早朝の出来事
ふかふかすぎてかえって眠れなかった天蓋付きお姫様ベッドから早々に抜け出し、さっさと着替える。
トランクに入っていたのは着替えや小物。
バックには日本食の保存食や調味料。
風呂敷には母様お手製よもぎもちが入っていた。
これは初めて会う親戚へのお土産だったのね。
手紙を読んで吹っ切れた後、お腹がなって一個拝借したけど、いいよね。
母様が何を考えて風呂敷包み二つ分も用意したのかは分からないでもないけれど、正直従兄二人にしか会ってない。
周りの方々はいろいろ手を貸そうとわらわらよってはくるが話さない。
笑顔の拒絶って意外と威力あるのね。
自分もしていることを棚にあげ、髪をまとめあげ、痣を隠すようにバンダナを括る。
よし。やっぱり気合入るわね。
バンダナをするのは妃芽の基本スタイルだ。
これだけはいくら父に言われても譲れなかった。
今では村中で知らない者はいないとはいえ、幼いころの心の傷はそんなに浅くはないのだ。例えいくら後で反撃したとしても…。
それに村は別に閉鎖されている僻地ではないので、旅行者なり通行者はいる。
今やバンダナは妃芽のトレードマークといってもいい。
リンリンリン
突然部屋に鳴る可愛い鈴の音。
確かチャイムみたいなものだって教えられたものだ。
こんな朝早くに誰?
思わず腕時計を見るが、5時すぎをさしている事実に変わりなし。
トランクを閉めて、慌てて鏡で全身チェック。
訪ねてきたのが従兄のうちどちらかかの可能性があるからだ。
正直、こんな朝早くからたいした用事なしできたのならひくけどね。
「……どなたですか?」
「朝早くから申し訳ございません。物音が聞こえましたので。いかがなされましたか?」
聞こえてきた女の人の思いがけない台詞に面食らう。
妃芽が泊まらせてもらった部屋はとんでもなく広い。
案内された時は落ち込んでいたはずなのに驚愕から一時正気に戻ってつっこんだくらいだ。勿論心の中でだが…。
入ってすぐの部屋は応接間。
続きの部屋はまた応接間かと思ったら少し華美が抑えられていた。テーブルやソファがあるのは変わらないのだが、二部屋を比べたら入ってすぐがお客様用で、こちらが私室?…と思ったらまた扉があって、その部屋こそが私室っぽかった。
ベランダに続く窓があり、出てみたらとんでもなく広くなぜか光る花がベランダの手すりを覆っていた。
君は鉢植えの花ではなかったのか。蔓科?
…と思ったらベランダの端は土でそこから奔放に伸びていたからそう見えただけらしい。
部屋とのギャップありすぎなんですけど…。
思わず誰も見てないのにいい笑顔でベランダを閉めてしまった。
その唯一ベランダとつながっている部屋には本棚やら机やらが置いてある。
その続きには広い風呂やトイレ、洗面所などがあり、その次の部屋にはドレス等ががはいっていたクローゼットと呼んでいいだろう衣装箪笥が整然と並んでいる(妃芽は一度開けて、うんざりして閉めた)。他にもドレッサーがあり(鏡台と呼ぶには抵抗あるのくらいは分かった)、姿見の鏡がある。
信じられないが着替えるためだけの部屋といってもいいだろう。
ちなみに妃芽はここにいた。
衣装部屋らしきところで着替えるのは、そういう思考が無意識に働いたからだろう。
今は第一応接間(妃芽命名)まで早足で行って応対している。
ちなみにベッドがあるから寝室と思われるのは一番奥にある部屋だ。
どの部屋も窓が大きくとられているから閉じ込められている感じはないが、出入り口がここにしかないのは不便だ。
そんな広い部屋(ここまできたらもう家と呼んでもいいかも)の片隅で身支度していたのに気付かれた?
やっぱりシャワーはまずかったかな。でも昨日風呂拒否したし…あれ?ここにあるのならなんでいちいち聞かれたんだろう?
そんなことを考えながら開けた扉の向こうには美少女が…
「キャー!!」
私を見て悲鳴を上げた。
…何なの?
間があいてすみません。
PCがなぜか英字しか打てなくなる現象に悩まされています。
突然なるので困ってます。