フィーリ、一国一城の主になる
ここから二章とさせていただきます
ご指摘いただきました通り、章の切り替わり等急な部分があります
後々閑話で加えていく部分、後々本編に関わる部分がある関係で、わたしが急ぎ過ぎたせいです……申し訳ありません
まさか、本気だとは思わなかった。
そして、あんちゃんとそのお友達がこんなにもチートだとも思わなかった。
……いや、あんちゃんに関してはある程度理解してたよ? かなりのモンだって。
そして、アタシは次男のおかげで「チート」って単語をかなり的確に理解できてるとも思う。
ただ…………なんだこの全能の無双っぷりは! チートを超えてるだろ!
…………え、これで一介の魔族なのかい!? 神だろ、これ! 龍人族……ってもしや龍神!?
「フィーリ、竈はここでどうでしょう?」
「あ、あぁ……ありがとう……」
「空間の接続は終えたが、この扉の装飾が問題だな。おまえ、どう思う?」
「あの……ジークマグナスさん……? いいよ、だいたいで……」
王都に詳しくないアタシには、ここがどの辺りなのかまったくわからない。けど、こぢんまりとした飲食スペースと広大なバックヤードを備えたレストランらしい、ということはわかっている。
昼食中に「王都で食堂を!」とか唐突なことを言い出した2人は、その場で側近達にあれこれ指示を出し始めた。呆気にとられたアタシが我に帰った時には、彼らはデザートを堪能していて、
「え……あの、さ……本気かい?」
未だに呆然としながら尋ねれば、
「この後すぐに出ますよ。フィーリはお昼ご飯は? まだなら急いで食べてくださいね」
と、謎の返答が返ってきた。
そして……今に至る。が、アタシは次々と目まぐるしく変わる状況にパンク寸前。聞かれたことになんとか答えるだけのポンコツと化していた。
「さてと、ボクはフィーリの部屋を作って来ます。ジークマグナス、下はあと、任せますよ? フィーリ、一緒に来てください」
「え? あ、あぁ……」
優雅に差し出された手を反射で掴み、アタシはあんちゃんと一緒に階段を上る。
二階の生活スペースはどこもかしこも花柄の壁紙で可愛らしい。厨房は淡い青、飲食スペースは淡い緑とシンプルだけど、外観はモザイクタイルの壁に真っ赤な屋根で、なんともいえずラブリーだった。
王都の中心部にほど近いところにあるというこの場所は、庭付きの戸建てが並ぶ、魔族にとっての高級住宅区画なのだそうだ。
人間も魔族も身体構造は大差ないし……こういう造りの街並みや戸建てはすごく懐かしい。「光の洞穴亭」は快適だけど洞窟宿だから、こういう一般的な家屋を見るのは久しぶりだ。
「急だったので多少手狭ですが、フィーリが管理するにはちょうどイイかもしれませんね」
いやいやいやいや。手狭って言葉の使い方、間違ってるだろ。
前世でアタシが住んでた家の、一つ上の区画にこんな感じの家が並んでいたことを思い出す。
ウチの団地の奥まった一角は緑豊かな分譲地で、日本のくせに庭にプールがあるような家が隣家と十分な距離を空けて建っていた。街路樹もそこだけ優雅で、一件あたり最低でも100坪はある高級区画。俳優さんの別荘や著名人の自宅もあるという、地元じゃ有名なセレブ街だ。
小学校の学区が一緒だから、息子らは普通に出入りしてたけどね。親としてはさ、あそこら辺のお宅に遊びに行く時の手土産おやつ、どうしたもんか困ったよね。ジャンクなおやつを嫌う家も多かったしさ。あの区画の子がウチに遊びに来る時には「古代米せんべい」とか「有機野菜チップス」とか「グルテンフリークッキー」とか、どこで売ってるのか謎なヘルシーおやつを持って来てくれたものだった。……ははは、懐かしいね。
きっと、ここもそういった感じのセレブ魔族の街なのだろう。
とはいえ、あんちゃんのお屋敷とは当然比べ物にならないけどさ……。
とりあえず、人間の国いろいろはいずれ関わってきます、とお伝えしておきたいと思います
疫病云々もです
まだ人間の国と関われる段階にないので、まずは足場を固めます




