フィーリとまさかのお願い
それきり二人は無言で食べ続けるものだから、気まずくて仕方ない。間を持たせなきゃ……と、
「おかわりは?」
訊いてみるものの、給仕はメイドさんのお仕事。いろいろ弁えたアパーヌタタンさんが静かに新しいお皿へと代えるだけで、アタシのいたたまれなさは変わらなかった。
「……あんちゃん、いつ帰ってくんの?」
結局アタシにできるのは、とめどないことを質問し続けることだけだ。
「ボクの居場所はフィーリのそばですから……」
すぐにでも帰りたい、そう応えたあんちゃんを止めたのは、偉そうなお客さん、ジークマグナスさんだった。どうやら、あんちゃんは彼の仕事を手伝わされているだけらしい。
「あんた……イイ歳なんだからさ、自分のことくらい自分でやんなよ……」
思わず、素直な意見がこぼれ落ちる。
「……ほぅ?」
暗く鋭い視線が刺さって一瞬怯んだ。でも、
「あんた、あんちゃんの嫁でも息子でもないんだろ?」
他人に頼りっぱなしというのは、大人としてどうかと思う。
「おまえ……いい度胸をしているな。面白い。やはり寄越さぬか、ガンドルヴ」
「だからダメですってば!! フィーリ!!」
「え?」
「ボクと結婚しましょう、今すぐ!! 帰したくなんてありませんし、誰かに譲る気もありませんっ!!」
「……はぃ?」
どうしたって言うんだろうね。あんちゃんの勢いがおかしい。こんなに興奮して……情緒不安だよ?
「特に! ジークマグナスは絶っっっっ対ダメですっ!! こんな鬼畜魔人で悪徳魔王な男、そうそういませんっ!!」
うーん……。この二人、過去に何かあったんだろうか。
ジークマグナスさんの外見年齢はあんちゃんと同じくらい。ただ、ここのヒト達の年齢って、アタシには推し量れないから、実は千歳近いと言われても納得できる。学友らしいし、長い付き合いなのかもしれない。
「あー……あんちゃん? 別にアタシ、譲られるつもりも何もないが……」
「ですよね!? ほらっ! フィーリはボクのものです!」
「へ? ……いや、アタシは強いて言えば『光の洞穴亭』のモンだよ……?」
お友達に向かってギャーギャーと喚いてるあんちゃんには、アタシの呟きは聞こえないらしい。2人であーだこーだ言い合っている。喧嘩するほど仲がイイってか?
……なんなんだよ、まったく。まぁ、こんなあんちゃんの姿を見るのは初めてだから、新鮮っちゃあ新鮮だね。
夜間飛行の疲労が抜けきっていないせいで、アタシはここに座ってるだけで結構ヘロヘロ。なのに、ずっと仕事漬けで疲労困憊のはずの2人は元気に口喧嘩に興じている。
基礎体力の違いか……? てかさ、これならアタシ、来なくても良かったんじゃ……???
「フィーリ!!」
背もたれに体を預けたところで呼ばれ、アタシははっと背筋を伸ばした。紅と黒、二対の瞳がアタシを見ている。しかも、さっきまでケンカしていた気配もなく。やけに真面目に。
「おや、話しはついたのかい」
何だか2人だけで通じ合っている気配に首を傾げた。……あれ? そういや、なんでケンカしてたんだっけ?
「フィーリ、ボク達からのお願いです」
一度友人と視線を交わし、あんちゃんがニコリと満面の笑みを浮かべた。殊更にキラキラしい。
なんだこりゃ……。コレ……面食いなら一発アウトかもしんないね。
あまりのまぶしさに、目を逸らしたい衝動が湧き上がる。でも……家族同然なんだから! 大丈夫! 息子がイケメンに育ったって、おかんはときめいたりしないんだよ!
「な……なんだぃ……」
「ぜひ、フィーリの料理を王都でも食べられるようにしてください。ボク達のために」
あー……こっちにも作り置きをって話か? まぁ、できなくはないし、こうやって呼びつけられるよりはよっぽどマシかな……
「食堂を開いてください!!」
……………………って…………ふへ???
去る連休で、書きためる予定でしたが、下の子が高熱を出し……
そしてわたしはイイ歳こいて、(しかも今更)ピプマイにハマり……
……はい。言い訳です。
すみません。
精進します!!




