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おかん転生 食堂から異世界の胃袋、鷲掴みます!  作者: 千魚
2 光の洞穴亭 in 王都
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フィーリ、天然酵母パンを焼く④

昨夜7/31投稿のものは「③」でした

すみません

あちらは「③」に訂正済みで、こちらが「④」です


暑さに負けたのか、夜、投稿しようとすると恐ろしい睡魔に襲われ…

寝ぼけ投稿危険ですね…すみません…

 お味は……うん、酸っぱい。

 あー……ほら、天然酵母のパンてさ、基本食パンとかでも酸っぱいモンじゃないか、地球一般的に考えてさ。だから酸っぱいのが当然で…………とはいえ、酸っぱ過ぎる。これは自分を誤魔化すにも限界を超えてるかもね。

 ……うん。ホント酸っぱいね。ぷるぷるするよ……。……ただ、この柔らかさは捨てるにはホント惜しい。食い合わせとか、プラスしたりだとかでなんとかなんないもんかねぇ……。


「……ん? あ、ちょっと!」


「ん! んんんんむぅんっ!!」


 アタシが思考の海に浸かっている間に、汚れた細い腕が伸びて来て、あっと思った時にはヤンヤ酵母パンを頬張った女の子が目を白黒させて苦しんでいた。


「ちょ……出しな! ほら、ぺってしてイイから!」


 酸味に慣れてないヒトが覚悟もせずに食べたらそうなるのは当然で。

 アタシは慌てて水を取りに行った。お育ちの良さなのか食い意地なのか、彼女はどれだけ言っても口の中の物を吐き出そうとはしない。必死で口元を押さえ、体を痙攣させている。


 差し出されたコップの水をグビグビ飲んで、少女は「ふぅ」と息をつく。そして彼女は、初めてアタシの前でニカッと笑った。


「ミーチャ、ありあと、すよ?」


「ん? あぁ、お礼言ってくれるのかい? 素直なのはイイこった」


 アタシが「遠慮するな」と言った手前、勝手にパンを食べてしまったことは叱れない。舌足らずでたどたどしい喋り方と言い、何でも口に入れてしまうことと言い……まるで大きな赤ちゃんだ。

 可愛いとは思うが、目が離せないのはちょっと困る。小さい子がいる生活なんて久しぶり過ぎて、勘がなかなか戻ってこない。見た目はアタシより年上だしね……。


 ……ま、この状況で見捨てるって選択肢はないんだから、せいぜいコミュニケーションを頑張るとするか。


「ミーチャってのがあんたの名前かい?」


「なまえ? ……ミーチャはミーチャ」


「そっか。ミーチャ、パパとママは好きかい?」


 餌付けに成功したのか、警戒心が薄れてきているのがよくわかる。

 アタシは、昔ネットニュースで読んだ「被虐待児ほど親を庇う。親を悪く言うのは厳禁」という知識を元に、極力さりげなく、ミーチャにあれこれ訊いていった。


 結果、ミーチャの家の場所はここからわりと近いこと、両親は既に他界したこと、後見人の義母姉が苦手で今は一人で暮らしていること、なんかがわかった。

 通りで薄汚れ、ガリガリにやせ細っているわけだ。


「ミーチャ、みっつ」


 年を尋ねたら、そんな答えが返ってきた。本当に3歳なのか、3歳で親を亡くしたのかは、あんちゃん達に調べてもらえばわかるかもしれない。もし後者なのだとしたら、見た目から察するにミーチャは5年ほど、一人で生き抜いてきたことになる。最低限、義母姉の援助はあるのだろうが……。


 これは、やっぱりあんちゃんに相談か。


 アタシだってまだ、保護されてる身。この店が軌道にのって世間様に受け入れられれば一人前になれるだろうが、それはまだまだ先の話だ。


 あんちゃんから緊急事態用の連絡魔術具は預かっているものの……ま、夕飯の時でイイか。 


「まずは風呂……行くかね」


 二階の、直接温泉への通路に出るドアなら使ってもイイだろう。あんちゃんを説得するにも、身綺麗な方がイイからね。

 最後のラユッス酵母パンが焼けたら、まずはミーチャ、洗ってやるか。


次は「料理教室」です

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