フィーリ、大公に会う
どこで切ればイイかわからず……
でも結局続いてしまいました(^-^;
魔王。それはこの国の王で、近隣国の人間はもちろん、同国の魔族にも恐れられる最強の存在。建国の英雄の最強遺伝子を継ぎ、長き時を生きる圧倒的強者。
…………が、ジークの兄さん? この、無愛想で言葉足らずで目つき悪くて、存在感不安定な? 場合によっては中二病にも見える、この……?
「何だその顔は」
「ジークマグナス。フィーリにそんなキツい物言いは許しませんよ?」
「ハァ。元々こういう喋り方だ」
びっくりし過ぎて目と口をまん丸に開いてフリーズしたアタシを、相変わらず鋭い視線で睨む兄さんと、相変わらずの笑顔で威圧するあんちゃん。なぜかケンカが始まったけど、アタシにはそれを止める余裕もない。
「……じゃあ、あんちゃんは……?」
しばらくしてようやく出せたのは、更なる疑問。兄さんが国で一番偉いヒトなら、こうしてジャレあっているあんちゃんは……?
ピタリとケンカを止めて「フィーリ、そんなにもボクのことを……」とか不思議なことを言いながら頬を染める張本人を無視し、アタシはジッと魔王様を見た。兄さんの方がまだまともな回答を期待できそうだと、普段の言動で知っている。
「あ。アタシ、敬語使った方イイかい? 兄さんにも立場ってヤツがあるよね?」
「…………いや、別に……構わないが……」
「フィーリ、ボクはね、フィーリの家族ですよ。夫です」
「こいつは大公だ。特別位で実質名誉職だがな」
へぇ……大公……。って、偉いんだよね?
せっかく教えてくれたのにピンと来ていないことが伝わったのだろう。兄さんが何度目かの溜め息をつきながら説明してくれた。
曰わく、この国において大公は王と同レベルの行政権を持っている。
曰わく、龍人族の保護と配慮のために特設された特別な地位であり、政務内容は名目上、国王の補佐。実際は儀式の確認と参加、地方からあがる数少ない嘆願書のチェック、場合により地方巡視。社交。
つまるところ、この二人が国のトップ。魔王国を回す両輪。
ちょっと、びっくりし過ぎてどうしたもんやら。
「…………あんちゃん、さ……よくそんな立場で原生林区に入り浸ってられたね……」
たぶん、あんちゃんに実質課される執務はそこまで多くないのだろう。
とはいえ、長いこと不在にしてて平気な立場だとも思えない。バラクさんがわざわざ原生林区までアタシを呼びに来たのは、あんちゃんの食欲のことより何より、今後逃げ出さないようにするための決死の打開策だったのかも……? なんて思えてくる。
「いやぁ……二人とも、すごいんだね……。アタシに構ってる場合じゃないじゃないか。仕事、頑張りなよ。アタシには、ご飯の時に元気な顔見せてくれりゃ十分だからさ。邪魔して悪かったね……えっと、帰り方、教えてくれるかい? 一人で帰れるから、さ」
偉いんだろうとは思ってたけど、まさか国のダブルトップだったとは。アタシ、気楽にあれこれ頼んで連れ出しちゃってたけど、国家運営、大丈夫だったかね……。今更血の気が引くんだけど。
会社で言えば社長と顧問、町内会で言えば町内会長と夏祭り実行委員長、料理で言えば砂糖と塩、主食で言えばパンと米。そんな立場の二人なのだと知れば、当然、アタシの都合より国の都合を優先して欲しいと思う。アタシも一応大人だからね。
部下の皆さん、ごめんなさい!
皆様、台風被害、大丈夫でしょうか
何事も無理なさらないようにお願いします




