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異世界の非戦闘系傭兵  作者: ※未入力です
一章:魔法使いさんと布丁
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「で?」


「『で?』 って何がだ?」


 俺とエミリアはエミリアの薬屋に戻ってきていた。



 エミリアが買い漁ってきたお菓子の類を整理しながら聞いてくる。


「どうして魔法による爆発の様子を見にいっていたあなたが負傷者に物を投げて遊んでいたのかしら? ということよ」


「あー、それはともかくエミリア。お前あれが魔法によるものだって気づいてたのか、流石だな」


 都合の悪いことは誤魔化しつつ相手を褒めることで会話の矛先をずらす。

 そういえばエミリアは俺が様子を見に行く前にそんな全て分かり切っているかのような言葉を発していたな。


「ええまあ。エルフの耳はただ単に長いだけじゃなくて感度もいいのよ」


「感度? 敏感ってことか?」


「ええそうね。たまに灰栗君が漏らす私への悪口を全て聞き取ることができるくらいには高性能よ」


……聞かれていたようだ。


「それは便利だな。便利すぎて困ることとかないのか?」


「うーん、そうね。たまに灰栗君が『幼女を襲ってぺろぺろしたい』とかつぶやいているのはおいておくとして……」


「そんな発言してないぞ!?」


「あら別に恥ずかしがることはないわよ。人間誰しも思っていることは知らない間に口に出しているものだもの」


「いやいや思ってないからな!?」


「嫌々思ってない? 嫌々じゃなくて好き好んで思っていると? とうとう本音が出たわね灰栗君! これがあなたが心の奥底で無意識にロリを襲いたいと思っていることの証明よ!」


「な、なんだって!?」


 ま……まさか。いやそんなバカな。俺は正常に清潔に潔癖に健全で普通の性的趣向を持った常識ある行動を取れる男子高校生だったはずだ。


 それがこんな……犯罪行為を心の底のどこかで願うようになってしまっていたなんて!


「どうして……どうして手遅れになる前に私に相談してくれなかったの!」


 小芝居がかった動作で顔を手のひらで覆うエミリア。


──く、俺はそこまで危ない状態になってしまっていたのか!


「……いや、ちょっと待て。あれ? 男なんだからそういうことを無意識に考えちゃうのは別に問題ないんじゃないのか?」


 むしろ健全な気がしてきた。いや、健全すぎるくらいに健全だ。


「その考え自体があなたの不健全な変態的感情を加速させているのよ!」


「な……、そんなバカなッ!」


「ここで幾つか問題を出しましょう。これに正しく答えられたらあなたは正常よ」


「望むところだ! よしこい!」


 さすがみんなのエミリア先生!

そんな、元の世界の精神科でも取り扱っているかどうかわからない俺の心の悩みを解決できるほどの心理哲学的フローチャートを用意していてくれたなんて!


「では一つ目よ。あなたはエルフの女の子が可愛いと思いますか」


 答えは当然Yesだ。Yes以外にはありえない。


「もちろん、──Ye…」


「ちなみに詳細プロフィールは推定年齢400歳。体重200kgです」


「そんなものNoだ! 俺はデブ専じゃない!」


 危ない危ない……引っ掛け問題だったのか。


「二つ目。あなたは体格的に小さい女の子を可愛いと思いますか?」


 く……、これも迷うがおそらくYesで間違いはないだろう。みんな小さくて可愛いものは大好きなのだ。

 具体的に言うと幼稚園に通っている女の子が可愛すぎてしきりに通りすがりの近所のおじさんに満面の笑みで挨拶されたり、幼稚園の運動会に可愛いもの見たさでたまに保護者でもなんでもない近所のおじさんがカメラをもって写真を取りに来ていたりするイメージだ。


 ここで大事なのは保育する必要がなく志をもつ年齢でもないということだ。ただ幼稚であるだけでそれらは可憐性を増すのだ。異論は認めよう。


「もちろん、──Ye…」


「ちなみに詳細プロフィールは人族で推定年齢80歳。体重30kgです」


「それもう女の『子』って年齢じゃねえよ! デブ専じゃないとはいったが年寄り好きとは誰も言ってねぇぞ! それリアルロリババアじゃねぇか!」


 く……また引っ掛けだったのか。危ない危ない。危うく年齢差60以上限定で発情する変態だと言われるところだった。


「では、三つ目。胸が小さいことを恥ずかしがったり気にしたりしている子を抱きしめたいと思いますか?」


 ふ……。正常な男性には抱擁力と社会的信頼性が求められている。自分の身体的特徴を気にしている女の子がいたならばそっと慰め、心を開き攻略して依存させるまで!


……あえていおう。Yesであると!


「詳細プロフィールは推定年齢10代後半。体重40kg──」


 うん、普通にいい感じだ。前までのプロフィールのように色々と突っ込むべきところは特にない。


「──の男性です」


「ガチホ○じゃねえか! んなもんNoだ‼︎」


 引っ掛けってレベルじゃねえぞ!


「ではこれで最後よ。あなたは自分が変態であると思いますか?」


「な……?!」


 すごいのぶち込んできやがった。

 自分が変態かどうかだと?

 変態ではないと答えるのがおそらくベストなのだろうが先ほどまでのような質問のように何処かが引っ掛けという可能性もある。


 もう一度変態という存在とその定義について考え直す必要があるのかもしれない……。


「いきなり考え込んでどうしたの?」


 エミリアが何か言っている気もするが耳を貸してはダメだ……。


 そもそも正常な人はどんな人だろう。例えば俺のような年齢の健全な男子にとってそういうことに一切興味がないということのほうが問題であり変態的なのではないだろうか。


 少しそういうことに興味があるよくいる男子高校生を正常とした時、今この場で求められている人間性は一切そういうことに興味がない一周回って変態的な人間なのではないだろうか?


「エミリア……俺は答えが決まったぜ」


 キメ顔をつくった俺に対していつの間にかクッキーを口に含んでいるエミリアが再度最後の質問を投げかける。


「で? あなたは自分が変態だと思っているの?」


「ああ、俺は自分自身のことをどうしようもないくらいに健全なド変態だと思っている」


 エミリアが唖然とした顔で口にくわえようとしていたクッキーの欠片を床に落とした。


……どうだ。俺の完璧すぎる答えに見ほれてしまったか? 別にそのまま惚れてもいいんだぜ?


「自分で自覚してるなら誰がなんと言おうとあなたは『変態』ね。おめでとう、これであなたも立派な性犯罪者の仲間入りよ」


「……え?」





 エミリアと店で別れ、行くところのあても特筆してやることもなかった俺は自分の住処へと帰ることにした。


 まあ家に帰ったとしてもやることがないのに変わりはないのだが。


 個人的には漫画を読んだりゲームをしたりしたいのだがこの世界にはそんなものは存在しない。


 いうなれば極端に娯楽が少ないのだ。


 どこぞのチート主さんなら休みの日だとしても一日中魔法の修行に明け暮れたり聖剣を振り回したりいきなりダンジョンに突撃したりするのだろうが……。


 よくよく考えて見て欲しい。

 今まで特に取り柄もなくゴロゴロだらけるだけの引きこもりニートが転生したり転移したりしただけであんな真面目にガリガリ修行するようになるのだろうか。


 もちろん俺も日本でそういう小説を読み漁っていたときは異世界に行ってしまえば後はどうにでもなる楽勝の人生が待っていると信じていた。いや錯覚していた。


 現実はそこまで甘くないのだ。


 どれぐらい甘いかというと参考書をチラ見してテストで100点をとれると本気で思っているレベルで甘い。


 なんでも自分の思い通りにはならないのだ。


……よって俺は今日はゴロゴロする。


 人はそれぞれできることととできないことがある。

 俺には休日はだらけることしかできない。






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