#5 いまは優しさに甘えていたい
「これで名実ともに防衛局の一員ね。サイズはどう?」
「ぴったりだよ」
「それはよかった。通信機も届いてるよ」
手首に装着するものとゴーグルのセット。
「これってルクフェネのと同じモデル?」
「ファームウェアのバージョンまではわからないけど」
「それなら、ゴーグルのほうはルクフェネのものをそのまま使わせてもらってもいい?」
「いいけど、せっかくなんだから新品を使えばいいのに」
「ううん。ルクフェネとのリンクが確かなほうがいいと思うから。これまでの記録も蓄積されてるでしょ?」
「それはそうだけど。でもそれはそれでリストとゴーグルをペアリングし直さないと」
説明しようとしてルクフェネは苦虫を噛みつぶした。圭は手首に装着した通信機の表示を確認しながらそのペアリングをもう実施中だった……。
(なんでそんなにすぐわかるかな……)
うーむ、と諦めつつルクフェネは自分の通信機をもう一度、確認する。開かれたままの同窓会のお知らせだ。返信メールを作成して「欠席」と入力する——が、送信ボタンに触れようとしたところで、デスクのディスプレイの表示が自動的に切り替わった。通信アプリへの着信だ。それ見てルクフェネは急に立ち上がった。
「用事を思い出した……! 代わりに応対するように!」
「?」
明らかに不自然だったけれども、圭は首を傾げながら代わりに椅子に座った。相手はカルナだった。
「おはようございます、カルナさん」
「圭クン、おはようさ〜ん♪ 今日はルクフェネに用事だよん♡ いる〜?」
「それが急用があるとのことで。直前までいたんですけど」
「ふ〜ん」カルナは口をすぼめて斜め上に見た——が、すぐにまた、柔和な笑みを戻した。「さっそく制服だね♪ 似合ってるよ〜♥」
「ありがとうございます。見掛け倒しにならないよう、一生懸命働きます!」
「期待してるよん♡ じゃ、そゆことで〜♨」
「えっ、ルクフェネに用事があったのでは?」
「ん〜、まあいいや〜」
「? では、戻ってきたら折り返し連絡するように伝えますね」
「それもいいや、どうせよこさないし〜」
「はあ……」
「みんな会いたがってるよってだけ、伝えといてくれる〜?」
通話が終わればすぐにルクフェネは戻ってきた。ドアのすぐ向こうにいたらしい。
「苦手なんだ」きまり悪そうに一言。
(どうしたのかな……)
やっぱり何かあるんだろうと圭は思う。べつだん嫌っているわけではない様子だ。旧知の間柄であるがゆえに気詰まりなことがあるのかもしれない。
「そうなんだ」
それだけいって圭はカルナの言づてを伝えた。そしてすぐに話題を変える。
「できたら僕にもこの端末があると嬉しいんだけど」
デスクの上に投影された二次元ディスプレイとキーボードを指し示す。
「確かにそのほうが便利かも、わかった、すぐに手配しておくね」
(気を遣わせちゃったかな……)
ルクフェネは感じる。圭が気を回してくれているのはわかるのだ。本当はきちんと話すべきだということはわかっている。
でも、いまは優しさに甘えていたい。




