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89話_サキュバスと大泣きお姉さんと傲慢男6

「エビルクラウンは、僕が前にやってたバンドの名前だ…」


邪帝は苦々しい顔をしながら後ろを振り返った。


「前にやってた…」


「あぁ。僕の昔のファンのしわざだな。ヘルが加入するのを快く思ってない奴がいる」


「にしたって、これはひどすぎるだろ」


「あぁ、放っておくわけにはいかねぇ。ライブにも現れかねないからな」


「邪帝さん、俺家戻って手掛かり探してみるわ。監視カメラに何か映ってるかもしれないし」


「僕の知り合いがこっちに向かって来ている。合流してから行こう」


「そしたら、ここから出るとするか。この場所は僕が認めた奴しかここには入れたくないからよ」


「わかった。そしたら上に上がろう」


僕と邪帝、ヘルの3人はマンホールの中を上り、地上へと上がろうとする。


そこで、一番先頭を上っていた僕は地上がなにか騒がしいことに気が付き、足を止める。


「あいたっ。おい、いきなり止まるなよ」


ヘルの頭が僕のお尻にぶつかる。


「何かがおかしい」


「おかしいって、なにがだよ」


「上手く言えないが、まるで待ち伏せされているような」


地上はもうすぐそこだったが、なにか嫌な空気を感じていた。上手くは言えないが、幾度となく危険な目に遭ってきた勘と言えばいいのだろうか。


「ハハッ、まさか。いいから上がろうぜ」


ヘルに促されてマンホールのふたを開ける。


すると、


チュンチュン!!チュチュン!!


立て続けに飛んできた弾丸がマンホールに跳ね返り音を立てる。


「なんだなんだ!!?」


ダダダダダダ!!!


マシンガンのようなもので撃たれた音が響き渡り僕は慌ててマンホールの蓋を閉める。


「おとなしく出てこい!!ヘルプリンス!!お前がそこにいることはわかっている!!」


スピーカーから聞こえてくる怒鳴り声。いかついおっさんの声だ。


「随分と荒っぽい連中だな。ったく、しょうがねぇな」


上がろうとするヘルプリンスを押さえる。


「なんだよ、どいてくれ」


「さっきの見ただろ?蜂の巣にされるぞ!」


「このまま隠れてるわけにもいかねぇだろ!!」


ダダダダダ!!!


響き渡る連射音。


「このままじゃ危険だ。僕に策がある」


僕はこの場を切り抜ける方法をひとつ考えついていた。


「撃つな!!今から出る!!」


僕の叫び声と同時に、激しい銃声がピタリと止む。


「おい!」


「大丈夫だ」


僕は蓋を開けて地上に上がる。目の前には、屈強な天使が3人ほど銃を構えて立っていた。


「邪帝じゃねぇか!!ヘルプリンスはどこだ?奴を出せ!!」


案の定、天使たちは僕のことを邪帝と勘違いしているようだ。


「彼になんの用なんだ?」


「決まってるだろ!!ライブに出れない体にしてやるのよ!!」


「お前達だってファンなんだろう?」


「俺達はマッドマックスのギターが聴きてぇんだ!!途中からしゃしゃり出てきたガキに興味はねぇ!!」


ダダダダダ!!!


威嚇いかくとばかりに近くの地面に乱射する天使。天界の天使は名前のわりにいかつい奴が多いな。


随分と怒り心頭のようだ。しかし、このままだと彼らを無傷で返すのは難しくなる。どうにかして彼らの怒りの矛先を変えなければ。


「ヘルプリンスの家に爆発物を届けたのはお前達か?」


「あん?そんな物は知らねえな!!俺達はヘルの野郎がここにいることを知らされて来ただけよ!!」


「(知らない。犯人は別にいるということか。…となると、この3人はエビルクラウンではない)」


「おら!!いい加減奴を出せ!!」


ダダダダダ!!!


「そういうわけには行かない。ライブに向けて練習があるからな」


「知ったことか!!おい、邪帝を人質に連れて行け。奴をおびき出す」


1人の天使が2人に命じて僕を捕らえさせる。

犯人を見つける必要もあるし、ここはおとなしく捕まっておくか。


「(シオリ!!)」


「(待て!!今出て行ったら殺されるぞ)」


「(でもシオリが!!)」


「(タイミングを見て助けるしかない。だが今は無理だ)」


マンホールの下で上の様子を伺う2人。車が走り去る音が響き、外に出てみるとそこにはもう誰もいなかった。


「チクショウ!!シオリが連れて行かれた」


「あいつ、僕の代わりに人質になったんだな…なんとかして助けねぇと」


そこに車に乗ったソフィアが現れる。運転は爺がしていた。


「シオリ!!」


車から降り、邪帝をシオリと勘違いしてかけ寄るソフィア。


「おっと、僕はこんな美人知らねぇな。あいつの知り合いか?」

 

「あなたは……もしかして、邪帝さん?」


「あぁ、もしかしなくてもな」


「シオリはどこにいますか?」


「僕達を襲った奴らに連れて行かれた」


「そんな!!?」


ソフィアの左目が激しく宝石のように光る。


「奴らはヘルのことを狙っていた。どうやらライブに出させたくないらしい」


「このままだと奴らがどんな行動に出るかわからねぇ!!早く助けねぇと!!」


「シオリの場所は携帯があるから追えます。行きましょう」


「あぁ!!」


3人は爺が運転する車に乗り込む。


「ここから北西に進んでください」


「かしこまりました」


ソフィアが見せた地図に添って車は移動を開始した。



◆◆◆◆◆



場所は変わって、喫茶らーぷらす。

上機嫌で仕事をこなすミュウ。シオリとライブに行くのが決まってからずっとこんな調子だった。機嫌の良いミュウ見たさに常連も通い詰める者が多く、連日満員になるほど。リーガロウも時間が許す限り喫茶店を訪れていた。


「ミュウちゃん、今日も機嫌がいいね」


「えぇ、楽しみを待つというのもそれはそれで楽しいわね」


ミュウは客の前にコーヒーを置きながら優しく微笑む。


妖艶さと綺麗さと可愛さを詰め込んだ喫茶店の妖精として(天使でサキュバスだが)、最近では店の取材を受けるほど人気は増すばかりだった。常連からはこれ以上ライバルが増えて困ると悲鳴が上がっていたが。


忙しさのピークを少し過ぎ、携帯を取り出す。待ち受けのシオリとツーショットの写真を眺める。


嫌がるシオリを無理矢理羽交い締めにして撮ってもらったものだった。その時に、シオリを押さえつけることに少し楽しみを覚えてしまった自分がいた。


そんなことを思い返しながら画像を見ていると、メールが入ってきた。


宛先はソフィアから。

シオリがさらわれたという内容と、集合場所が記されていた。


慌ててエプロンを取り、自分の部屋に戻る。


「源十郎、少し出るわ」


「あいよ、行ってらっしゃいミュウちゃん!!」


察しの良い常連たち。


「行ってらっしゃーい!!」


マスターと常連の皆に見送られて、ミュウは店を飛び出した。



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