第13章:波乱の保健室と「封鎖」されたベッド
競技場で歴史に残る無様な大スライディングをかました後、レンはついに念願を叶えた。学院の保健室へと運び込まれたのだ。
真っ白で清潔な病床に横たわり、レンはジンジンと痛む腰を押さえながら、安堵の息を漏らした。漂うハーブの精油の香りと室内の静けさは、インドア派の彼にとって、まるで死の淵から救い出されたかのような心地よさだった。
(少なくとも、ここには棺桶もなければ、魔力ボールもない。それに、俺に危険な強者のフリを強要する奴もいない。なんて平和なんだ……)
レンがようやく目を閉じて一眠りしようとした、その時だった――。
ガラバァァン!(そう、またしてもドアである。今回は保健室のガラスの引き戸が、粉々に砕け散らんばかりの勢いで激しく開け放たれた)。
「レン! 無事なの!? この大馬鹿者、魔力の防御壁も張っていないく製に、あんな危険な弾丸回避の歩法を使うなんて!!」
最初に飛び込んできたのはクレアだった。金髪のツインテールを激しくなびかせている。彼女は急いで走ってきたせいで顔を真っ赤に染め、心配と恥ずかしさが混ざった様子で、魔力フルーツの詰まったカゴを机の上に勢いよく置いた。
「どいて、クレア。あなたが保健室の温度を上げているわ」
クレアの後ろから姿を現したのはシルヴィアだった。その手には、もうもうと湯気を立て、かすかに……焦げ臭い匂いを漂わせるお粥のお椀が握られている。
「レン、これは私が3時間かけて作った、回復効果のある薬草粥よ。早く食べて」
レンはシルヴィアの手にある、まるで上級の怪しい魔薬のように真っ黒なお粥を見つめ、冷や汗を滝のように流した。
(3時間も煮込んだら、それはもうただの化学兵器だよ、お嬢さん! 食べた瞬間に異世界からログアウトしちゃうよ、俺!)
「本聖女の前に立ちふさがるのはおやめなさい!」
ルミナリアがその間に割り込み、温かい光を放つ杖を構えた。
「そんなありふれた食べ物で、レンさんの腰が治るわけがないでしょう? 私の『大光明治療魔法』で癒やして差し上げます!」
直後、自動車のヘッドライトばりの、眩い黄金の光が狭い保健室の中に爆発的に広がった。レンはあまりの眩しさに、本能的にその鋭い眼光をギュッと細め、顔を背けると、自身の動揺を隠すために冷淡な風を装って「ふん」と小さく鼻を鳴らした。
パッシブスキル**「神秘のオーラ」**が、ここでも自動的にスイッチをオンにしてチームを牽引する。
その時、ルミナリアの脳内では:
(あの人……また私の治療魔法を拒んだというの? あの深く何かを見通すかのように細められた視線……。そうか分かったわ! 彼は肉体を極限まで鍛え上げた達人、外部の力に頼ることなく、己の強靭な意志だけで痛みを乗り越えようとしているのね! なんて、なんて不屈の大丈夫なのかしら!)
「レンさん……お気持ちは分かりました! 光を消します!」
ルミナリアは感動のあまり涙ぐみ、慌てて魔法を収めた。
レンが呆気にとられる暇もなく、今度は病床の……真下から、二本の鋭い犬歯を持った小さな頭がひょっこりと突き出た。這い出てきたリリスは、髪を少し乱しながらも、その紫色の瞳を爛々と輝かせている。
「ふん、騒がしい有象無象どもめ。魔王に対する最高の治療法は、吸血鬼の血に決まっているわ!」
リリスはベッドの上にぴょんと飛び乗ると、レンの両足の上に跨って座り込んだ。彼女はその小さな顔を彼の首筋に急接近させ、犬歯を剥き出しにして噛みつこうとする。
「我が皇族の血を注ぎ込んであげるわ! そうすれば、痛みなど一瞬で消え去るもの!」
「離れなさい、このコウモリ女!!」
クレアが叫び、リリスを引き剥がそうと飛びかかった。
「レンから離れて」
シルヴィアもまた、その争奪戦に参戦する。
「私もレン先輩をギュってしたいです!」
いつの間にかドアのところにいたミオーネも、入院費の計算書を握りしめながら突撃してきた。
こうして、保健室の小さなベッドの上で、学院トップの権力を持つ5人の美少女たちによる、レンを全方向から奪い合う大決戦が勃発した。腕を引っ張る者、足にしがみつく者、首筋に噛みつこうとする者――。
間に挟まれたレンは、病衣の下に穿いていた命の次に大切な「ひまわり柄のトランクス」を、危うくミオーネに剥ぎ取られてオークションに出品されそうになった。彼は目を丸くし、腰の激痛に耐えながら、声にならない悲鳴を心の中で絶叫した。
(お前ら……いい加減にしろ!! 俺はただ一人で静かに横たわりたいだけなんだ!! 誰か助けてくれ、この保健室は戦場よりも危険すぎるだろぉぉ!!)




