フィーリとサプライズ1
本日のランチメニューは、シンプルに定食形式だ。とはいえ、残念ながらお米がないから、洋風定食どまりだが。
アタシは、白く長い廊下を、メイドさんの後について歩いていた。
すらりとしたリザードマンのおねぇちゃんは、昼食を乗せたワゴンを押している。正直、爬虫類顔を超えたリアルな爬虫類顔の彼女が、可愛らしいメイド服を着てることに、違和感しかない。まったく……なんでメイド服ってのは全世界共通でこんな作りなのかねぇ……。
もちろん、アタシもバラクさんの作戦通りメイド服を着せられている。しかも、カツラ被って。黒髪はやはり目立つらしく、今のアタシの頭は真っ赤っ赤のツインテール。この屋敷では一番目立たない色らしい。……冗談じゃなく、リザードマンさん達も鬼人さん達も赤系だから、文句を言いそびれてしまった。
ちなみに、変装しようのないルフは留守番だ。人化できない自分をブツブツと責めていたから、後でもう一度フォローが必要だろう。
「こちらのお部屋でございます。もう一度確認させていただきます。わたくしが給仕致しますので、フィーリ様にこちらの台車をお任せ致します。中に運び入れましたら、入り口近くで台車を押さえ、待機をお願い致します」
パッと見、服装以外ではアッフェタルトさんと見分けのつかないメイド女性アパーヌタタンさん。けど、動くと物腰も喋り方も全然違う。さすが、こんなゴージャスなお屋敷のご主人の身近に控えるメイドさん。お上品だ。
アタシは声を出すのもなんだか憚られて、こくりと小さく頷いた。
トントン、とアパーヌタタンさんが控えめなノックをする。すると、説明されていた通り中から女性の声が返事をした。警護を兼ねたメイドが、必ず中に一人は待機しているらしい。
「失礼致します」
アパーヌタタンさんの声に合わせ、アタシも一緒に膝を折って頭を下げる。ここでアタシだとバレてしまえばバラクさんの計画が台無しだ。周りを見回したい気持ちを抑え、台車に添えた手に視線を落とした。
カチャカチャと食器の触れ合う音を立てながらアパーヌタタンさんがテーブルに食器を並べて行く。どうも、ここは広大な広間のような一室で、手間がダイニング、奥がワークスペースとして使われているらしい。
遠くに人の声を聞きながら、アタシは出番が来る瞬間を待っていた。言い含められた計画では、料理を食べ、あんちゃんがアタシの味だと気づいたら正体を明かすのだそうだ。もし気付かなかったら、夕飯の時にヒントを出す。
まぁ、気付かないってことはないと思うけどねぇ。むしろ家族同然だと思ってるあんちゃんに気付いてもらえなかったら、アタシ、泣くよ?
「準備が整いましてございます」
アパーヌタタンさんの声に、アタシは我に返った。準備が済んだら、ワークスペースにいる執事さんがあんちゃんに声をかけ、その後食事が始まると聞いている。執務のキリがつくまで、食事はそのまま放置されるとも聞いたから、アタシはしばらくそのままじっとしてなければならない。お偉いさんは大変だね。




