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薄着のラスボス、拾いました~極東に聖邪は集う・外伝~  作者: まんぼうしおから


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第十四話・帰宅部の真髄

 この俺、岸辺是良ことヨッシーは帰宅部である。


 帰宅部とは、授業が終わったあと、家に帰ることを優先する活動のことを言う。

 ただ帰るのではなく、校内に残ってダラダラと友人達と会話したり、友人宅に行って遊んだり、下校途中に買い食いしたりゲーセンや本屋に寄ることもあるが、許されるのはそのくらいであり、一時の脇道に過ぎない。

 我が家に戻ることが帰宅部の基本。

 それこそが、最大にして唯一の目的なのだ。

 なお帰ったあとは個々人の好きにしたらいい。家に着いた時点で、部としての活動は終わっているので。


 そして今日も、こうして帰る。

 いつものように、いつもの道を。


 しかし──

 これまでとは、異なることがあった。


 目的だ。


 帰ることが目的ではなくなった。

 やらねばならないことがあるから、そのために我が家に帰る。最短距離で。

 何をしでかすかわからない居候の様子を見て、世話もしないといけないからだ。


 それは、帰宅部にあるまじきこと。

 本末転倒。


 学校と自宅の狭間に、一日のやるべきことが終わった心地よさを楽しみ、やんわりと噛みしめるのが帰宅部の醍醐味なのに、家でやることがあるから直帰など決してあってはならない。

 それは、例えるなら風景を一切見ない観光旅行みたいなものである。


 冒涜だ。


 帰宅部ってのはさ、帰宅が本質なんだ。

 帰宅したいがために自宅に戻るのであって、自宅に戻りたいがために帰宅するんじゃないんだ。

 勘違いしないでほしいのは、家に帰りたくないからとか、帰宅を楽しみにでもしないとやってられないとか、そういうわけじゃない。家族仲は悪くない。

 ただ、帰る道のりを尊いものだと思ってるんだ。

 それが帰宅部なんだ。


 でも、それもこれまで。

 今の俺には、帰宅とは家に帰るための手順でしかない。それは健全な帰宅じゃない。



「……というわけで、俺は帰宅部をやめるべきじゃないかなと思うんだよ、ゆららさん」


「いや、その理屈はおかしい」


 否定された。

 それもよりによって、帰宅部を辞めなきゃならない原因に。


「何の部活動もしてないことをそう呼称してるだけじゃないの」


「そう言われると耳が痛い」


「まあ、キミがそうしたいならそうしたらいい。それに何の意味があるのか私には一切さっぱりだけど、人間、誰しも変なこだわりのひとつくらいはあるってことなんだろうね。だから止めない。やめたらいいさ」


「いや、まだ正式にやめることにしたわけでは……」


「ただ自宅に帰るだけなのに正式も非公式もあったもんじゃないだろ」


「そう言われると耳が痛い」


「ならこの話はもうやめよう。このままだとキミの耳が弾け飛んでしまいかねないからね。それは私としても少し気が引ける」


 ということでこの件は保留となった。



「さて、愚にもつかない話はそのくらいにして」


「ひどい」


 愚て。

 愚にもつかないて。


「何か、怪しいことや、おかしなことがあったり聞いたりしたかい?」


「ないね。今日もない。ここ数日、ほんと何もない。コピペみたいな毎日だよ」


「嵐の前の──かな」


「縁起でもないこと言うなって。そういうこと言うとトラブルのフラグが立つぞ」


 夜勤してる看護士の『今夜は落ち着いてますね』みたいにな。


「それは困るね。私は追われてるかもしれない身だ。しかし……同時にワクワクもする。トラブルというのは、往々にして、面倒であると同時に面白いものでもあるからね」


「自分に関わりないってんなら面白いだろうけどさ、そうじゃないなら遠慮したいよ俺は。面白いことは好きだけど、面倒臭いのは大嫌いだもの」


「怠け者だねぇ……」


 ずっとこの部屋で一日中グデグデしてるお姉さんにだけは言われたくねえな。


「ところでさ、まあ、ないとは思うけど……この部屋で何かあった?」


「いや全く。平和だよここは。変化といえばヨッシーのお母さんがたまに来たりするくらいだね。他には誰も入り込んできたりしないし、窓の外から何者かが覗いてるなんてこともない。穏やかな時が流れてる」


「んー…………そっか。まだ断言するには早いけど、これがあと一ヶ月くらい続くようなら、もう危険性はないと見なしていいかもな」


「そうだね。まあ、私としては、警戒してようとしてなかろうと、ここにじっと潜んでいるライフスタイルを変える気はないけどさ」


 正直、潜まなくてもいい気もする。

 俺と出会うまであちこちぶらぶらしては、気が向いたらダンボール敷いて座り込み、同胞がこないか待ち望んでいたわけで。

 そのやり方でこれまで無事に世間から無視されてたんだから、これからも問題なく続けられるはずだ。


「何者だったんだろうな。あんたを始末しようとしてた連中」


「悪党って感じには見えなかったね。思想が強いというか、使命感で動いてるようだったな」


「あー、過激な正義の味方とか、手段を選ばない断罪人とか、それ系?」


 邪悪許すまじとか、人外殺すべしとか、そんな奴らか。


「どうなんだろう。ただ、あの話の通じなさからして、その可能性は高そうだよ」


「だとしたら、そんなうっとおしい連中で構成されてる集団がこの国にあるってことか……」


 そういうの漫画だけにしてほしかった。


「いつか俺たちの前に現れるのかな……」


「ないこともないとは思うけど、あったらあったで私がひねり潰すさ。こんな風に」


 縦に雑巾を絞るような手付きを、ゆららさんはしてみせた。

 ぎゅっ、ぎゅっと。


「怖いからやめてくんない? その動き」


「横に絞ったほうがよかったかい?」


「そーゆーことじゃない」


 やっぱりこの人は、何かにつけて物騒だ。

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