二十七話 収束
「チュートリアル武器ってのはすげぇんだなァ!まあ、これは防具だが」
そう言って、彼は包丁を振りかぶった。
装備の効果か、身体能力は、レベル差があるにも関わらず俺と五分くらい。
ただ、俺が明確に勝っている部分もある。
リーチだ。
【延長】よって、斧は包丁を優に超える。
それを更に、伸ばして幅の太い刀の様に見えるまで伸ばした。
圧倒的なリーチ、これだけで大きなアドバンテージになる。
包丁を難なく躱して、こちらから攻撃を仕掛ける。
その瞬間、ほんの少しだけ【延長】で更に伸ばす。
よけきれたと、阿曽沼は考えたのだろう。
だが、その少しの差だけで、彼の胴を傷つける。
「くっ!?」
彼は一瞬同様したような顔を見せるが……
「く、くく、アハハ!どうやらお前の攻撃程度なら、この鎧で簡単に防げるようだぞ?」
「ちっ」
胴はきかない。
それは分かった。
だが、奴の身体の胴以外は覆われていない。
そこを狙えばいいだけだ。
そう思って踏み出したところで、足の裏に違和感を感じた。
いや、脚元と言った方が正確か。
踏み外したような感覚に襲われた俺は地面を蹴り損ねる。
「隙だらけなんだよォ!」
リーチがあったはずの阿曽沼との距離が一気に縮まり包丁が眼前に迫る。
それをギリギリで身体を捻り躱す。
いったん距離を取った所で、足元の違和感の正体が分かった。
足元が液状化している。
恐らくスキルだろう。
だが、未だ彼の勢いは止まらない。
スキルの連続発動により、俺を囲むように魔法を配置する。
恐らく火球だろう。
斧で斬り防ぐことは簡単だ。
だが、牽制としての効果は十二分に発揮する。
後方及び前方の火球を対処する俺に彼はそのまま包丁を振り上げる。
それを俺は右の斧で促して、左の斧で攻撃を入れる。
ギリギリで阿曽沼の左腕に一撃を入れる。
「クッソ!いってぇな!」
「どうやら、防具がないとこは攻撃が通るらしいな」
確定だ。
このまま責めれば勝てる。
双方の武器が火花を散らす。
だが、確実に俺の攻撃が通っていく。
奴が出来るのは足元を崩す程度の小細工だけ。
レベル的にそこまで多様なスキルを取っているとも考えられない。
このまま突っ込む。
力にものを言わせて俺は阿曽沼の懐にもぐりこむ。
そして、斧以外の攻撃によって隙を作る。
足で蹴りを入れるだけでそれは叶う。
「もう、終わりだ」
その言葉と共に、俺は斧を叩き込んだ。
12月16日。
協会で実施した資格試験において事件が発生した。
二次試験におけるダンジョン攻略にて、受験者同士による諍いが起る。
該当者は阿曽沼秀樹、河添正時両名。
事の発端は、阿曽沼秀樹による問題行動によるものだ。
阿曽沼秀樹は、振り分けられたBグループにおいて非協力的な行動の数々を起こす。
そして、しまいには、ダンジョン内でのゴブリンキング(河添正時仮称)との戦闘時、同行していた河添正時に傷害を与える。
その際、阿曽沼秀樹にBグループ担当卯西試験官が止めに入る。
阿曽沼秀樹はこれに応戦し、卯西試験官を重症に追い込む。
ゴブリンキング討伐後、河添正時と阿曽沼秀樹は衝突する。
その際、試験では禁止されていた持ち込み武器を河添正時は使用。
阿曽沼秀樹は、同じくチュートリアルカテゴリーの武器、及び武具を使用しまたも応戦。
死闘の結果、河添正時は勝利し、Bグループは阿曽沼秀樹を除くすべての者がダンジョン攻略に伴う崩壊を免れ脱出する。
河添正時の談によると阿曽沼秀樹の死亡は確認していないと言う。
阿曽沼秀樹のダンジョン消滅による自動放出により生き延びていることを考慮し、早急に捜索を開始するも未だ見つからず。
この情報は、Bグループ各位に取り調べたものに基づく。
なお、河添正時に対しての取り調べは、協会長自ら引きついたため、更なる情報が期待される。




