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おかん転生 食堂から異世界の胃袋、鷲掴みます!  作者: 千魚
3 光の洞穴亭 in 救民街
102/136

初めての炊き出し(中)

すみません、長くなってしまいました(-.-;)

「おいし? ね、おいし? おいしーでしょ??」


 ミーチャを無視して、チャニ先生は繰り返し繰り返し、スプーンを口に運ぶ。気に入ってもらえたようだ。良かった良かった。

 いくら個人的な自信があっても、味覚はそれぞれ。一応、これまでの経験上、万人ウケの良かったメニューを選んだが、こうして見ると一安心。アタシはホッと息をついた。


「先生!!」


 さてそろそろ誰か寄ってこないか、と思ったところで、外見年齢がアタシと同じくらいの男の子が一人駆け寄って来た。

 しかし、「ちょうど良く」と言うにはあまりにも表情が険し過ぎる。


 少年はギロリとアタシを睨んだ後、


「先生を詐欺に巻き込むのはやめてもらおう!」


 変声期前独特の少し高めの声で鋭く言い切る。灰色がかった髪と目の彼は、パッと見では何の種族かわからない。ただ、異様にキツい眼光に、ミーチャが怯えて後ずさった。


「はぁ。そっちこそ言いがかりはやめてもらおうかねぇ」


「な……っ!」


「突然出て来て初対面のレディに言いがかりつけるなんざ、恥ずかしいと思わないのかい? はんっ! チャニ先生になぁにを習ったんだか」


「……このっ!」


 いきり立つ少年を鼻先で笑い飛ばし、「大丈夫だよ」とミーチャの頭を撫でてやる。思春期の男の子なんてね、めんどくさいもんだって決まってるんだよ。アタシの可憐さに目が眩むくらいならまだ可愛げもあるが、それ以外は適当にあしらってやるくらいで丁度イイ。どう扱ったった文句言うに決まってるんだ。


「さ、寄ってらっしゃい食べてらっしゃい! お一人様一杯限りの大ご奉仕! 早い者勝ち、食べなきゃ損! ご覧の通り人間のアタシにゃ魔力はないから、どなた様でもどんと来いだ」


「せんせ、おいし? ね?」


 高らかと宣伝文句をうたい上げれば、ミーチャの愛らしさとチャニ先生の食べっぷりに、少しずつ人の輪が狭まってくる。

 横で「人間……!?」とか呟きながらワナワナと震える少年はみんなで無視。チャニ先生くらいは少しかまってあげればイイのにと思うけど、彼女は生憎と今、一生懸命食べている。


「これはなかなか……ウィリがホクホクと…………しかし人間というのは…………」


 ブツブツブツブツ。

 学者が研究対象を見るような真剣さで食べていたチャニ先生が、ふと、止まった。


「これ、は…………」


「先生!? 先生!!」


 ぴたりと固まる姿は、まるで自らゴーゴンの呪いにかかったかのよう。見事な石化っぷりだ。どうしたのやら?

 口の手前で止められたスプーンからポトリとシチューの雫が垂れた。


「まさか……やはりおまえらが毒を……!?」


 せっかく狭まっていた人垣がザワザワと引いたのと反比例するかのように、灰色頭の少年が俄然、勢いを取り戻す。


「魔力がないとか言って……騙したな!? 先生を返せ!!」


 鬼の首でもとったかのごとく、そして親の仇でも見るかのように叫ぶ声に、つられて人垣から「毒? 魔力か!?」「チャニ先生!」「なんてヤツらだ!!」と怒りの声が飛んで来た。今にも掴みかかって来んばかりの雰囲気に、また、ミーチャが後ずさる。

 まったく……。この子とミーチャの相性は最悪だね。うちの可愛い娘に何してくれてんのさ。


 さて、どうとっちめてやろう、と思いながら口を開き、


「…………いや、美しい」


 嗄れた声に先制された。

 ん? 美しい?


「ちがうよ。おいし、でしょ!」


 首を巡らせれば、何やらミーチャとチャニ先生が言い合っている。

 先生、再起動したんだね?


「いんや。このマンドレイクの美しさを『美しい』と言わずして何と言うのじゃ」


「食べ物はおいしーって言うでしょ!!」


 再起動、失敗? なんだかよくわからない。バグってる?

 けれどその気持ちは灰色ボーイも同じだったようで、「先生!? ご無事で!?」と鋭い目を丸くした。


「くっ! おのれ、また騙したな!?」


「何言ってんだい。あんたも大概わけわからんね。元気なんだからイイだろうが。てか、ミーチャ、何もめてんだい?」


 人垣のざわつきは収まっている。張本人が元気に喋ってるんだから当然だろう。


「ん? …………あぁ、なんだい、ソレのことかい。マンドレイクの飾り切りだよ。あー……美しいも美味しいも、まぁどっちも間違っちゃいないねぇ」


 スプーンですくわれた、黄色っぽい一欠けに苦笑する。


 たぶんアタシ、初めての炊き出しに浮かれてた。じゃなきゃ、こんな大量のシチューのためにマンドレイクを山ほど飾り切りにするなんて面倒なこと、できなかったよ。

 今日の根菜盛り沢山シチューには、スライスしたマンドレイクがハート形や花形、小鳥形や魚形なんかになって混じってる。抜き型なんてないから大まかな形しか作れなかったけど、それでも、少しでも笑顔が増えるなら……とナイフでちまちま、ちまちま頑張った。

 …………うん、我ながら無駄に頑張りすぎたかね? なかなかのクオリティだが、こうして目を剥かれると落ち着かないよ。



(後)ではさすがに終わるはずです……(・・;)

(後①)とかになったらどうしよう(+o+)

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