8話 水牛党モッツァレラ
「あのねパシリくん、
君は私が誘拐犯グループに潜り込ませた、
私の家臣ってことにしてね」
由良穂香は、窓の外を見ながら言った。
「解った」
異論はなかったので僕は即答した。
でも、執事とかなら解るけど、家臣って、
いつの時代やねん・・・とか思っていると、
窓の外には、もっと時代錯誤な連中が現れた。
彼らはみんな、馬に跨り武士の甲冑を来て、
頭には水牛の様な角がある兜を付けていた。
顔は、仮面の様な面頬で覆われ、
見ることは出来なかった。
「あの兜は、大水牛脇立桃形兜よ。
君が私の家臣になったから教えるけど
彼らは水牛党モッツァレア。秘密結社よ。」
秘密結社!?モッツァレア!?チーズ?
穂香は、バスの外に出て、彼らを出迎え、
僕も穂香に続いた。
黒い甲冑の武者は言った。
「我々は、偶然通りすがった、君たちの事も事情も知らない者だ。
ところで、モッツァレラチーズがあるが食べるか?」
それに対して、穂香は、
「私たちも、あなた方の事を何も知らない。通りすがりの者です。
モッツァレラチーズ喜んで頂ます。」
と、なんか不自然な会話を交わした。
知らないって・・水牛党チーズとかじゃないの?
とりあえず僕らは、紙で包装された手作り感いっぱいの、
モッツァレラチーズを受け取った。
「どうぞ」
黒武者の勧めで、僕はチーズを口に運んだ。
思わずにやけてしまう程の美味しさだった。
「そう言えば、この近くで安全なワゴン車を発見したが、
見たいと思うか?」
「見たいと思います」
安全なワゴン車?
「では、ちょうど帰り道なので、そこまで送ろう」
「ありがとうございます」
「では・・・」
穂香は、その武者の後ろに乗った。
「君はこっちに」
赤い甲冑の女武者に言われて、女武者の後ろに乗る事になった。
「すいません、ちょっと忘れ物が」
僕はそう言うと、スクールバスの中に置いていた、
タルタスソースが大量に入った段ボールを、
取りに行った。
段ボールを抱えてきた僕に、赤い甲冑の女武者は、
取り出した赤い真田紐で段ボールを結び、
僕がちょうど背負えるようにしてくれた。
女武者の顔も面頬で伺えなかったが、
目は優しそうだった。
「紐になりたい・・・。」
僕の呟きに、女武者は面頬の奥で、
ほほ笑んだような気がした。
つづく




