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第7話「True End1-1・危うい存在」

性格の悪い男の作品と思うと憎たらしいものだが、美しさの前でそんなものは霞んでしまう。


彫刻家としての腕を見せられ、ヴィタは盛り上がる気持ちをとめられない。


落ち込むどころか、正々堂々と向き合いたいと高ぶっていた。


誰も見たことのない美しい彼を彫ったのだからと、あたたかい想いを胸に抱いていた。




(私、ルークを愛してる)


ーーだからあなたの本当の美しさを見て。



「続いてはヴィタ……令嬢?」


司会進行をつとめる男が名前の記載された紙を見て目を丸くした。


顔をあげ、名簿とヴィタを見比べて青ざめる。


女が出品していると驚く司会の動揺は伝染し、観客たちも疑問の声をあげた。


「なんで女が……」


「なんの間違いだ」


「女が彫刻とはなんと末恐ろしい」


ざわつく会場にヴィタは深呼吸をし、すたすたと大股に歩いて前へと出る。


女だからと指をさされるのは自分が最後だと言わんばかりに、ヴィタは強気を前面に出した。


戸惑いが大きい中で司会は進行をとめるわけにはいかないと機転を利かせ、石像を覆う布を外すよう指示をした。



***



「タイトル『愛されし光』」


ひらりと布が落ちると同時に曇り空が開いて、光が差し込んだ。


太陽の輝きをまとって現れた石像に人々は言葉が出てこない。



それは世界が一変してしまったかのような衝撃だった。


自分たちがこれまで信じてきたものは何だったのかと疑うほどに……尊ぶべきものだった。


「これを女が創ったというのか!?」


「天の御使いだ。こんな……震える愛が存在したのか」


人が生み出す境地を超えていると人々は称賛の声をあげた。


周りのざわめきにヴィタの緊張が解け、ゆっくりと笑みを取り戻す。


あたたかさにじわりと胸が熱くなる。


ヴィタにとって至高の美しさを世の中に出すことが出来た。


ようやく願いが叶ったのだと、喜びを噛み締めて一筋の涙を流した。




想像上でしか存在しなかった天の使いが降臨する。


いや、それさえも超えた圧倒的な美に人々は浮き足立つような感覚を味わっていた。



「あ、ありえない……。だって、これは女が作ったもので……」


ただ一人、優勝候補となっていた男がわななき、じりじりと後ずさっていく。


ようやく手にした彫刻家としての道を歩いた先に断崖絶壁。


その積み上げたプライドの前に現れるのは日の光に輝くプラチナの髪をした女。


栄光を前に口角をあげるべきは自分だったと、男は盛り上がりの中で立ちすくむ。




ーー途端に目の前に光が降ってきて、人々の前に彫刻の原点となった御使いが現れた。



「ルーク?」


「ほら、言っただろう」


降り立ったルークが翼をはためかせ、風を巻き起こしてヴィタの頬に触れる。



「君にしか作れないって。僕を愛してくれたからこの彫刻が出来たんだ」



星の瞬き。


この生きる大地と同じで、太陽の光がなくては生きられない星の人。


灼熱の愛を持つその人は、一度堕ちた身でありながら愛を取り戻し、麗しき背に白い翼となった。



「12の翼……」


「もう古き習慣にとらわれなくていい。君の努力も目標も尊いもので、先駆者として願いを叶えたんだ」


見てごらん、とルークがささやくとヴィタの彫刻の頭上に12の星の冠が輝いていた。



それは天からの祝福であり、明けの明星を正しき愛の象徴として受け入れた証である。


光と影をみて、ヴィタは彫刻にこめた想いが具現化したと涙を流した。



「ごめんなさい……。私、あなたのこと……」


楽園から追放されし者と判断していた。


それでもそのあくどささえ愛おしくて、抱きしめたいと祈りを捧げた。


狂おしい瞳の奥にある本来の輝きを表現したい。


ヴィタにとって今後覆ることのない“美しさの完成形”であった。



「僕はどちらにでも転ぶ危うい存在だった。いや……むしろ長い時間、業火の中にいた」


ポロポロと涙をこぼすヴィタの目元を親指で撫でて、そっと額に唇を落とす。



「狂った先に僕を見つけてくれた。君の情熱が世界を変えるんだ」


あたりを見渡すと、人々が膝をついて天に手を伸ばしていた。


男も女も、皆が涙を流し感極まった様子で歓喜の声をあげた。


前年度優勝者の男は俯き、拳を震わせている。


そこに他の彫刻家仲間が集まってきて、男の肩を叩き、目を細めて彫刻を見つめていた。

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