あきらちゃん中学一年生、ママにジュニアアイドルになって自分で食費を稼げ、と言われて・・・
日向あきらの影 ~中学一年生の頃~
オレは日向あきら、もう12歳だ。中学校に入学した。
小学校を卒業して、少しだけ期待してた。新たなスタート、誰もオレの過去を知らない場所で。
でも、現実は甘くなかった。
中学校には給食がない。弁当持参か、パン買うか。オレはもちろん、弁当なんてない。
ママは朝から「自分でなんとかしなさい」って言うだけ。
ある日、ママが突然、オレを引っ張って家を出た。
「今日からあんた、自分の食費くらい自分で稼ぎなさい。中学なんだから、もう子供じゃないでしょ」
連れて行かれたのは、街の小さなビルに入ってる芸能事務所。看板に「ジュニアアイドル募集!」って書いてある。グラビアとか、水着撮影とかやる、ああいうところだ。
オレはびっくりして、固まった。
「え……オレが? アイドル?」
ママはオレを睨んで、低い声で言った。
「黙ってなさい。あんた男っぽいんだから、喋ったらすぐバレるわよ。全部私が話すから、笑ってるだけでいい」
事務所の中は、ピンクと白で可愛らしい感じ。待合室に座ってる女の子たちはみんな、長い髪でリボンつけて、スカート履いて、めっちゃ女の子らしい。オレは短髪で、ジャージみたいな服だから、浮きまくりだ。
面接室に呼ばれて、入るとおじさんの面接官が二人。ママはすぐに話し始めた。
「うちの娘、すごく可愛いと思いませんか? まだ12歳なんですよ~。小学校の時はモデルとかやってたんですけど、本格的にジュニアアイドルやりたいって言い出して」
オレは黙って座ってるだけ。笑顔作ろうとしたけど、引きつってると思う。
面接官がオレを見て、ちょっと眉をひそめた。
「うーん、ちょっとボーイッシュな感じですね。うちは可愛い系、グラビア寄りがメインなんですが……」
ママは慌てて、涙目を作った。
「実は……家庭の事情がありまして。夫がね、昔事件を起こして刑務所に入っちゃって……今は女手一つで育ててるんですけど、借金もあって本当に苦しくて。この子にもちゃんとしたご飯食べさせてあげたくて……」
ママはハンカチで目を押さえて、声を震わせた。
「この子、ほんとはすごく頑張り屋さんなんです。喋らせると男っぽいんですけど、それがまた個性じゃないですか? 新しいタイプのジュニアアイドルとして、絶対売れますよ! 水着とか着せたら、意外と可愛いんですって!」
面接官たちは顔を見合わせて、ちょっと同情したみたいな顔になった。
「事情はわかりました。お父さんの事件……ニュースで見たことあるかも。日向さんだっけ?」
ママは頷いて、さらに泣きマネ。
「お願いします……この子にチャンスをください。食費すらまともに稼げなくて……」
オレは黙って下を向いてた。心の中で叫んでた。
(オレ、こんなのやりたくねぇよ……水着とか、絶対嫌だ……)
でも、ママの目が怖かった。帰り道で殴られるのも嫌だった。
面接官の一人がため息ついて、言った。
「まあ、試験的に一度撮影してみましょうか。同情できる部分もあるし、ボーイッシュ路線も最近少し需要あるかも。採用は撮影見てから決めます」
ママは大喜びで頭を下げた。
「ありがとうございます! 絶対後悔させません!」
家に帰る道、ママは上機嫌でオレの肩を叩いた。
「よかったわね、あきら。これで食費くらい稼げるわよ。ちゃんとやんなさいよ」
オレは黙って頷いた。
胸がざわざわする。オレはアイドルなんてなりたくない。
男っぽいってバカにされてきたのに、今度はそれを売りにするのかよ。
でも、腹が減ってる。学校でパン買う金もない。ママのご飯なんて期待できない。
仕方ねぇ。やるしかねぇのか。
オレは日向あきら。12歳。中学に入ったばっかだけど、もう選択肢なんてない。
これが、オレの新しい戦いだ。




