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おかん転生 食堂から異世界の胃袋、鷲掴みます!  作者: 千魚
2 光の洞穴亭 in 王都
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フィーリ、相談する

涼しいです……

心地良くて睡魔が強大になっていきます……


すみません

言い訳です(T_T)

「タシダシ? って??」


「炊き出し、ね。恵まれないヒトの所に行って、ご飯を振る舞うんだよ」


「恵まれないヒト??? 恵まれないって何に?」


 隣に座ったルフがこてりと首を傾げた。白銀の毛がふわりと揺れる。


 午前中の時間を使って、アタシはガヴのあんちゃんとミーチャを連れ、「光の洞穴亭」に帰って来ていた。

 ミーチャはアタシとお揃いの新しいワンピースを着て、ニコニコしている。食堂に入ってすぐ、ルフの向こう隣の席を陣取って、フワフワの被毛を撫でたり抱きついたり。お気に入りなんだね。場所見知りもなく、幸せそうな笑顔にアタシはホッと息をついた。


「あー……言葉が悪かったね。偉そうに言うつもりはなかったんだけど」


「偉そうじゃないヒトにご飯作るってこと? ソレっていつも通りじゃない?」


「いや、違くて。んーと、最初から言い直すね。平たく言えば救民住居とか、救民地に住んでるヒトにご飯作るんだよ」


「なんで? 来るの待ってれば?」


 本気でわからないと言うようにきょとんとしているルフに、アタシは丁寧に説明していく。まぁ、そうだよね。元々そんな文化がないし、アタシの説明かなり下手だし。


「救民地のヒト達は生活……ぶっちゃけ、お金に余裕がないだろ? だからバザールよりも王城に近い『王都支店』には近寄らないし、原生林区に来ることだって簡単じゃない。普通に食べたり泊まったりするお金だって、あるかどうかわかんないヒト達らしいからね。『光の洞穴亭』自体、知らないだろ」


「だから宣伝に行くの? 行商みたいに? でもさ、お金、ないんなら嫌がられるんじゃない?」


「宣伝ってか、ボランティアだね。ボランティアってのは……えーと……うちらは毎日お腹いっぱい食べられるし、安全に暮らしてるだろ? まぁ、ルフが魔物を狩ってくれたり、あんちゃんがいろいろ考えて助けてくれるおかげってのが大きいけど、とにかく、救民地のヒト達よりイイ暮らしをしてることは確かだと思うんだよ」


「えー? 人狼の村の生活と全然違うのはわかるけど、イイ暮らしっ? って基準はどこなのさ」


 首を傾げたままのルフの耳が、ミーチャの手で畳まれたり伸ばされたり。ほっぺたも、ビヨーンとされたりブチャッとされたり。普通の犬や狼では有り得ないおおらかな触れ合い方に、話していてもつい目が奪われる。和むわー。油断すると本題、忘れそう。

 アタシは微妙に視線をずらして前を向き…………


「ちょ、なんだい!?」


 仰天した。なんであんちゃん、泣いてんの!?


「あんだぃ、ガヴさん、ハカハカし過ぎでねか?」


「ぅ……ぅ……っ! だってフィーリが……っ」


 え、アタシ!? なんで!?


「気にしないでイイよ。アイツ、元から変なヤツだもん。どーせ、何かに喜んでるだけだから」  


「んだから。んで、フィーリはどうすべと思ってんのっしゃ?」


 だってフィーリが可愛くて賢いうえに優しく感謝の言葉なんかを……。とかブツブツお経を唱えながら号泣するあんちゃんをサラリと流して、ルフもミョルニーもアタシを見た。


「え? …………んー……例えばね、ポトフとか、一品だけ持って救民地に行くんだよ」


「安く売るの?」


「いや、お椀を持って来たヒトに無料で配る……って感じなんだけど……」


 あんちゃんの涙とブニブニされ続けるルフの顔。カオスになりつつある空間に、アタシの勢いが殺がれて行く。

 心底理解できないというみんなの目と出会うと、ここが異世界なのだと心底実感させられた。


「んー、無理だと思うよ?」


「無理?」


「てか、フィーリはなんでわかんないの?」


「へ?」


「おめな、救民地にどんだけのヒトさ居んのか聞いたんだべ? どんだけけっぱっても足んねぇべや」


「それもあるけどさ。そもそもみんな食べないと思うよ? フィーリのこと知らないヒトからすれば、何言われたって食べんの怖いもん。常識的にも有り得ないし。材料無駄になるの、フィーリ嫌がるのにどうしたのさ。あ、あとさ、フィーリの言うとおりタダで配るとするよね? んで、万が一 みんなが並ぶとするでしょ? そしたら、救民地にお店出してるヒト達のその日の売上げ落ちちゃって、恨まれるんじゃないかなぁ」


「っ…………」


 ミョルニーもルフも正論で、反論できない。アタシの常識はこの世界の常識じゃない、そう突きつけられた。


 ここは無条件に他人の善意を信じられる世界じゃない。特に都市部ではいろんな思惑が渦巻いている。

 そして、種族間の魔力の違いが自分の身の安全に直結する。それをみんな本能で理解しているからこそ、種族で暮らす集落を飛び出して都市部で生きる者には、全面的な自己責任が科されているのだろうと気付いた。

 そっか。ボランティアの考え方に馴染まないっていうより、自己責任の認識が違うんだ。他種族の親切はおせっかい。ありがた迷惑。特に、食事に関しては。


「フィーリを恨む!? 許しません!」


 アタシが俯いたのに気付いたあんちゃんが、突然叫んだ。まぁ、向かいに座ってればわかるよね……。てか、今日のあんちゃん、情緒不安定じゃない? ガタイの素晴らしいイケメンが落ち着かないと、圧がすごい。


 あんちゃんは涙の跡を残した頬と真っ赤な目でギロリとルフを一睨みし、


「ウダウダ説教くさい狼は黙っていなさい、フィーリの希望はボクが叶えます!」


「説……っ!?」


「せっかくフィーリがやってみたいことを見つけたというのに、応援せずにどうします! フィーリの感謝の心に足るお返しをボクはし続けます! しかも自分から王都での仕事を広げたいなんて……つまりフィーリはボクのそばに永住する決意を固めてくれたということでしょう!?」


 なんだか暴走し始めた。


「は? 本格的に変だろコイツ……。妄想は止めろよ、龍人だろうが何だろうがフィーリのこと勝手に決めんな!」


 え、何? ちょっとわかんない。


 突然ガタッと立ち上がったと思ったら、次の瞬間なぜかアタシを抱っこしているあんちゃん。「気付いたらあんちゃんの腕にお姫様抱っこされていた」、というのがアタシの認識。さすがに「きょとーん」だ。


「ちょ……フィーリ!!!」


「え。……ぅええええっ!?」


 茫然としているうちに、景色がすごい勢いで変わっていく。ルフ達が消えた!? と思ったけど、そよぐような空気の流れと耳に届く風きり音。間違いない、コレ、あんちゃんが超高速で走ってる。


「大丈夫ですよ、ボクに任せてください」


 硬直したアタシに気付いたのか、耳元でいつも通りの優しい声。けど、時折バタンゴトンととんでもない音が後方に流れ、飛んで行く。

 アタシはギュッとあんちゃんの服にしがみつくと目をつむった。


「わ、フィーリ、そんな積極的な……。ふふ、その期待に応えましょう!」


 よくわかんなくて怖いし、それより何より目が回る! ホント、今日のあんちゃんどうしたんだい!?


 なぜか更にご機嫌になったあんちゃんの鼻歌を聞きながら、アタシはダンゴムシのように身を縮め、嵐が過ぎるのを待つのだった。



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