フィーリと白亜の城
恐ろしい夜間飛行は、やっと熟睡できるようになった夜明けに終わりを告げた。辺りはまだ真っ暗だが、朝鳴き鳥が木立を飛び交っている。
広大な公園の広場に降り立った竜車からヘロヘロのまま連れ出されたアタシは、ルフの背で運ばれながら、今度は馬車へと連れ込まれた。
「……まだ遠いのかい?」
眠気にボーッとする頭で快適に整えられた馬車の中を見回す。竜車と同じ、落ち着いた内装と高級そうなフカフカクッション。ありがたいことに、揺れはあまり感じなかった。
馬車には専用の御者がいるようで、今度はバラクさんも普通に同乗している。
「到着したが?」
「……ん???」
眠過ぎて聞き間違えたかと思ったが、聞き返してみても同じ返事が返ってくる。どうも、ここはすでにガンドルヴ様とやらのお屋敷で、竜車はその専用発着場に降りたらしい。
広大な庭園を馬車で移動すれば、ベルサイユ宮殿と見紛うばかりの建物が見えて来た。二階建てで横に長い、庭園の向こうの白亜のお屋敷。やっぱり、ガンドルヴ様とガヴのあんちゃんは別人ではなかろうか……。
「フィーリ、お腹空いた……」
夜が長くなってきているとはいえ、もうすぐ朝一の鐘が鳴る。ルフのお腹は万全元気、メンタルも強靭のようだ。ちょっと……どころではなく羨ましい。
「屋敷の厨房に案内する。そこで朝食をとってくれ。今朝に限っては、幼いそなたの負担を考え、こちらで用意する。昼から、ガンドルヴ様にお出しするお食事と屋敷で働く30人分の食事の準備をお願いしたい」
「お願いしたいって……食材と調理器具はあるんだよね? もし初めて見る食材とかなら、今日の昼は無理だよ?」
さすがに初見の食材なら多少なりとも調理法の研究をしなくちゃならないし、動線の確認もしなければならない。30人前作ること自体は可能だが、不慣れな場所で作るとなるといろいろと時間が必要だ。
ちょっとしたドヤ顔で「ガンドルヴ様の好物は揃えてある」と答えるところを見ると、アタシの知ってる食材は少ないかもしれない。だってあんちゃん、何でも食べてくれるんだもん。特に反応がイイ料理も確かにあるけど、逆に考えれば、嫌いだと言って残す料理も苦手だと敬遠する食材もない。
とりあえず……貯蔵庫見せて貰ってから決めようかね。
近付いて見れば、繊細な細工がほどこされた白亜の城。その裏口からこっそりと中に入り、重厚で毛足が長いカーペットの上を静かに歩く。わりとすぐにあった厨房に入れば、そこはテレビで見た高級レストランの厨房のような広い空間。
テレビの向こうはステンレスの、銀色に輝いた場所だったけれど、ここは建物と同じ、真っ白な部屋だ。床も机も壁も棚も天井も、全部白い。
そこに、龍人の亜種だろうと思われる、トカゲのような顔をした細身の魔族が一人、立っていた。
「料理長のぉアッフェタルトと申しますぅ」
「あ……フィーリだよ、よろしくね」
動きやすい質素な服と見た目から、勝手に男性だと思っていたが、料理長さんは女性らしい。高く可愛らしい声でペチャペチャと喋る。
うーん……初めて会う種族のヒトはホント、わかりにくいね……。失礼だけど、アッフェタルトさんを見ると……『異種族婚』てヤツは、魔族同士でもかなり難度が高いのかも、なんて思ったり……。
1日2ページの公約だったのに、約束破り…
1日1ページで、ホントに申し訳ありません…




