1.始まりのバッドエンド
初投稿です。よろしくお願いします。
──ドスッ。
「未来が悪いんだよ?」
瀬田 未来の幼なじみである姫華の声だ。横から突き飛ばされたようだったが、それにしては、横腹に焼けるような感覚がある。
「熱っ......え.........?」
横腹を触った手が生暖かく真っ赤に濡れていた。
刺されたのだ。
「.........ヒメ、カ......?」
動悸が早くなる。 痛みが追いつく。 意識が手から離れていく。
「なん......で.........」
「......」
返事は無かった。薄れゆく意識と視界の中で、未来が最後に見たのは、感情が抜け落ちたような姫華の笑顔だった。
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──ガバッ!!
目が覚めた。
......目が覚めた?
(いやそんなわけはないっっ!!!)
そう、そんな訳は無いはずだった。なぜならあの時確かに未来は”死んでいた”のだから。
目覚めた場所も問題だった。病院の知らない白い天井ならまだわかる。しかし未来は、金の装飾がキラキラ輝くシャンデリアがぶら下がる病院の天井など本当に知らなかった。
ならばどこか?部屋の奥には、何人もの甲冑を纏った兵士がいた。椅子に座っている一人の男の横で、それはもう綺麗に整列している。
(本物の甲冑だよね…あれ……初めて見た)
「おぉ、目を覚ましたか!そち、名を申してくれないか?」
椅子に座っている男が口を開いた。
「えっ、あの、瀬田未来です。なっ、えこれどういう状況です?」
「貴様!無礼であるぞ!!!」
「へっ!?!?」
テンパってどもりまくった未来の言葉で機嫌を害したのか、甲冑を纏った兵士の一人が怒声をあげた。
「まあまて、そう怒るでない。」
椅子に座っている男が諭している。ここまで状況証拠が整えば未来とて椅子に座った男が誰で、周りにいるのが誰なのか、何となく見当がついてきた。その事実と自分の状況に身体が震える。
(僕…もしかすると、とんでもない無礼を働いたのかも……)
「未来といったな、すまない。貴公には今の状況がまだ呑み込めてはおらぬだろう、なので端的に説明しよう。」
「は、はい」
「ここは貴公がいた世界とは別の世界でな、そして今この国は、悪魔と呼ばれるもの達によって危機に瀕しているのだ。そのため王家に伝わる召喚の力によって、国王である我、ロドリック=ブリギッドが貴公を召喚したのだ。悪魔たちに対抗するためにな。」
一拍。
(え?どういうこと?異世界転移ってこと?いや死んでるから転生?召喚の魔法陣?あくま?たいこう?何を言ってるのかさっぱり分からない。てかやっぱり国王か。)
「な、なるほどです?」
頭の中が整理しきれず変な敬語を使ってしまったが、未来は大まかに自分の置かれている状況を理解できてきていた。
「では、未来様の鑑定に移らせていただきます。」
「おわっ!!」
背後に誰かいた。混乱してて気づかなかった。大声を出したせいでその人はちょっとビクッと肩を上げていた。
「未来よ、今から貴公の鑑定をしようと思う。」
「鑑定、とは?」
「うむ、鑑定とはな、そなたの持つスキルが何なのかを見定めるものなのだ。」
どうやらこの世界にはスキルと呼ばれる神に与えられる恩寵が存在しているようで、召喚された者は、強力なスキルを神から頂戴してこの世界に来るとのこと。そして鑑定とは先程後ろにいてびっくりした女性のスキルとのことだ。
「つまり今から僕にどんなすごいスキルがあるのかその”鑑定”で、調べてもらえるってことですね!」
「うむ、その通りだ」
「わかりました!お願いします!」
未来は正直ワクワクしていた。
凡庸な生まれ、凡庸な人生、凡庸な死(?)。そんな自分にも特別な何かがあったんだ!と。
「それでは、私の手を握ってください。」
「は、はい!」
女性の手を握る。
(この人、よく見たら綺麗だなぁ...)
となんとはなしに思っていたとき。突然女性の目がカッ!とかっ開かれた。
とても怖い。
数秒後に女性が再び目を閉じ、真剣な表情をする。直後、女性の表情がみるみるこわばり目が見開かれ、視線は何度か未来と国王を行ったり来たり。
女性の額からにじむ汗の量がすごい。
(なんだ…なんかやばいスキルなのかな……?)
「……国王様」
「どうしたのだ?」
「大変申し上げにくいのですが…」
「なんだ?未来はどんなスキルを持っていたのだ?まさか闇魔法などでは…」
「……スキルが、無いです。」
「ん?..........今なんと?」
「未来様は、スキルを所持しておりません。」
「「は?」」
一拍して、綺麗に重なった国王と未来の声が木霊した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「どういうことなのほんとに!!」
未来は途方に暮れていた。
ここは王城の一室、先程の件から2時間ほど過ぎていた。
「スキル無しってなんだよ!召喚者はスキルを賜うって話はどこにすっ飛んだのさぁ!?」
若干キャラぶれを起こしている事を理解しつつ、そんなこと気にしてられないとばかりに1人癇癪タイムの真っ最中だ。
「国王様にとりあえず今日は城の一室を使って休んでくれって言われたけど...これ僕そのうち追放とか処刑ルート待ったなしなんじゃ.........!?」
そう、先程の”鑑定”の結果はスキル無し。召喚者なのにスキル無しである。つまり今の未来はただの一般人、国王側から見たらただの飯泥棒なのだ。
「て言うか、さっきの国王様の焦り具合からこれってかなり深刻な事態なのかな......?」
さっきの国王様はそれはそれは焦っていた。あの後も鑑定してくれた女性に何度も何度も僕の再鑑定をさせ、その度に頭を抱えながら段々顔色が青くなって行くのを見て未来もまた気持ちがブルーになっていった。
「はぁ〜、落ち着こう。こういう時こそ冷静であれ。」
(そうだ、あれを見にいこう。)
灯りを取り、部屋の扉を開けて廊下に出た。廊下の灯りは消されてもう真っ暗になっていた。
広い廊下に未来の足音だけがコッコッと響いているのが心を次第に落ち着かせ、同時に自分は知らない場所にいるということを思い出させる。
(なんだかこのお城に僕しかいないみたい)
しばらく歩いて、テラスに繋がる扉を見つけ、開けてみる。
「わぁ......やっぱり凄いなぁ......」
未来は視界いっぱいに広がる満点の星空を眺めながら、感嘆の声を上げた。
未来は元の世界では、悩みや不安な気持ちに苛まれた時はいつも、決まって星空を見に行った。この世界の星も元の世界同様、美しく優しい光を放っている。
(ありきたりかもしれないけど、星空を見てると自分の存在の小ささに気づけるんだよね。まあ今回の件は割とその小さな存在の生命に関わりそうだけど......)
「さて、どうするか!」
今、この国にとって何のプラスにもならないであろう未来は、どうしたらこの状況から抜け出せるだろうか、生き残れるのだろうか。
(前の世界みたいな終わり方は、死んでもごめんだ。)
姫華の最後に見せた顔が頭の中で蘇る。
(あんな顔を見るのも......もう...ごめんだ...。)
「あの......誰かいるんですの?」
後ろから声が聞こえた。バッと振り返るとそこには──透き通るような長い銀髪にワインのように赤い瞳の女の子が1人、立っていた。
「あなたは...?」




