38.ペットは愛玩動物です
よろしくお願いします。
「ダグラス、誤解なんだ」
「大丈夫だ、みなまでいうな。わかってるから。本当に良かったな、合意がとれて」
何もわかっていないダグラスが大きく頷いた。
「だからな、違うんだって」
「俺は口の固い男だ、信用しろよ!」
「だから、信用するしないの以前の問題なんだって」
呆れつつ弁解してもダグラスはニヤニヤと笑うばかりだ。
とりあえずシャワーを浴びて頭をスッキリさせ、朝ごはんを食べた後でギルド長室まで来て、先に仕事を始めていたダグラスに経緯を何度も説明したのだが、全く聞いてくれない。
お互いの席に付きながら、言葉の応酬を繰り広げていたが、俺は諦めた。
「ダグラス、仕事するぞ。昨日の件の報告はあるか?」
「し、し、しっ市長、マヤちゃんと夫婦になったって本当ですか?!」
部屋に飛び込んで来たアリッサの言葉に俺は目を剥く。
市長館で仕事をしているはずの彼女が冒険者ギルドに顔をだすのも珍しいが、いつも冷静沈着を絵に描いたようなアリッサが取り乱している姿はさらに珍しい。
だが、内容が内容だ。
「なんだ、もうそんなところまで話が進んでるのか」
「そんなわけあるか」
口笛を吹いて軽くダグラスが囃すのを、全力で否定する。
「クロゥ、ヤり逃げはよくないぞ。いい子じゃないか。もっと大事にしろよ」
「ヤりっ…市長、今の話は本当ですか?!」
「誤解だ! 俺は狼の姿で添い寝を頼んだだけだ。そもそも夫婦になったって話はどこから出たんだ?」
「今朝、マヤちゃんが言ってたんですよ」
「何だってそんなことを」
ペット枠からの、恋人をすっ飛ばした妻枠になるとは思うまい。しかもなにもしていないのに、だ。
ここ、重要だと思うんだけど。
マヤにも何かの誤解を与えているようだ。
部外者ばかり否定して回っても当事者を正さなければ何時までも悪循環だ。
「仕事は一旦、中止だ」
俺はサーチでマヤを探すとさっさと転移した。
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マヤは市長室にいて、掃除をしていたようだった。
雑巾を持って、せっせと机を拭いている。
掃除はクリーンという生活魔法でほとんど片付くが、人狼は月魔法以外の魔法が使えないので物理的に行うしかないのだろう。
突然、現れた俺に気づくと満面の笑顔で出迎えてくれた。
ちなみにサイズは元に戻している。
あんな姿でウロウロされたら、男どもは仕事にならない。
ある意味、公害だ。
「クロ、どうしたの?」
「マヤ、確認したいんだが。人狼ってどうやって夫婦になるんだ?」
「一緒に寝たら、だよね? マヤ、何か違う?」
なるほど。銀の巫女として奉られていたのだから、知識が乏しいのだろう。
一緒に寝るの意味が、単純に寝るだけだと思っているようだ。
「俺とマヤの関係は、飼い主とペットに近い」
「ペットって何? マヤ、ペット?」
「ペットは愛玩動物ってことだ。可愛いってことだよ」
「ふうん? なら、マヤはクロのペットでいい」
納得したようで何よりだ。
これで俺のモフモフ生活の始まりだ。
俺はマヤの髪をわしゃわしゃ撫でながら、明るい未来にほくそ笑む。
『クロゥ、お楽しみのところ悪いが、人狼族から銀の巫女を返して欲しいと要望がきているそうだ。デミトリアスが指示がほしいと待機している。どうするか、マヤちゃんに聞いてくれ』
ダグラスからの通信に、俺は了解と答えて思わず眉根を寄せた。
せっかくペット契約したのに、いきなり手放す話が来てしまった。
「マヤ、人狼族から戻ってきてほしいと連絡がきてるそうだが、どうする?」
マヤはうっとりと目を細めて撫でられていたが、がばっと顔を上げると首を大きく横に振る。
「やだ。マヤは戻らない!」
しっかりと俺の服を握りしめて叫ぶマヤをもう一度優しく撫でる。
「落ち着け、マヤ。お前の望みを叶えてやる。ほら、どうしたい?」
「マヤは、ずっとクロと一緒がいい」
「よし、わかった」
歯向かうようなら殲滅してもいいかもな。
所詮、狼の群れだ。
お読みいただきありがとうございました。




