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「リオン! いやああああああああぁ——」


 シオンの絶叫は、通行人の奇異の目をこれ以上ない程に集めた。

 小さな握り拳を胸に当て、リオンはくちびるを噛んで目を閉じた。

 外界から切り離された、絶海の孤島のような異質な空間に、通行人は目を白黒させる。


 ——おかしい。もう30秒は経っているように思えるのに、なんのアクションもない。レオンはそっとリオンに近付き、首枷のデジタルを確認した。


【00:19】


「と、止まってる。止まってるぞ」

「……え?」


 地べたにへたり込んでいたシオンも、リオンの側にやって来て、デジタル表示が動いていないのを確かめた。

「ホントだ……リオン! 良かった、良かった〜」

「お姉ちゃん……ホントは私、怖かったー!」


 抱き合って安堵する2人を尻目に、レオンは思案する。

 どうして? どうして止まったんだ?

 シオンの方を向いた時、レオンはそれに気付いた。


「シオン、後ろのそれは何だ?」

 そう言われて背後を振り返るシオン。

「これは、リモコン?」

「……! さっきぶつかった奴はヤツらの仲間か!」


 即座に電車の方を向く。ドアが閉まり、今まさに発車した所だった。


「クソッ、気付くのが遅かったか!」

 その時突然、けたたましい呼び鈴がホームに響いた。公衆電話からだった。

 引き寄せられるように、件の公衆電話にそっと近付くレオン。シオン、リオンに目配せし、何度目かの呼び鈴がなった時に受話器を取った。


「……もしもし」

『ミッションクリア、おめでとう。ビリヤードは好きなのかな?』

「……オヤジがよくやってたからな。俺もそれなりに好きだよ。

 何者なんだ、お前たち」

『我々の事など、どうでも良いではないか。

 それにまだゲームは終わっていないのだぞ』

「なんだと?」

『そのリモコンの半径20M圏内に入ってタイマーが停止するのは、5分だけだ。もう1分は経っているだろう。時間はないぞ』

「どうすれば解除出来る?」

『……その公衆電話の足下に、ジュラルミンケースが有るだろう』


 レオンが確認すると台の隙間に、電話帳の代わりに銀色のケースが入っていた。

「なんなんだこれは? まさか」

『爆弾なんか入っていない……ラストゲームの問題だよ。

 これをクリアすれば、センサーが解除されて首枷の取り外しが出来るようになる』

「……本当なんだな?」

『この期に及んで嘘はつかないよ。さあ残りは3分少々。頑張ってくれたまえ。

 そういえば、名前も聞いていなかったな。君ら一体何者なんだ? 教えていただいても構わないかな?』

「……中川レオン。探偵だ」

『……最後のゲームをクリアして、また会える事を楽しみにしているよ、名探偵』


 そこで電話は切られた。

「奴さん、何だって?……そのケース、何なの?」

「リオンの首枷を外せるようになる為の問題が入っているらしい」

 受話器を戻し、ジュラルミンケースを引き抜き床に置くレオンは、時限装置の一時停止時間が5分しかない事を告げる。

 それを聞いたシオンとリオンの顔が、また強張った。

「心配すんな、俺が絶対解いてやるから」

 その言葉に頷くリオンの瞳は、信頼に満ちている。


 床に置いたジュラルミンケースの蓋に手をかけ、レオンは2人を交互に見つめてからゆっくりとそれを開けていく。

 最後の推理ゲームの扉を、レオンは開く。それが罠であるとも知らずに。


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