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013 才能のランク

 ヒーリングサルブの件はどうやら儂ではなさそうだ。

 儂と同じ力量を持つ若者とはなかなかではないか。

 前世では独りよがりで生きてきたから、今世では未来ある若者達にできる限りのことをしてあげたいと思っている。


 昨日会ったシャルーンも隣にいるスティラも才能溢れる若者じゃろうな。


「教会に着きましたよ!」


 石段作りの水都を巡り、儂とスティラは成人の式が行われる教会へとたどり着いた。

 この国で広く信仰されているフィフス教の教会であり、国をあげて信仰されている。

 中には神父にシスター……そして儂らと同い年の若者が大勢いた。


「それに大人も多いな。見物客か?」

「かなり順番待ちになりそうですね。……わたし達が一番最後かも」


 すでに式は始まっており、若者の長蛇の列となっていた。

 時間が余ってしまうな。


「スティラ、儂はあまり成人の式のことをよく知らん。教えてもらえるか」

「はい、いいですよ。まず」


 スティラは指を一本立てて、ぐるりとまわすようにして教会に視線を向ける。


「成人の式の役目は全員プローフカードを手にいれることです」

「なんじゃそれは」

「成人の身分証明書ですね。今はそれがなければ就労ができない仕組みになっています」


 そんなシステムが出来ておったのか。

 前世では気にせず旅をしておったからのぅ。

 プローフカードは魔法の力で個人情報が書き込まれるそうだ。犯罪歴なども書き込まれるそうなので注意とか。


「シスターが体の一部と同化してくださるので無くす心配もありませんよ」

「便利じゃのう」

「そしてもう一つ重要なのが神託です」


 そういえばさっき、通りでそんなことを言っておったな。


「おおおおおおおおおおっ!」


 教会内が騒がしいな。何かあったか?


「Aランクが出たぞ! 最高の才能だぁぁ」

「あいつ、すっげーっ!」

「いいなぁ。将来安泰だろうなぁ」


 万歳して喜んでいる小僧と親だろうか、嬉しそうに泣いている父親らしき若造がおる。


「Aランクは凄いですね。滅多に出ないランクですよ」

「才能と関係しているのか」

「ええ、フィフス教会が所有する神器に希望するジョブを登録するんです。そして手を触れると才能がA~Eまで判別できるらしいです」


 Aが最高評価ということか。

 何となく見えて来たな。生きてきた15年の成果として希望するジョブを登録し、才能が高ければそのまま目指し、悪ければ他の才能に切り替える。そんな所じゃろう。


「大半はCかDランクでごくたまにBとか出るらしいですね」

「Eランクは出ないのか」

「え……と」


 スティラは非常に困った顔をした。


「A以上に少ないんです。Eランクは絶望的に才能が無いという証明で侮蔑の対象にもなって……」

「才能が全てではないじゃろうに」

「そうなんですけど……。プローフカードにも証明として残るので神託が絶対って思われてますね。Eランクが出て親子共々心中したという話もあったくらいなので」


 才能か……。

 どうしても可視化できなければ分からないものもある。

 だが命を落とさねばならんものなのか。

 若者はその存在だけで尊重されねばならんのに。


「少し空いたみたいですね。中に入りましょう。え、きゃっ!」


 スティラが教会の中に入ろうとした時、中から小僧が出てきて、スティラとぶつかりそうになる。

 儂はスティラの腕を掴んで手元に寄せた。


「おい、気をつけろ!」


 猛ってるのは同い年の小僧のようだ。後ろには三人ほど腰巾着のようなものがいる。


「俺はBランクの才能を持つんだぞ! 才能のある俺に怪我なんてさせんな」

「そうだそうだ! Bランクの祝いにメシでもいきましょー!」

「でもこの子、結構可愛いですよ」


 ぶつかろうとしてきた小僧がスティラに目をつける。

 童顔な所はともかく、スティラの年離れした胸部に目を向け嫌らしい目線を向けた。


「おぅ、どうだ。Bランクの俺の女にならねぇか。Bランクって神託が出てから人が集まってきてよ。へへっ才能あるってたまんねぇぜ!」


 小僧は完全に有頂天になっていた。

 確かに才能はあるんじゃろう。だが才能は生かせるかどうかの話であって、現時点での能力ではない。

 それも分からんとはな。


「わたし、今から神託なので……」

「終わったらそこの飯屋で打ち上げだ。お望みなら抱いてやるからよぉ」

「うへぇ」


 小僧と腰巾着共は大笑いして人を跳ね飛ばしながら立ち去っていった。


「あいつ……大人しかったのになぁ」

「毎年Bランクとかになるとあーいうの増えるらしいよ」


 まったく嘆かわしいことだ。

 男に言い寄られたスティラはげっそりとしていた。


「スティラ、大丈夫か」

「は、はい。わたし、あーいうの苦手で……。あ、クロスさんありがとうございます。怪我しないように引っ張ってくださったんですよね」


「向こうが避ける気配なさそうじゃったからな」

「才能が全てじゃないのに……。クロスさんも神託を受けてAとかBになってもあんな横暴な人になっちゃ駄目ですからね!」


 ぷんぷんとスティラは可愛らしく手を振った。

 じゃが、儂はその才能というものについて考えていた。


 そう、儂は。


「安心せい。儂に才能などない」

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