第1話:windless
丸1日と30分──
私が体育館倉庫に閉じ込められてから経過した時間だ。
不思議と空腹も眠気も感じない、ただ過ぎていくだけの1470分。
「はぁ…………」
こうなったのには訳がある。
大した訳じゃないけど。
体育の授業が終わって、使ったボールをまとめて戻す段になったとき、なんとなく皆やりたくなさそうな、面倒臭そうな雰囲気を醸し出していた。
じゃあ片付けくらい私がやるか……って、ただそれだけ。
私、風見心は、風が読める。
空気を読む、とは少しだけ違う。
物理的な風向きも読める。どっちの方角から、どれくらいの強さの風が吹いてくるか、予測できる。
ある程度、風の流れだってコントロールできる。
そんなの、人生で役に立つ場面はほとんどないけど。
「あぁ〜、心助かる〜!」
「マジありがとー!」
クラスメイトから掛けられた声に笑顔を返して、私はボールで満杯になったカートを倉庫に向けて押しはじめた……って訳。
ちなみに今日はほとんど無風。
体育館倉庫の中は、換気扇に吸い込まれていく空気の流れがあるだけ。
その流れをなんとなく視ながら、私はカートを押して倉庫に入った。
「あ、烟山先生だ!」
不意に黄色い声が、背後の体育館に反響した。
社会の烟山先生は、女子人気が高い。
髪がボサボサでやる気のなさそうなメガネの先生だけど、そのダウナーな感じがウケてるらしい。
ダウナー系でいえば私も同じ属性なんだけどな……
私は目立ちたくないし注目されるのも嫌だから、ひっそりと倉庫の床を踏み締める。
なんでいるのー? 女子の体操服見にきたのー? と、きゃあきゃあ女子たちの声を浴びる先生は、私とは似て非なるダウナーだ。
「……っと」
カートを所定の位置に戻して、体育館を振り返った瞬間。
風が、視えなくなった。
対流というのはどんな場所でも常に──いや、そんな物理の授業みたいなことじゃなくて。
風がなくなるなんて、空気が流れなくなるなんて、今までの人生で一度もありえなくて。
「風が…………?」
そこから私の周りの世界は、丸1日と30分、
凍りついたように、止まった。
はいどうも!池田屋ッ!りゅのすけでございますッ!
始まりました現代ファンタジー。
転生しない、令嬢出てこない、ざまあ展開もありませんが、どうぞお付き合いくださいませ。
もしよろしければ、応援していっていただけますと幸いです。
最後に。
ヒロインは貧乳です!!!




