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魔法少女かえで@agent 〜35歳サラリーマンが魔法少女やることになりました〜  作者: そらり@月宮悠人
第四章

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ユキがここにいる理由

 素振りの修行とこれからの事を話すと、月見里は仕事があると言って帰って行った。


「はぁ、まさか月見里さんを連れて来るなんてね」

「かえでと年も近いし、千夜ちゃんならピッタリだと思って」

「そんな気軽にお友だち紹介するみたいな……」

「それも半分あるわ」

「え?」

「千夜ちゃんは確かに強いしファンもいるけど、友だちはいないみたい。だから、かえでが千夜ちゃんの友だちになってあげて」

「100キロメートルエリア担当で師匠なのに?」

「そんなの関係ないない。いいじゃない、師匠と友だちでも。私とだって友だちみたい接してくれてるでしょ?」

「まあ、妹だからね」

「もし……かえでが嫌なら、()めてもいいよ。私が無理に付き合わせちゃってるんだから」


 一応自覚はあるんだな。


「いいよ、妹のままで」

「……本当に?」

「もう慣れたよ。それに、お姉ちゃんとは友だちみたいにじゃなくて、友だちだとも思ってるよ」

「……かえでちゃーん!!」

「もう、泣かないでよお姉ちゃん」

「ぐすっ、かえでちゃんが泣かしたのよぉ」

「はいはい」


 いつまで姉妹ごっこ続けるんだって思ったが、


()めてもいいよ』


あんな寂しそうな顔見せられたら、断れないだろ。師匠になってもらって月見里まで紹介してくれたし。


「よーし、私もがんばって師匠やるぞー!」

「あのね、気合い入れてもらったところ悪いんだけど」

「ん?」

「素振りで疲れちゃって……」


 *   *   *

 

「ユキー! パフェ作って! パフェ!」


 高位(ハイランク)専用カフェ【シンフォニー】に入るなり花織さんはユキさんに注文を入れる。

 素振りで俺がヘトヘトになってしまい、レッスンどころじゃなくなったため、シンフォニーで休憩することになった。


「はいはい。あら、かえでちゃんも一緒なのね。最近仲いいわねー」

「そりゃあ私の妹ですから」

「今日はレッスンだったんです」

「あー、そういうこと」

「無視するなー!」

「はい紅茶。席に着いて待ってて」

「はーい」

「かえでちゃんもパフェでいい?」

「はい。同じもので」

「オッケー」


 近くの席に着くと、「ユキさんて美人だよね」と呟く。


「なーにー? 私は美人じゃないのー?」

「お姉ちゃんはかわいい系だから」

「かえでちゃんに可愛いって言われちゃったー!」


 本当に幸せそうだな、この人。


「ユキさんて、どんな魔法少女なの?」

「うーん、それは本人から聞いた方がいいかな」

「なにかあるの?」

「そうねー、これも一応高位(ハイランク)の機密事項ではあるんだけど、かえでなら話してもいいかな。いつかは分かることだし」


 なんだか重めの話の予感だな……。


「実は魔法(M)少女(G)協会(A)本部の職員の中で、ユキと売店の小夜ちゃんは現役じゃないのよ」

「現役じゃない? それって、本部長みたいな?」

「ちょっと違うかな。本部長は現役を退いてて魔法の杖も返納してる。でも、ユキと小夜ちゃんは現役じゃないけど魔法の杖は持ってるの」

「どういうこと?」

「特務職員って言ってね、なんらかの理由によって現役として前線には立てないけど、魔法少女としての有用性が高くて職員に採用されてる人のこと」

「じゃあ、ユキさんも小夜さんも、特別な役割が与えられてこの本部に常駐してるってこと?」

「さすがかえで。そういうこと」


 そこへユキさんがパフェを2つ持ってきた。


「なーにがそういうことよ。機密事項をペラペラと喋っちゃダメでしょ」

「かえでなら大丈夫よ」

「まったく。はい、お待たせ」

「わーい!」


 子供みたいに喜ぶ花織さんを見て、ユキさんは呆れていた。


「あの、ユキさん」

「ん? なーに?」

「もしよければ、教えてもらえませんか? ユキさんがここにいる理由」

「……そうね、このアホが色々喋ったみたいだし、かえでちゃんには特別に教えてあげようかな」

「ありがとうございます」

「ていっても、大してドラマチックなものじゃないわ。……ちょっと待ってね」


 カウンターに戻ると、ティーセットを持ってくる。


「少し長くなるし、ティータイムにしましょう」

「え? お店はいいんですか?」

「いいのよ、どうせ他に誰もいないし。来る人は全員見知ってるから、来てから対応すればいいわ」

「あはは……なんだか自由ですね」

「ええ。今はここが気に入ってるわ」

「今は?」

「あー、そうね。じゃあ……少しだけ昔話しよっか。私の現役はね、三年前に終わったの」

「三年前は高位(ハイランク)だったんですよね?」

「そうよ。50キロメートルエリア担当だった。本当は100キロメートルエリア担当も狙ってたんだけどね、どっかの誰かさんを見て諦めたわ」


 と言って花織さんを見る。


「……なによ。人のことバケモノみたいに言って」

「実際バケモノよ100キロメートルエリア担当は。かえでちゃんなら分かるでしょ?」


 ユキさんに問われるが、花織さんが分かりやすく睨む。


「そう思う時もありますね。花織さんはカッコいいですけど」


 と答えると、花織さんは笑みを浮かべる。


「いい弟子ねー、師匠に忖度してあげるなんて」

「あはは……。それで、三年前になにがあったんですか?」

「呪いって、知ってる?」

「はい。――まさか」

「そうよ。私は呪いを受けたの」

「どんな呪いなんですか?」

「攻撃ができなくなったのよ」

「攻撃が? 他は大丈夫なんですか?」

「うん、そう。攻撃魔法だけが使えなくなるっていう呪いよ」


 呪いについては聞いたことがある。神楽・ソランデルと的場奏雨(かなめ)は一定距離離れると魔力が無くなる。


「どうして……その」

「呪いを受けたのか?」

「はい」

「私の力不足でね、魔物を倒しきれなかったの」

「ユキは、守りたかったんだよ」


 と、花織さんが割って入る。


「仲間をね」

「どういうことですか?」


 花織さんは「私が話す?」とユキさんに確認する。


「ううん、自分で話すわ」


 ユキさんは紅茶を一口飲むと、「美味しい」と呟く。


「あの時はツーマンセルで任務にあたっていたの。ラゼーゼンという魔物でね。クリスタルの板を使って多角射撃してくるの」

「それって、青いクリスタルみたいな?」

「そうそう。遭ったことあるんだ?」

「あーいえ、この前の特別昇格試験で対応しました」

「特試で? なにかの間違いじゃない?」

「えっ、どういうことですか?」

「だって、ラゼーゼンはA++の魔物よ。特試はA+の設定になってるはずよ」


 ラゼーゼンはA++だって? 確かに威圧感を感じたし、攻撃力もかなり強かった。でも、まさか……。


「当時の試験官は?」

「帰来という方です」

「あー、帰来かー」


 完全オフモードでパフェを堪能する花織さんは、「あの子って真面目だよねー」と困ったように言う。

 

「うん、まあ、そんな感じだったかな」 

「帰来は設定ミスなんてするような人じゃないんだけど……」

「ていっても人間だし、ミスもあるんじゃない?」

「もし設定ミスのせいで昇格できなかったとしたら、再試験を要求できるけど」

「でも、そしたら合格した人はどうなるんですか?」

「そのままよ。原則として各担当の定員は決まってるけど、例外的に増減することはあるの」

「そうなんですか」

「……まあ過ぎたことはしょうがないか。ごめん、話逸れちゃったね。ラゼーゼンは苦戦したけど、なんとか倒せた……と思ったの。そしたら最後の最後にレーザーを撃とうとしてて、それが仲間を狙ってるって分かったから……」


 目を閉じるユキさんに、「ユキ、大丈夫?」と花織さんは声を掛ける。


「うん、大丈夫。……その攻撃をさせまいと止めを刺すために構えたら、呪いを受けたの。最初は呪いだって分からなくて、私はもうパニックになって、なにもできなかった。

 ……そして、仲間の魔法少女はラゼーゼンに殺された。それが本当に最後の力だったみたいで、私は一人生き残ったの」

「そんなことが……」


 仲間を助けようとして呪いを受けて、混乱してるうちになす術なく目の前で仲間が……。


「私はそのあとすぐに引退することを決意した。それで本部長に会いに行ったら、ちょうど中原さんがいたの。その時に呪いを受けて引退せざるを得ないと話したら――」


『ならばシンフォニーで働くといい』

『シンフォニーで、ですか?』

『店員が辞めることになってな。後任はいないかと本部長に相談しに来たところだよ。元50キロメートルエリア担当なら他の高位(ハイランク)とも上手くやれるだろう』

『ですが、私は料理なんてできません』

些末(さまつ)な問題だ。これから練習すればいい。それに客は多くはない』

『……少し、考えさせてください』


「――それから、しばらくして私はここに来たの」

「そうだったんですか」

「ユキおかわりー!」

「お姉ちゃん太るよ?」

「ムカつくことに、灯は食べても太らない体質なのよ」

「えっ、うそ……」

「ふふーん」


 花織さんの勝ち誇った顔を見て、ユキさんは頭にゲンコツを落とした。



 To be continued→

最後まで読んで頂いてありがとうございます。

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