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おかん転生 食堂から異世界の胃袋、鷲掴みます!  作者: 千魚
2 光の洞穴亭 in 王都
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フィーリ、魔王に会う

しおり350件!

 ありがとうございます<(_ _)>!

「……もうっ、あんちゃん!! ちゃんと説明してくれなきゃ絶交だからね!?」


「えぇっ!?」


 離して欲しいし話して欲しい。そう考えていたら、いつの間にか口から言葉が零れていた。流されるまま、なんてアタシらしくないからね。空気はぶった切るために読む!!


 ちょっと子どもっぽいセリフだったことを内心後悔しつつも、すぐそこにあるあんちゃんの整った顔を睨み上げれば、案の定、今にも泣き出しそうな情けない瞳。

 まったく……あんちゃんは感情の起伏が激しいんだから……。ホント、でっかい問題児だよ。


 いつも優しげな笑顔を浮かべているあんちゃんだが、そんな上辺に騙されるアタシじゃない。明らかに年上で保護者格なのに、息子のように思えることがある。精神年齢はアタシより若いのかもね。


「真っ直ぐ顔を見れなきゃ、話し合いも何もないだろ。ほらイイ加減降ろして」


 我が儘盛りの息子に言い聞かせるように毅然と言えば、あんちゃんは微妙にしょぼくれた様子でアタシを隣の椅子に降ろしてくれた。

 素直に従うあんちゃんの様子に、ジークの兄さんが目を見開く。「何の魔術だ?」とつぶやいているところを見ると、自ずと普段の友人関係が察せられた。


「さてあんちゃん。アタシはあんちゃんにお世話になってるし、信頼してるよ。家族だと思ってる。なのにあんちゃんはアタシを家族だとは思ってくれてなかったのかい? 隠し事は嫌いだよ。どう転んだら救民地の話しが結婚だなんてとんでも発言に繋がるのか、説明しとくれよ」


 一つ深呼吸して口を開けば、喋っているうちに気持ちがしっかり落ち着いてくる。……うん、今気付いた。アタシ、攻めに回られると弱いのかも。主導権さえ取ってしまえばこっちのものだ。


「最初から、丁寧に頼むね?」


 同意するように重々しく頷く兄さんを横目におさめながら、あんちゃんに詰め寄る。その剣幕に押されたのか、珍しく困惑した表情になったあんちゃんは、


「隠し事なんてしてません」


 まるで、「これから説明しようと思っていたのだ」と言わんばかりの態度で話し始めた。

 普段よりちょっと早口なあたり、動揺が隠しきれてないと思う。


「フィーリの、救民地で美味しいご飯を配りたいという意見は一度きりの施しではないのでしょう? 狼少年は気付かなかったようですが、ボクには救民地の住民の生活水準自体を引き上げようと考えているように聞こえました」


「うん。まぁ、そうだね」


 根底にあったその思いが伝わっていたのは嬉しい。でも、だからこそつづく話の展開が読めない。

 その疑問が顔に出たのだろう。あんちゃんがふんわりと微笑んだ。


「具体的な方策は詰める必要があります。それでも、その考えは自体はきっと今後のフィーリの活動指標となるでしょう。正直、フィーリが治世に関わるようなことに興味を持つのは意外でしたが、嬉しい誤算というか……そういうことなら尚更、ボクが役に立てると思うんです! フィーリは人間ですから、ここで何か始めるなら身元を保証する者が必要でしょう? 言いにくいですが、制度上、血族以外は身元を保証できないんですよ」


「あー……不可抗力とはいえ、アタシ、不法移民みたいなもんだもんねぇ。無戸籍状態なうえ人間とくりゃ、怪しまれるのも当然か」


「いや、おまえは特例……」


「だからね! ボクと結婚すればイイんです! ボクの妻という立場はかなり強力ですからね。フィーリが望むなら炊き出しだろうが新規出店だろうが、可能になるんですよ!」


 何かイイかけた兄さんにかぶせて、あんちゃんが自分の思う利点を力説する。

 そっか。無戸籍状態のアタシを心配しての提案だったんだね。あんちゃんはお偉いさんらしいから、融通をきかせてくれようとしたんだろう。

 なんか……ロリコンかもなんて疑って悪かったね。


「いろいろ考えてくれてたんだね……。ありがと」


「いえいえ。フィーリの幸せがボクの幸せですから」


 ふふっ、と小さく笑い合う。驚きはいつの間にか、胸の温かさへと変化していた。暴走も、アタシのためだったなんてね……くすぐったい気持ちになるよ。


 けど、「たまに炊き出ししてスラムの住人の栄養不足を改善したいなー」くらいに考えていたことが随分と大事になってしまっている。

 アタシは肉体的には子どもだから、言えばみんな手伝ってくれるんじゃないかな、なんて気楽に考えていたけれど、課題が山積みだ。身分証明はもちろん、炊き出しだってこの世界に無いことなら、もっともっと慎重に行くべきだろう。


 しかし、落ち着いて考えてみれば、何もわざわざあんちゃんがアタシなんかと結婚する必要なんて……というか、そもそも「光の洞穴亭」から飛び出してくる必要なんて、なかったんじゃないか……?


 アタシが例えばあんちゃんの奥さんて立場になれば、きっとアタシには得がある。けど、あんちゃんには……?

 あんちゃんが得られるものが思いつかない。何千年も生きているという噂だから、ただ興味本位の暇つぶし、という可能性はある。有り得ないと思うけど、ご飯で餌付けされてアタシに逆らえなくなっている、という可能性だってゼロじゃない。……はたまた、人間フェチだったり、魔喫ますいフェチだったり……とか?

 万が一アタシのための自己犠牲なら、絶対に止めて欲しい。


 炊き出しへの道も遠そうだし、あんちゃんが何考えてるのか根本的なことがいまいちわからないし。うん。ここは、いろいろ辞退した方が良さそうだ。しきり直し!

 そう思ってアタシが口を開こうとすると、


「立ち会い人はジークマグナス、頼みますよ。ふふ、これでボク達の結婚に反対は起こりません」


 一足早く、なんだか熱っぽい笑顔を浮かべたあんちゃんが爆弾発言をかましてくれた。それはもう、あらゆる思考が吹き飛ぶレベルの。


「何せ、ジークマグナスはこの国の王ですからね」


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