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「闘い」
戦争を知らない私が綴るのは
豊かなはずの時代に
落ちていたチョコの欠片を
宝物のように拾う子がいた事
飢えて暮れなずむ柿の実に
届くはずもない石を
投げ続けていた子がいた事
大陸から引き上げる混乱もなく
爆撃に逃げ惑う事もない時代に
たやすく子どもを見放す親と
親を見失う子がいるという事
怯えて身をすくませる子を殴るのは
敵兵でも上官でもなく
父であり母である事
戦争を知らない私が綴るのは
光が遮られた場所で
繰り返し踏みつけられる魂と
嘆きと怨嗟にかすむ灰色の街
戦うためではなく ただ
生きるためだけに
勇気を集めねばならない人々の
うしろ姿
戦争を知らない私が綴るのは
忘れられた骸たちが眠る大地に
残る 微かな 轍 そこに
芽吹く草の 強さ
戦争を知らない私が綴るのは
歴史に刻まれることのない
闘い




