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ログアウト  作者: 狐野柄
第一章:FIRST GAME
11/22

第11話 『言葉無き祈り』

目を見開けば、知っている天井がある。

いつもの部屋の、自分の部屋の天井。

何の変哲の無い天井。

窓から差し込む、朝日と共に目を覚ます。

朝起きれば、朝食が用意されている。

母親は、弟の朝食を作っている。

父親は、朝食を食べながら新聞を読んでいる。

弟は、学校に行った後に起きる。

普通の家庭と同じことをしている毎日。

なにも変わらない、つまらないいつもの日常。

友達と学校に行って、学校で授業を受けて、昼食もみんなで食べる。

午後からも勉強。そんな毎日。

いつものように、帰れば弟が「ただいまー!」って声をかけてくれる。


そう、いつものように。


時間になれば、母親も仕事から帰ってくる。

帰ってきて、夕飯を作り始める。


そう、いつものように。


仕事から疲れたように父親が帰ってくる。

母親と弟はそれを出迎える。


そう、いつものように。


弟は、夕飯まで好きなテレビを見て待っている。

笑ってその内容を、面白おかしく家族に話す。


そう、いつものように。


家族みんなで、食卓を囲い夕飯を食べる。

学校でのことを話したり、何気ない会話をしている。


そう、いつものように。


やることを終えたら、ただ眠りにつく。


―――――――――――――――――――――――――――――


 そう、いつものように。


―――――――――――――――――――――――――――――


 そう、いつものように。


―――――――――――――――――――――――――――――


 そう、いつものように。


―――――――――――――――――――――――――――――


そんなくだらない日常を繰り返す。

楽しい日々を繰り返す。

そして、年老いて最期を迎える。

その後は、前世を知らずに新しい生命に移り変わるだろう。


そんな、生命の循環を繰り返し続ける。


洸「(俺は死んだら、次は何に生まれ変わるのかな。)」


洸「(動物かな。)」


洸「(植物かな。)」


洸「(この世にはないものかな。)」


洸「(生まれ変われるかな。)」


洸「(それとも、また人間かな。)」


目を閉じて、考えた。

洸は、そんなことを考えていた。


龍斗「洸くん!!!!!!」


洸の身体に巻き付いたワイヤーが引っ張られようとした時だった。



――――――――うぅぅぅぅーーーーーーーーーーーーーーー。



学校の校内にサイレンが響き渡った。

そう、カクレンボ開始の時と全く同じサイレンだった。

聞き覚えのあるサイレン。


洸「……っ。」


洸の身体に巻き付いていたワイヤーがほどけた。

そして、鬼もその場を去っていった。


龍斗「洸くん!!よかったね!ほんとに!」


洸「龍斗……。おれ、生きてんのか……?ここは、現実なのか?」


龍斗「あぁ。時間になったんだよ。」


時間。それは、あの時から3時間経った、ということになる。


洸「そうか…。終わったんだ。やっと。」


洸は、瞳に涙を浮かべていた。


終わりを告げるそのサイレンは、関係者全員の力を奪った。


龍斗「僕たちは、無事だった。どっちも死んでないんだ。生きてる。」


洸「うん。うん。死んだかと思ったよ。覚悟してた。」


龍斗「もう大丈夫。さ、みんなのところに戻ろうか…。」


洸「うん。」


疲れ切った2人は、心身ともに疲れていながらも、身体を支え合い立ち上がった。


――――1階 保健室付近 <實・焦吉・蒼SIDE>—―――


蒼「やっと。やっと終わったんだ。やっと。」


實「あぁ…。ようやく、3時間経ったんだ…。生き残れたんだ。」


蒼「焦吉!終わったぞ!俺たち生き残れたんだ!」


焦吉「あぁ。やったな…。生き残れたんだ。」


蒼は玄関に駆けていく。


蒼「(やったよ。約束通り、2人の分生き残れたよ。2人の犠牲は、無駄にならなかったよ。だから、安心してくれよ。)」


蒼は、空に向かい心の中で、そういった。


實「急ぐぞ。焦吉の手当てをしてやるんだ。」


蒼「あ、あぁ。悪い!今いくよ。」


――――1階 階段付近 <洸・龍斗SIDE>—―――


洸「いててて。みんなどこにいるんだ…?」


龍斗「多分、保健室にいるよ。怪我人が2人も居たんだ。」


洸「わかった、そこに向かおう。」


龍斗「うん♪」


洸と龍斗は、ボロボロの体を動かして保健室へと足を進めた。


洸「ところで、これって終わったから帰れるんだよな?」


龍斗「多分ね。帰れると思うよ。いつも通りの生活が帰ってくるんだよ。」


洸「そっか。そうだよな。」


龍斗「みんな、無事だといいね。」


洸「無事さ。あれから、通知が飛んでないんだ。」


龍斗「あぁ、そう言えばあったね♪」


最後の知らせから、もうログアウトの情報は一切なかった。


『ですげえむ(17)』


洸「8人も…。いなくなっているのか…。」


龍斗「そうだね…。そして、クラスは全部で23人。一人多いね。」


洸「主犯格…か。」


龍斗「多分ね。紛れて見てるんだろうね、監視として。」


洸「ストーカーみたいだな。気味が悪い。」


龍斗「全くだよね。」


洸「とにかく、はやくみんなと合流しよう。」


龍斗「そうだね。行こうか♪」


・・・・・・・・・・・・・・・・・。


――――――――ガララララララ。


美南「くっ…!血が止まんねぇ!」


歩「う…うぅ……。」


麻衣「未希いい!!未希!!!!」


龍斗「え…。なにこれ…?」


洸「…っ!」


洸たちの居合わせた光景は、最悪を意味する光景だった。

ベットに横たわる一人の少女。

彼女の腹部からは、大量の血が出ていた。


實「くそっ!!」


蒼「…。」


焦吉「あ、洸たちじゃないか!」


龍斗「お、おい。實。これは…。」


實「龍斗…。無事でよかったよ…。でも、未希がやべぇんだ!こんなに血流して!!」


麻衣「未希!!未希!!終わったんだよ!!ふざけたゲームは終わったんだよ!!未希!!」


目の前のベットに横たわる少女を見て、一人少女は声をかけ続けていた。


美南「くっそ!!止まれよ!!」


もう一方の少女は、必死に布で腹部から出る大量の血を抑えていた。


歩「うぅ…うっ…うう…。」


もう一人の少女は、座り込んで泣いていた。


蒼「俺たちが駆け付けた時と同じ状況なんだ。もうずっとこの状態なんだ。」


焦吉「あぁ。ずっとな。」


一人の少年は、足に包帯を巻いてベットに寝転がっていた。

一人の少年は、その彼の横で見ていることしかできなかった。


實「未希!!お前はもう、大丈夫だ!もうすぐ治る!!」


一人の少年は、彼女の目の前まで行き、希望を与え続けた。


美南「く…。」


麻衣「未希…、目を覚まして…。これから、帰るんだよ。」


一人の少女は、横たわる少女の力のない手を握った。


麻衣「お家に帰るんだよ。もう……帰れるんだよ…。やっとここまでこれたじゃない…。最後までこれたのに…。」


美南「……っ。」


一人の少女は、止血していた布を取った。

止血をやめた。


麻衣「美南ちゃん…?!どうして…!?はやく止めないと!!」


美南「もう…。」


一人の少女は、手を握る少女の肩に手を置いた。


麻衣「…っ!」


美南「もう、休ませてあげよ。未希は…彼女は十分頑張ったじゃない…。」


麻衣「でも…。だって…。わたし…!!!!」


美南「……っ!!」


手を握る少女は泣いた。


麻衣「未希に助けられたまんまじゃない…!!!!」


歩「うぅっ…うぅ…っ。」


麻衣「わかってるよ…っ。わかってるけど…。私が本当は……。」



『麻衣!!!!』



『……うっ!!』



麻衣「私を突き飛ばして代わりになったのに…!私はなにも…!」


龍斗「…!」



『龍斗!!危ないっ!!!』



洸「お、おい?龍斗?」


麻衣「私も何かしてあげないと……っ。」


一人の少年は、少女の後ろから肩に手を置き声を掛けた。


龍斗「きっと、彼女は君がそれほどまでに大事だったから、君に生きていてほしくてやったんだよ。自分のしたいことをする。その自由に恩返しはいらないって、そういうと思うよ。」


麻衣「…っ。」


龍斗「君のことが大好きだからやったことなんだよ…。きっと。」



『麻衣!!!!』



『え?』



『必ず…!生き残って帰ってね…。』



突き飛ばした時の彼女は恐怖はなく、

ただ笑顔だった。

微笑んでいた。


麻衣「未希…。」


ベットに横たわる少女は、握られている手を、力を込めて握り返した。


麻衣「未希!!」


心なしか、彼女は笑っているように手を握る少女には見えた。

こちらを見て、無事を祈るかのように。



『この先の未来、どうか無事に生き抜けますように。』と。

そう言っている気がしていた。



そして、それは届いた。静かに悲しい通知が。

みんなの目の前で起きたこと、それが届いた。


『—―――安藤 未希がログアウトしました。――――』


今は、誰も見なかった。

静かに、何事もなく、その魂が在るべき場所へ行けるために。

それを、友達として見届けるために。




第11話 『言葉無き祈り』 (完)

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