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おかん転生 食堂から異世界の胃袋、鷲掴みます!  作者: 千魚
2 光の洞穴亭 in 王都
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フィーリ日常に戻る

なんとか今日に間に合いました!

「ほい、お待たせ」


 それなりに広い店内には、二人掛けのテーブルセットが6組ある。きっと、あんちゃんが宿とのバランスを考えて、客席を少なめにしてくれたんだと思う。お客も当然厳選されていて、現在のところ完全紹介制。ちなみに紹介する権利はガヴのあんちゃんとジークの兄さんにしかないらしい。

 過保護だなぁと思うけれど、正直その配慮、ありがたい。アタシ、たまに忘れちゃうけど7歳なんだよ肉体的に。


「おいしいかい? ありがとよ」


 頑張ってアピールしまくってようやく来店の許可を得たというお客達は1日あたり、平均4組。たぶん、そこらへんも調整されているんだろう。

 王都の食堂は、宿と違って滞在時間が短い。そのぶん、短時間の中で微妙な時間差が生じるから、アタシは結局、忙しなく厨房と食堂を行き来していた。

 近い将来、この客数調整は撤廃してもらおうかと思っている。材料費と家賃くらいは稼ぎたいしね。一見さんお断りは維持しつつ客席をフル稼働させて……うーん、どうすれば効率的に客を捌けるモンか。


 時刻は宵二。そろそろ今日のピークは過ぎるだろう。前世でいう、18時か19時くらいだけど、そこもあんちゃん達のありがたい、かなり過保護な配慮のおかげ。「フィーリはたくさん寝て、早く大きくならなくてはいけません」と、営業時間を短く設定してくれていた。

 確かに営業後の片付けや、2店舗分の朝食の仕込み、その隙間に風呂に入って就寝準備もしなきゃだから、早寝が基本の子ども的には大変なんだよ。宿じゃミョルニーとルフが後片付けしてくれたけど、これからの時間帯は向こうもピーク。たかだか数席の後片付けのためにわざわざ来てもらうわけにもいかない。

 まぁ、頼めば来てくれるだろうが、王都の店の責任者はアタシだ。ただでさえ食材調達は森の幸に甘えてるんだから、これ以上二人に迷惑かけたくない。家族だからこそ、線引きが必要なことってあるよね。


 とはいえ、客足を増やすことを見越して、あんちゃんには王都で皿洗いを手伝ってくれる従業員を募集してもらっている。低賃金だけど、賄いつきで原生林区も行き放題だ。なかなか見つからないのは、希望者がいないのか、あんちゃんストップがかかっているのか……。困ったものだ。


 ちなみに当のあんちゃんと兄さんも、アタシの健康な成長のため、時間をやりくりして、宵三までには夕飯を食べに来てくれる。忙しいだろうに毎日朝夕は必ず食べに来るあんちゃんと兄さんのためにも、栄養満点で美味しいご飯を作らなくちゃね。あんちゃんの顔色の悪さはだいぶ改善されたと思うけど、ウン百年モノのガリガリボディな兄さんは、まだまだ要改善要監視。食べさせがいがあるってモンだ。


「これ、めっっっちゃ美味しいぃですぅ! ツルっツルでもっきゅもきゅっ!」


 本日の主食、うどんを食べたアッフェタルトさんが、身悶える。めんつゆは小魚出汁、酒、魚醤と超シンプル。保存を考えなくてイイのはホント便利でありがたい。

 王都食堂も原生林区の宿同様、メニューは一つ。フィーリの気まぐれ日替わり定食一択だ。基本的には向こうでもこっちでも同じメニューを出している。まぁ、向こうは貯蔵庫から酒のツマミも出してるから、完璧一緒にはならないけどさ。


 蜥蜴娘のアッフェタルトさんは、調理法の勉強という理由であんちゃんを説得し、「光の洞穴王都支店」に数日おきに通い詰めることに成功していた。料理長が調理法の勉強? というツッコミを入れなかったのは、あんちゃんの優しさなんだろう……たぶん。


「我はこちらのサクリとしたものの方が好みである」


 アッフェタルトさんに触発されたかのように横から口を開いたのは、ジークの兄さんとこの料理長、ワチワナさん。何かとアッフェタルトさんに張り合う男性の魔人さんだ。

 ……てことは兄さんも魔人なのかね? でもなんか、兄さんの方が存在が希薄だったり神出鬼没だったりするから、微妙に違う気もするけどさ。なんというか、レア生物感があるんだよね、あの兄さん。ちょっとその点、あんちゃんと通じるモノがあるのかも……??


「天ぷらっつってね。残り物の野菜なんかでも作れるから覚えといてもイイかもよ?」


「む。どうしてもそなたが教えたいと言うのであれば……」


「覚える覚えるぅ! これ、絶対ウケるもん!」


 あの二人のところの料理長さんなら、大量の油の確保も問題ないはずだ。新鮮な食材な言わずもがな。

 うーん……なら今度、お料理教室でもしてみるか? お屋敷で働くヒト達だって美味しい方がイイだろうし……んー、メニューはどうしようかね。


「お嬢ちゃん、お勘定お願いできるかい?」


「はいよ」


 あんちゃんの紹介状を持ってきた幽霊族のおじさんが、幸せそうな笑顔で「ご馳走様。最後のアイスクリームってヤツも美味しかったよ」と言い残して帰って行った。


 いいねぇ、こういうありきたりの日常。平和な毎日。

 残念ながらまだ、兄さんちの家宝の指輪してるし、杖と皿が厨房の隅で待ってるけどさ。はぁ……早く身軽になりたいもんだ。


 あんちゃんの見立てでは、アタシの魔喫能力の有用性が世間に知れ渡るまであと10日ほど。魔喫イコールアタシであると公表はしないが、ジークの兄さんちの正式な世襲は、世間の注目を集めるくらいの大事らしい。アタシにゃまっまく興味ないが。

 ったく、なんだってアタシ、そんな面倒なことに関わらせられてんだか。有能で有力なお偉いさんと知り合うってのも、良し悪しだ。貯蔵庫の件ではホント感謝してるけど、それとこれとは別だと思う。


 肌身離さず持て、だの、変な使い方するな、だの、まったく我が儘なんだからさ。

 結局杖と皿は、時間のある時と就寝時のお供にすると決まったせいで、最近なんだか寝心地が微妙に良くない。


 魔喫じゃなきゃこうして料理人の真似事はできなかった。けどアタシは別に魔喫として活躍したいわけじゃない。そもそも、そのせいで捨てられたわけだし。 

 人生楽ありゃ苦もあるさ。わかっちゃいるけど、うーん、なんとももどかしい。


 ま、これ以上ソレ絡みの厄介事が舞い込まないことを祈るだけ、だ。

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