙(ラ)の扉〉に赤い輝点が重なっている。侵入者の現在位置だ。赤い輝点は明滅を繰り返している。その間隔はどんどん狭まってくる。相手が自由行動を開始しようとしているのだ。


 予想される進路、つまり〈宇(ソ)宙(ラ)の扉〉から遠ざかる直線はいくらか補正され、付加情報が増える。


 ルクフェネは角度と力を補正する。


(きっとうまくいく……いまだ!!)


 ルクフェネは虹色の矢を放った。


 輝点が激しく明滅して〈宇(ソ)宙(ラ)の扉〉から一気に離れる。突破した瞬間に移動をはじめたのだ。その進路は圭が導き出した直線にぴったり重なる。


 輝く矢は七色の軌跡を描いて見えなくなる——が、次の瞬間きらめく光を視覚がとらえた。


(当たった……!!)


 光は高速で落下する。しかし衝撃音も震動も観測されない。直前で急減速したのだ。

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