櫓の夜
結局、旅人は、わたしと共に一晩、櫓で過ごした。
ロトカが持って来てくれた、温かい飲み物を共に、飲んで。旅人が出してくれた、異郷の焼き菓子を、かじって。捻ってしまったらしい、旅人の足に、応急手当を、して。
話し相手、と言った割には、寡黙で。けれど、ポツ、ポツ、と、旅の話をしてくれて。わたしも、少しずつ、旅人と出会って以降の話を、した。
小さな頃は、恐ろしく感じていた相手で。その頃より、顔立ちは、険しくなっているくらい、なのに。
今は不思議と、隣にいることも、言葉を交わすことも、苦ではなかった。
むしろ、それこそ、ユキオオカミと共にいる、かのような、安心感を、覚える、くらい。
イワオオカミの、ラディがいる、からだろうか。
きっと、彼がいなければ、わたしは、幼いユキオオカミ達の死に、囚われていた、だろう。
それを見越して、彼は、櫓に泊まると、言ってくれたのだ。旅の途中、疲れも、あるだろうに、寝ずの番を。
ポツポツとでも、話していれば、時が過ぎるのも早く。
雪の降る日の多いこの村では珍しく、その日は晴れて。
気付けば白んでいた空を見上げ、旅人と二人、山の上から天へと昇る、朝日を、見た。
拙いお話をお読み頂きありがとうございます
続きも読んで頂けると嬉しいです