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【第二部】処刑された最強呪術師、魔法世界で異端となる 〜鬼使いと閃光の剣士〜  作者: 鬼喜怪快
序章 望遠の記憶編

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1話 聞いてはいけないおとぎ話

本作は第1部の続編ですが、ここからでもお楽しみいただけます。

気に入っていただけた方は、ぜひ第1部も読んでみてください。

 



 血塗れの男が、洞窟の天井から吊るされていた。

 その下では、何十匹ものゴブリンが涎を垂らして見上げている。


 ――あと一撃でも当たれば、確実に死ぬ。


 男に意識はない。

 ただ、かすかな呼吸だけが、その命を繋ぎ止めていた。


 ゴブリンたちは興奮していた。

 手の届かぬ獲物を前に、喉を鳴らし、歯を鳴らし、じりじりと数を増やしていく。


 やがて一匹が石を拾い、男へと投げつけた。

 鈍い音が響く。

 だが、縄は切れない。


 すると別のゴブリンが斧を持ち出した。

 それを見た他の個体も、次々と武器を手に取る。


 狙いはただ一つ――

 天井から吊るされた、その縄。


 ――投げられれば、終わりだ。


 ゴブリンたちは一斉に腕を振り上げた。


 次の瞬間――

 吊るされていた男が、ガバッと顔を上げて叫んだ。


「おーい! いつまで、この格好でいなきゃなんねーんだよ!

 斧投げられっぞ!

 当たったら死んじまうぞ俺っ!」


 

 血塗れの割には、やけに元気そうである。


 「もう助けに来ていいと思う!

 客観的に見て絶対に今だと思う!」


 

 その男――バーリの必死な訴えが、洞窟内に響き渡った。


 「この洞窟内のゴブリンはすべて集まったよ」


 岩陰に隠れ、モンスター感知をしていた魔法使いミラが合図を送る。


 その時――

 空気が、焼けた。


 『烈波の式』


 炎の波が洞窟を埋め尽くした。


 一瞬遅れて、

 ゴブリンの悲鳴が焼き切れる。


 逃げまどい、散り散りになるゴブリンへ――


 閃光が走る。

 ――気づいた時には、すでに数匹が斬り伏せられていた。


 鬼使いの呪術師ロッキと、閃光の剣士フラン。

 二人が一瞬にしてゴブリンを殲滅した。


 「きゃあー!」


 

 一匹のゴブリンが、岩陰に隠れていたミラを見つけ、

 斧を振り下ろそうとしていた。


 《止まれ!》


 役小角はとっさに、

 一言主神の力を発動――


 ゴブリンが、斧を振り上げたまま止まっている。


 ――ザシュッ!


 そこをフランの一刀で伏した。


 「ありがとう……二人とも……」


 「どういたしまして」


 

 ――――――


 

 ミラの水晶玉で敵の感知を開始する。


 「これで依頼は完了かしら」


 「攫われていた人たちは、

 外で待機している冒険者の人たちに預けたから心配ないよ。

 ――フラン姉さん」


 「ゴブリン、モンスターの生命反応、共に無し。

 もう、この洞窟には敵はいません」


 本来、ゴブリン対峙などCランクやDランク扱いだ。

 Sランク冒険者のフランはもちろん、

 Aランク冒険者だって参加しない。


 しかし、ロッキもフランも――

 目の前の人を助けるという信念のもと、

 仕事を選んだりはしなかった。


 「それでは帰りましょう」


 「うん」


 「今日の凱旋パーティーは、二人とも顔出してよね!」


 剣士フラン、呪術師ロッキ、魔法使いミラ――

 談笑しながら三人は洞窟を後にした。


 「おい! お前ら! これどこまでがジョーク?

 せめて降ろせや! 囮役ちゃんとやっただろ!」


 血のりを全身に塗り、

 長時間吊るし上げられていた人質、兼エサ役――バーリ。


 この時だけは、

 本当に彼は忘れられていたようだ。


 

 ――――――


 

 パジャン村のギルドハウス。


 依頼達成したことをマスターに報告する。

 受付にて依頼料を渡されるが、即金でもらうのはバーリのみ。

 他の三人はギルド銀行で貯金してもらっている。


 凱旋パーティーは、依頼に出た者たちが集まって毎日行われている懇親会のようなものだ。


 ロッキもフランも、いつもは参加しない。

 たまに参加しても、お腹がいっぱいになると端の席に座り、

 ゆっくりと自分たちの時間を過ごすくらいだ。


 今日もフランはご飯を食べると端の席につく。

 小鴉丸を抜き、刃のメンテナンスを行い始めた。


 刀身の汚れを拭き取り、刃こぼれの確認まで行う。

 絶対に折れない刀に、刃こぼれなどあるわけないのに……。


 フランと小鴉丸が無言で語らう時間。

 フランはこの時間をすごく大切にしていた。


 「ねぇ、ロキ坊……」


 「はい?」


 「今、後鬼さんとかいるの?」


 「いえ。繋がりは切っているのでいませんよ」


 「後鬼さんに直接聞けばいいんだけど、

 前に聞いた時、はぐらかされた気がしてさ」


 「何の話です?」


 「ロキ坊がどうして前鬼さん後鬼さんと知り合ったのか……と、小鴉丸のこと」


 「……」


 「やっぱり、聞かない方がいい?」


 役小角は少し考えた。

 みんなには生まれ変わりの事実を隠している。


 あくまでロッキが死にかけていたところ、偶然息を吹き返したことで、

 この異世界特有の“生まれ変わり”が発動し、不思議な力を手に入れた――

 という話になっている。


 正直に話せば、ロッキの中身が異世界の老人だとバレてしまう。


 生まれ変わりの体験者が自分のことを話したがらないのは、色々と理由があるのだろうが、

 自分が自分ではないと口に出すのは、少なからず辛いものがあるのだと思う。


 小角はふと――

 いつかの後鬼との会話を思い出していた。


 『もし、フランがわたしたちのことを訊ねてきた場合――小角様がうまいことお伝えくださいませ』


 『うまいことって言われてもなぁ……』


 『生まれ変わりに踏み込まないように……わたしたちのことは事実を話せば良いのです』


 『……君たちの事実こそ信じられないと思うよ』


 『それならそうで構いません……

 口下手なもので、わたしはうまく伝える自信がありません』


 『……わかったよ。

 もしそんな時がくれば、うまく伝えてみるよ』


 今、まさに――

 そんな時が来てしまったようだ。


 「……ごめん、忘れて。今度本人に聞いてみるから」


 申し訳なさそうな顔を見せ、諦めたフラン。

 その姿を見た小角は、ゆっくりと口を開いた。


 「伝えることが苦手らしくてさ……。

 もしも聞かれたら伝えておいてほしいって言われたんだけど……」


 「!」


 フランが顔を上げる。


 「後鬼から聞いた話で、フラン姉さんには信じられない話かもしれないけど……」


 時がゆるく流れる中、

 小角と前鬼・後鬼の誰も知らない出会いの記憶が語られる。


 もちろん、生まれ変わりのことは伏せながら――


 フランは黙って身体をロッキへと向けた。


 いまから語られる話は、作り話――

 ロッキが作った、ただのおとぎ話。


 ただし、それは知ってはいけないおとぎ話――

 聞いてはいけないおとぎ話――


 それは――

 今もなお、続いているおとぎ話だった。


  

 


 

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