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67話_サキュバスが示した残酷な選択

痛みに目が覚めていく。腹部がズキズキと痛い。

俺は、今どこにいるんだ…。思い出せ、何があったのかを……。


必死に思考を巡らせる。意識は朦朧もうろうとしたまま辺りを見渡す。


そうだ、リアとの会話の最中、殴られて意識を失ったんだ。

やけに明るい場所だな。それに、部屋全体が温かい。


自分の身体を見てみると裸の状態だと言うことがわかってくる。

動こうとするが、腕は後ろ手で縛られ、椅子に座らされていた。


捕まっているのか…にしても、これはいわゆる風呂場ではないのか。

横には大浴場のような広い湯船がある。

俺の腕を縛っている紐は頑丈で、強く引っ張ったところでほどけそうにない。


「あ、ルキ起きた?」


そこに、リアが現れる。俺と同じく一糸まとわぬ姿で。


「リ、リア…その格好は…」


目のやり場に困り、俺は慌てて目を伏せる。


「何、照れてるの?そこも変わってないんだね」


リアは近くまで寄ってくると俺の膝の上に乗り、頬を撫でる。

膝の上に、リアのお尻の感触が当たる。当たり前だが、スゥと同じ感触だ。


「言ったでしょ?私と落ち着いて話をしたいって。その場所を用意してあげたんだよ」


「…わざわざ裸でなくたっていいだろう」


「裸の付き合いをした方が仲良くなれるって言うでしょ。それに、」


リアは俺の首筋に軽くキスをする。


「ルキと2人きりで話したかったのは私もそうなんだ。お邪魔虫がいると面倒なんだもん」


リアは俺を上目遣いで見つめてくる。

スゥと同じ顔をしているためか、スゥと暮らした記憶がフラッシュバックする。


目の前にいるのはスゥではない、リアだ。

頭ではわかっていても、心がざわついてくる。


「リア、ルキのことをずっと待っていたのか?」


「そうだよ、ずーっと待ってた、ずーっと。」


大きく両手を広げてどのくらい時間がかかったかを説明するリア。


「待ちすぎて、待ちくたびれちゃった。でも、起きて色々見てみたよ、あの子の心の中」


リアは俺の顔の真正面に来ると、唇と唇を重ねる。動けない俺は拒絶することもできない。

合わせていた唇を離し、自分の唇をペロッと舐める。


「こんなこともしてたんだね。私の時にはしてくれなかったのに」


恨めしそうにこちらを見てくるリア。


「ねぇ、私にも同じことして。見た目は変わらないんだから」


縛られている俺に抱きついてくるリア。大きなおっぱいが胸に当たり形が崩れる。


「同じって…それはスゥだったから…」


「私だってスゥだよ。スゥと私は一心同体なんだから」


「でも、リアはずっと眠っていたんだろ?」


「あの子の記憶なら全部見たわ。だから、今までの話は知ってる。あの子、随分ルキのこと好きみたいね。いやらしいのもいっぱいあったけど?」


そう言って、リアは俺の下唇を優しく噛んでくる。


「元々は私とスゥの2人だったことは聞いた?あの子とは違うスゥ…ややこしいわね、私とスーティリアは2つの人格があったの。1番目がスーティリア。2番目が私。3番目があの子。スーティリアはルキを転生するために消滅したの」


「スーティリアって?」


「一番最初の人格の本当の名前よ。スーティリアだからスゥ。私はその名前の最後をとって付けられたからリア。同じスーティリアじゃわかりづらいでしょ?今の子もスゥって呼ばれてるみたいだけど、私がスゥって認める子はあの最初の子だけ」


ルキは俺を愛おしむように、髪の毛をいじり、頭を撫でる。


「ルキが転生できたのは、スーティリアと私が存在を賭けたから。最後の子はその後に発現したに過ぎない。いいところどりよ」


「そんな…」


スゥより前に存在した子がいるのか?

前にチャミュから話を聞いた時にはスゥが転生に関わっていたとは聞いていない。それぞれの話に、互いが知らないことがありそうだ。


「だから、私の方がルキに会いたかったの!これでわかったでしょ?」


「けど、俺はルキじゃない……」


「ルキなの!……もう私からルキを奪わないで」


リアの目に涙が溜まっている。殺気はなく、寂しさを訴える女の子そのものだ。


「でも……俺は…」


俺は、俺はスゥに会いたい…。

だが、今はリアと和解しないと。


「ルキって人のこと、もっと教えてくれないか。どんなことがあったのかを教えてほしい」


リアの表情がパアッと明るくなる。


「話す!話すよ!お風呂入りながら聞いてっ」


リアが俺の紐を外す。久しぶりに自由になれる。


「いいのか?拘束を解いてしまって」


「縛ったままなら入りづらいでしょ?はい、連れてって」


俺が逃げることなど微塵も感じさせないように、俺にお姫様だっこさせるよう乗っかってくるリア。


「裸をそんな簡単に、見せるもんじゃないぞ…」


「な~に、恥ずかしがってるの?もうあんなに沢山見てるじゃん」


「なっ…!?」


「言ったでしょ。私は最後の子の記憶を全部見たって。だから、今更恥ずかしがることなんてないんだから」


リアがハハッと笑った。



俺は風呂に入りながら、リアの話を聞いた。


リアは本当に嬉しそうにルキのことを喋った。まるで、長年会っていなかった友人に話しかけるかのように。


訓練中に落ちてきたチャミュを助けたスーティリア。

スーティリア1人で暮らしていたため、チャミュが時折遊びに来てくれることによって、スーティリアは徐々に元気になっていったらしい。

それまでのリアは、時折発現するくらいだったが、スーティリアが元気になったことで、サキュバスの能力が強くなってきた。そこで、チャミュに魅了をかけて若い男性を呼び寄せることにした。それがチャミュの幼馴染であるルキだったのだ。


だが、その時初めてルキと出会ったのはスーティリアだった。ルキはスーティリアと仲良くなり、ルキもチャミュと一緒にスーティリアに会いにくるようになった。リアが誤算だったのは、精気を奪おうと無理矢理入れ替わったが、ルキには魅了が全く効かなかったことだ。全然興味を持ってくれないのが悔しくて、ルキを追いかけているうちに自分のことが一番好きになってしまったらしい。


「それでね!!ルキったら数ヶ月経ってようやく手を繋いでくれたんだよっ。ずっとアプローチしてたのにさ、ひどいと思わない?」


「はは…」


リアは湯船に浸かっている俺の側まで寄ってくる。肩が触れ合う。


「こんな感じ、懐かしいな…。ルキが転生したら、次はもう離さないって決めたんだ。そのために待ってたんだから」


「リア…本当に好きだったんだな…ルキのこと」


「何他人事みたいに言ってるの。あなたのことだよ」


リアはニヤッと笑い、俺の顔を上目遣いで見る。


「私に従属することを誓えばあの子に会わせてあげる。それならどう?」


「それは…」


「どちらにしろ、もう私が主導権を握ったから、あの子は私が交代してあげないと戻らないよ」


リアの言葉が心に突き刺さる。こんなにあっけなく主導権を握られるとは。

それは俺の考えが甘い証拠だ。


「考えるのに、少し時間をくれないか…」


「……うーん」


リアは腕を組んで考える。


「本当はすぐにでも答えを出してほしいんだけど…言いよ、待ってあげる。そのかわり…」


リアは風呂から立ち上がる。

すると、背中からは漆黒の翼が生え、頭には長い2本の角が生えてくる。

それは今までに見たことのない、悪魔と呼ぶに相応しい姿だった。


リアが両手を水平に広げると

湯が真っ二つに割れ、凄まじい衝撃が部屋中を駆け抜けた。


紫色のオーラが外に向かって飛んでいったように俺には見えた。


「くっ…」


「今、この街全部に私の魅了をかけた。これで全員私の支配下よ。変な気を起こさないでね、反抗するそぶりを見せたらルキの目の前で大事な人の生気を奪ってあげる」


リアは満面の笑みを浮かべる。

それはまさに悪魔のような冷たさと好奇心に満ちた笑みだった。


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