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再び何故か俺の手を掴もうとしてきた馬鹿から距離を取るべく、安倍の後ろに戦略的撤退をしていたら何故か馬鹿に凝視されてしまう可哀そうな俺。
あぁ、誰か夢だって言ってくんねぇかなぁ……。
おい、だれだ戦略撤退を逃げたって読んだ奴。
怒らないからでて来い。今なら軽い2時間の説教で許してやるから。
「で? 会長は何で俺の後ついてきたかと思ったら急にあんな訳分かんない事言い出したんですか……?」
はっ!! いかんいかん。
今の状況が非日常すぎて思わず現実逃避をしていたら、安倍が馬鹿に状況説明を求めていた。
よくやった安倍! だけど馬鹿はやっぱり聞いてないぞ!!
そして何故俺を凝視する馬鹿!!
……っていい加減うざいわ!!
「おい。ば……会長何で俺の後なんかついて来やがった。あの黒もじゃのとこにいなくて良いのかよ?」
「あぁ……御主人様。何故そんなつれない事を仰られるのですか? 私の心は常に御主人様と共にありますのに……」
真顔で馬鹿が何か訳分かんない事言い出したっ!!
なんなんだ本当にっ! 一回病院いって来い!
「え~っと、会長は何で冬ちゃんを御主人様なんて呼んでるんですか……?」
じりじり近づいてくる馬鹿に安倍も己の萌えとやらよりも疑問の方が大きくなったのか馬鹿に再度問いかけていた。
俺この間に逃げたらだめかな……。逃げてぇなぁ。
………無理だよなぁ雰囲気的に。なんか逃げたら地の果てまで真顔で追ってきそうで怖ぇよ。こいつ。
「……さっきから思っていたが、お前は御主人様の何だ。俺の御主人様にストーカーのように付き纏い隣にいるなど、事と次第によっては只では済まさんぞ。」
やっと馬鹿が口を開いたと思ったらまた何か訳分かんない事を言われてしまった。
誰でもいいから今のこの状況を説明してくれ……。
「では御主人様。僭越ながらこの私めが御説明させて頂きたく思いますが宜しいでしょうか?」
……もぅ俺は何をどうツッコメば良いんだ。




