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僕が死ぬと世界が滅びます。  作者: ふぃーりす
三章 答え
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答え


「・・・ニナと話させてください」


「かしこまりました」


そう言ってマティスは数歩バックした。


そしてニナに前に出るように促す。


ニナはうつむいたまま動こうとしない。


「なんで父上を襲ったの?」


ニナは数秒の沈黙の後短く答えた。


「成り行きよ」


「成り行き?」


「そう。魔軍を引き入れるため、魔術陣を破壊した時に、あなたの父親が工房に入ってきて私の行動を目撃した。だから殺したの」


「殺すつもりだったの?」


「そうよ。邪魔なら殺す。魔物の私が人間を殺すことに何か疑問でもあるの?」


「・・・・」


「私はね。本音を言えばあなた達をいつかひどい目に合わせてやろうと思ってた」


「ニナ・・・」


「両親がいて、曲がりなりにも愛されているあなたのこと嫌いだったわ」


「そうなの?」


「ええ。今はだいぶマシだけど初めてみた時は吐き気を必死で押させてた」


「そう」


「でも今日はちょっと清々したわ。だって落ち込んだり動揺したりするあなたを見れたもの。最後に見れてよかった」


「最後?」


「そうよ。私はあなたにもう会いたくないもの。あなただってそうでしょ?」


「そうとは思ってないよ」


「嘘。私は魔物であなたの父親の仇なのよ?それにあなたのことなんて大嫌いなの。そんなやつと一緒にいたくないわよね?」


「ニナが人間だとか魔物とかどうでもいい。それに父上はたぶん生きてるし」


「は?旦那様が生きてる・・・?だって殴って動かなくなって・・・」


「僕がついた時は意識を取り戻してた。すぐに気絶はしたけど」


「は?そんな・・?死んだと思って私・・・」


「心配しなくても大丈夫」


「心配なんかしていない!それに無事だったとしても私が殺そうとしたことには変わりない!」


「・・・・」


「それに私は人間じゃない!」


「だから?」


「だって私はあなたを騙してたのよ?騙すつもりで近づいたのよ!」」


「だから僕はニナのことを憎めと?」


「それが普通のことじゃない!」


「それは難しい」


「なんで?単純よ!私は魔物で、敵である人間のあなたを騙すために近づいて、父上も殺そうとしたのよ!」


「でも僕はニナに特になにかされたわけじゃない。それにニナは僕が落ち込んでる時いつも励ましてくれた」


「そんなことした覚えはないわ!」


「でも僕は励まされた。そんな人を憎むなんて僕には無理だ」


「あなたに取り入るために励ますふりをしたかもしれないじゃない!?」


「それでも励まされた。だから僕は君の友達になりたいと思った」


「思うだけなら自由よね。実際友達じゃないし」


「じゃあ勝手に思わせてもらうよ」


「バカじゃないの!?なんでそう思うの?頭どうかしてるんじゃない!?」


「まぁそうかもね」


「はぁ・・・相変わらずあなたと話すとイライラするわ」


「そう?僕は楽しいけど」


「は?ムカつく」


「ニナと幼馴染としての経験から言わせてもらうけど、今のニナって僕を騙して近づいたこと、父上を殴り倒したこと、自分が人間じゃないことに負い目を感じてる。だから僕に嫌われるように仕向けて、自分から距離を置こうとしてるんだよね?」


「全然違うわよ」


「・・・ニナって昔から嘘が苦手だよね」


「今まで私が人間じゃないことに気が付かなかったくせに何ってんの?馬鹿にしてるの?」


「ニナが僕のこと嫌いっていうのは本心だったと思う。だから僕も本心で言うよ。僕の前からいなくならないで」


「・・・・・」


「僕はニナがいないと寂しい。今までずっと一緒にいたんだからニナがいないと調子が狂う」


「・・・・知らないわよ」


「ああ、たしかにニナのとっては知ったことではない話。だからお願いだと思って聞いて。お願い。僕の前から黙っていなくなるのは勘弁して」


「・・・・・」


ニナは僕に背中を向けた。


「あなたって本当にムカつく・・・」


ニナと話し終わった後、僕はマティスの方をみた


そして落ち着くよう自分に言い聞かせながらマティスに告げた。


「マティスさん」


「なんでしょう。魔王様」


「先程はから失礼な態度をとってすみません」


「お気になさらず。魔王様は我々を好きに使って頂いて結構です」


「一つお尋ねしても良いですか?」


「なんなりと」


「あなた達が魔王と呼ぶ僕のことを信じてもらえますか?」


「意味がわかりかねます」


「僕はこれから魔物も人間も半魔も、誰にとっても住みよい世界を作ろうと思います。先代の魔王の意思を引き継いで」


「おお!それはそれは」


マティスの目に光が灯ったように見える。


「ですが僕は人間側に残ります」


「なんですと!?どういうことですか!?」


マティスは愕然としたように叫ぶ。


マティスと一緒に魔物もどよめく。


「マティスさんは人間を憎んでいないと言いましたね?」


ちらっとニナの方向を見る。


ニナは依然、僕の方へ背中を向けている。


「僕は世間知らずです。ですが今から勉強して魔物が住みやすい場所を確保する方法を考えます。そのために人間の社会にすんでみなければならないと感じています」


「・・・勉強は我々といっしょにすればよろしいでしょう?何でもお教えします」


「ですが、それは一つの視点。ほかの視点がなければ偏った見方になります」


「・・・・」


「人間側で勉強したら、今度は魔物側に行きます。いつか必ず。だから僕を信じてください。さっきの質問はそういう意味です」


「・・・・」


僕が目指すのは世界平和やすべての人を幸せにするなんて大層なものじゃない。


ただ、単純に人間、魔物そしてニナにような人が、人の目を気にせずに生活できる世界。


いや、ニナや僕自身が普通に生活できる未来。


それを作るのが、生きながらえてしまった僕の使命なのだと思う。


「それは・・・承服しかねます」


マティスが苦々しくつぶやいた。


「今回の襲撃は私どもの総力を挙げた物。失敗したとなれば、いや失敗したとみられれば魔軍の崩壊は免れません。そうなれば多くのものが死ぬ。それだけは・・・」


たしかにそのとおりだ。


なにか考えなければ・・・


そう思った直後、一陣の強風が吹く。


「うっ!」


風は木々を大きく揺らし飛び去った。


その後は大きな声が響く。


「何をやっている!マティス!」


声の方を向くため見上げた。


そこには大きな翼とトカゲのようなフォルム、凶悪そうな顔を持つ魔物がゆっくりと降下していた


先程、ファブリスを襲った魔物だ。


「ぐっ!」


魔物はうめき声を挙げて着地した。


よく見ると体の一部が黒く焦げ付いている。


おそらくメイド長にやられた傷だろう。


「ドラグノ!無事だったか?」


「ああ、なんとかな。・・・それでマティス・・・改めて聞くが何をしている?」


「説得を」


「は?そんなもの無理やり連れ帰って時間をかけてやればいいだろう?」


「事情があるのだ」


「なんだよ事情って」


マティスはドラグノと呼ばれる魔物に経緯を説明した。


「なるほどな」


「わかってくれたか」


「つまり俺が勇者の相手をすれば良いんだろ?その間に連れ出せ。それで解決する」


ドラグノの言葉に勇者が反応し剣に指をかけて口を開く。


「ワイバーンか。確かに骨が折れそうだが手負いだろう?」


「ふん。余裕を見せるのは今のうち。今のお前は足手まといがいるんだからな!」


言葉が終わる直後、ドラグノは動き出す。


大きな爪を持つ腕を素早く伸ばし僕をつかもうとする。


「ドラグノ!」


「このっ!」


その場にいる数名が素早く動き出す。


だが、僕は本能的に目をつぶって身を守る構えをした。


「・・・・」


だが次の瞬間、大きな音がした。


驚いて目を開けると、そこにはもっと驚きの光景が目に映る。


「なんのつもりだ?」


「・・・・」


魔物の一人がドラグノという魔物に、僕に背を向けるように立っていた。


その魔物は足がなく、胴体から下は蛇。


2本の腕を持ち、首から上は人間と同じように頭がある。


高さは2メートルを優に越す。


一度もみたことがない魔物だ。


だが、誰かはなんとなくわかっていた。


「ニナ・・・?」


ニナが先程の位置からいなくなっている。


「・・・これが私。気持ち悪いでしょ?」


「・・・・・」


なんにも言葉が出なかった。


その様子を見てニナが少し笑った。


「この人間を傷つけることは許さない」


「半魔の小娘・・・。邪魔するなら容赦はしないぞ」


「あなた達魔物に容赦されたことなんて今まで一度だってないわ」


「よし。いいぞ。ニナちゃん。これでまた膠着状態。どうする?」


「ぐっ・・・」


ドラグノは顔をしかめた。


全員が沈黙した。


次に誰かが動けば、すぐさま戦闘が始まり、どちらとも大きな被害が出るということを全員が理解していた。


ただ一人、僕を除いて。


僕は前に歩きだした。


ニナの脇を過ぎ、マティスやドラグノの前に立った。


そして大きく息を吸い、宣言した。


「僕は魔王になる!」

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