7話 ビターなチョコレート
僕は、何気に拳銃を確認した。
由良穂香は、バスの車内の灯りを付けた。
古いスクールバスの中は、
いたって普通の幼稚園のスクールバスの中だった。
「何か期待してました?」
わざわざ尾行を気にしながら、
来たのだから・・・
「うん・・・まあ」
「でもね・・・・」
穂香は座席のクッションを外した。
「ほら、ビターなチョコレートが入ってるの」
彼女はビターな板チョコが入った箱を取り出した。
「なぜ?」
「幼稚園のスクールバスだからかな~」
彼女はとぼけた。
「こっちにはね、保存用のお水もあるんだよ」
「なぜ?」
「幼稚園のスクールバスだからかな~」
「そんで、こっちには拳銃の弾丸とかもあるんだよ」
「!?」
「幼稚園のスクールバスだからかな~」
どんな幼稚園だよ!
彼女は、僕に言える事と言えない事を考えつつ話した。
「さっ、パシリくん、お腹空いたし、
一緒にビターなチョコレート食べよう」
君はさっきお弁当5個食べたばかりでしょうが。
彼女は、幼稚園児用の小さな座席に座って、
僕にも座るように促した。
僕は彼女の後ろの座席に座った。
「もう照れ屋さんなんだから、私たちはもう生死を伴にする仲でしょう」
彼女は、ビターな板チョコの銀色の紙を、
はがしながら言った。そして、
「夜が明けると、迎えが来るはずだから・・その時は・・」
と、振り向いて後ろの座席の僕に意味ありげに微笑みかけた。
夜は静かに去って行った。
そして、早朝のスクールバスに、その水牛たちはやってきた。
つづく 毎週木曜日更新です ((((( ( (ヽ(;^0^)/