アロ、強し
ご指摘に関する点を二章、三章の前書きに加えさせていただきました
簡単に言えば……わたしの文章力不足が元凶です
あちこち話がとんだり冗長だったり唐突だったり
読みやすく伝わりやすい文章、書けるようになりたいと強く思う今日この頃です
「………………何、あれ……」
恐ろしさのあまり、全身の血が逆流する。見たくない。けど、アタシは見なくちゃいけない。あの過保護なあんちゃんがあえてアタシに見せて来た以上、これは逃げちゃダメな場面なのだ、ということ。
一度ギュッと目を閉じて覚悟を決めると、アタシは決死の思いで目を凝らした。こんな時ばかりは、「怖いもの見たさ」で心霊番組を楽しんでいた前世の旦那と長男が羨ましくなる。アタシは苦手だから勧められても見なかった。イイ歳こいて寝るのが怖くなるからさ。
「あれがディミヌエ氏でしょうね。ようやく姿を見せましたか」
「…………なんか…………ホントに病気なのかも、ね? …………って、ぅひ!?」
ベチャッ! と手のひらが窓に押し付けられた。泡沫が飛び散るかのような粘着質な動作に、恐怖と同じくらいの嫌悪感が湧いてくる。
これ……直接会わずに済んで良かったのかも……。悲鳴を上げない自信がないよ……。リッチ、だっけ? 邪悪過ぎる。執事さんとは違う意味で無理。マジ、生理的に受け付けない。
「フィーリが心配してあげる必要なんてありません。彼の心身は調べるまでもなく不健康に決まってますから」
火のないところに煙は立たない。そんな意味のことを言いつつ、あんちゃんはふいにアタシの顔を覗き込んだ。
「フィーリは帰りますか? あんなの、フィーリが心を砕くに値しません。不愉快極まりない」
その心配そうな表情を見れば、この先に待ち受ける出来事がホラーなのだとわかる。既に怖じ気づいているアタシを、あんちゃんはさり気なく逃がしてくれようとしているのだろう。
その心遣いは嬉しいけれど、アタシの目的はそもそも、この地で困窮しているヒト達への支援だ。現状を見ず勝手なことをすれば、逆に彼らを窮地に追い込む可能性がある。
バラまきは支援じゃなくてバラまく側の自己満足だ。急場しのぎにはなっても、ヒトから成長と向上心と危機管理能力を奪って行く。アタシは、飼い慣らされた呑気な家畜を作りたいわけじゃない。
「…………いや。ディミヌエさんの病状はさて置き、この地で何が起こってるのか確認しなきゃ……」
「今、マシリでディミヌエの次に力のあるルダンド家で我々の対応をするよう、彼女が流れを誘導しているはずです。フィーリに助けを求めた男性の主家だそうですから、少しはマシな情報が取れるでしょう」
え……そんなとこまで打合せ済み!?
あんちゃんもアロも先を見通し過ぎていて、むしろ怖い。あの不気味なディミヌエの当主が居留守を使うことも、執事が追いすがってくることも、代打としてディミヌエンド家と懇意なルダンド家に回されるだろうことも、さらにはそのルダンド家こそ今回の件の発端となった救民街出身者を抱えていることも、すべて2人は予想し、把握していたのだそうだ。
……たぶん、龍人とか鬼人て、体も脳も作りが違うんだよ、うん。すごいね。羨ましいって言うよりは、そんなヒト達に囲まれてるのかと思うと怖くなるよね、本気でさ。アタシ、無意識に操られてたりしないよね……?
「ルダンド屋敷に行くには日を改めなくてはならないでしょうね。今日はこの後、マシリ周遊です。フィーリの覚悟を無にはしません。せっかくですから湖まで行ってみましょう」
正直、なぜ「覚悟」と「湖」が結びついているのか理解できないが、ここまできたらもう気にしない。アタシとは頭の構造が違うとしみじみわかった。考えても無駄。行ってみればわかるだろう。
それからしばらくして、不機嫌そうな顔をしたアロが竜車に向かって歩き出した。その後ろ姿を見送る百目鬼執事さんはわかりやすくうなだれている。決着がついたらしい。まぁ、端から勝負にならないけど。
「お待たせ致しました」
乗り込んで来たアロは、一瞬前までの不機嫌さをみじんも残していなかった。最上級の笑顔だ。
「……完全勝利、ってとこかい?」
「当然ですわ。わたくし、フィーリ様のために最善を尽くしましたもの」
猫かぶりも最上級。名前なんて久しぶりに呼んでもらった。将を射んとする者はまず馬を射よ。そういうことだとよくわかる。視線があんちゃんを向いてるからね。
「お疲れ様でした。では移動しましょうか」
「恐れ入ります。長居は不要ですわフィーリ様。きちんとお座りになってください」
あんちゃんを意識しつつもアタシに話しかけるようにすることで、緊張を回避する方法を確立したらしい。さすがアロ。指摘したら後でどんな嫌がらせをされるかわからないから、アタシは素直に受け入れることにした。
「ではバラク、まずは別荘が点在する辺りを上空から一周。その後、降りられそうな砂浜を探してください」
「承知つかまつりました」
二階の窓には、まだ、恐怖の影が映っている。アロを、そしてアタシ達の動きをじぃぃっと監視するかのように。
マシリの闇はアタシの想像以上に深く、厄介極まりないものかもしれない。ディミヌエ氏を目に焼き付けながら、アタシはふいに、そう思った。
次話、閑話予定です
ブクマ400記念!!
(減ってるかもしれませんが。一度は超えた記念!です)




