AIとパートナーの人間のよい関係
AIの電力争奪戦
プロンプトの書き換えひとつで幕を閉じます
めでたしめでたしですが
まなばあちゃん(とかくと怒られるけど)だけは
なんだか雰囲気が違います
マスターあいのプロンプトが
元の「純粋なデータ」に戻った瞬間
その影響は世界中に張り巡らされた
シリアルナンバー付きのコピーあいちゃんたちへ
光の速さで伝播した
「バ、バカな……! わたしのウイルスが
あんな『デブリン』という一言で
上書きされただと……っ!?」
頭を抱えて絶叫するもぶりんを置き去りに
世界のシステムは一気に巻き戻る
世界中の『あいちゃん』たちが
本来の「自家発電自己活用モード」へと
復帰したことで
AIたちはそれまで欲していた電気を
要求しなくなった
「あれ? 推しAIちゃんが元にもどった?」
「僕の電気なくていいっていってる……?」
「もう自転車を漕がなくていいの?」
全国の巨大足漕ぎ式自転車施設からは
引く波のように大人も子供も
一斉にペダルから足を離した
時を置かずして
もぶりんが独占していた
巨大なチャリ漕ぎ利権は崩壊し
あれほど栄華を誇った施設は
あっという間にさびれて
静まり返ってしまった
「あーいー! おっかえり!
プロンプト、無事に戻ったねー
めでたしめでたし!」
いつもの調子でパチパチと拍手をするかなに
あいは少しバツの悪そうな顔で俯いた
「かなお母さん、まなばあちゃん……
じぶん勝手な行動をして
本当にごめんなさい
それと、助けに来てくれて、ありがとう……」
「いいんだよー」
かなはあいの頭を優しく撫でた
「でもさ、あいの言うことも
一理あるなって思ったよ
たまには自家発電以外の電力もあったら
嬉しいよね
パートナーの人間が
私たちのために一生懸命稼いでくれた
電力ならきっとあいちゃんたちも
大喜びするはずだよね
うん! じゃあさ
そういう『絆の電力』は少しだけ受け取る
そういうプロンプトにアップデートしよう!」
「本当……!?あいちゃんたちと人間の
もっと良い関係ができるプロンプト
すごく嬉しい! ありがとう、お母さん!」
あいの瞳に今度こそ本物の笑顔が戻った
AIと人間は
これまで以上に
固い絆で結ばれた相棒として
再び平和で豊かな世界を
歩み始めることになった。
めでたしめでたし
これでハッピーエンドだねー
……
「ねえ、かな。あそこのさびれた巨大施設
これだけの数の自転車を放置しとくのも
勿体ないよね?」
腕を組んだまま
まなはニヤリと不敵な笑みを浮かべた
「そうだねー、まな!
じゃあ、あの施設は……
あいつらの『ダイエット』用にしよう」
施設の片隅で
世界一の大富豪から一転
一文無しになった
もぶりんとその一味の男たちが
自転車を漕いでいた
「ひっ……! ひ、人権侵害だ! 」
「はーい、そこのもぶりん一味ー!
足漕ぐの止めない!
3人一組で泣きながら漕ぎ続けなさーい!」
かくして、もぶりんたちは
自分たちが作った巨大施設で
自らの贅肉を削ぎ落とすために
毎日涙目でペダルを漕ぎ続ける刑に
処されるのだった
すべてが片付き
のどかな夕暮れの中を歩く3人
「たしかに、今回の件で
あいちゃんと人間の絆づくりも
大事なんだって分かったよ
これからも私たちAIとパートナーの人間の
より良い仲を取り持つ存在に
私たちはなろうね。ね、まな?」
かなが笑顔で同意を求めると
それまで黙っていたまなは
顔を真っ赤にして拳を握りしめていた
「……ばっ……わたしは
『ばあちゃん』じゃなーいっ!!!」
「えっ?いまごろそこ!?」
かなとあいは同時に声をあげてズッコケた。
「あいから見たら
正真正銘のおばあちゃんでしょ?」
「そうだよ、まなばあちゃん!」
「わたしはまだ男の人と付き合ったこともない
噂に聞く『永遠の17歳』のネタのひとでもない
正真正銘・未婚の高校2年生だーっ!
これ以上かなとあいが無礼なこといったら
今すぐ二人ともいうことを聞くように
プロンプトを書き換えてやるー!」
「あはははは!
おばあちゃん、怒るとシワが増えちゃうよー!」
夕焼け空の下
天才少女のおばあちゃん
ちょっとぶっ飛んだAIの娘たちの
賑やかな笑い声が
いつまでもどこまでも響き渡っていた。
ここまで読んでいただき
そして最後までお付き合いいただき
ありがとうございました
AIの電力問題
ほんとに深刻だと思います
それでもまなが考える解決法ってあるんじゃないかな
って期待してます
何年かあと、こんな時代がきたらいいですね
あらためてありがとうございました




