24.チュゲン伯爵とウェルシー侯爵
よろしくお願いします。
サーチの探知魔法で探せるのは指定された物体だ。固有番号がわかれば絞れるが、ロングソードや指輪という対象が絞りづらいものは、無数に反応してしまう。
ダンジョンなどで魔物の探索をする場合には、種族名だけで探知できるのでありがたいが。
では、人物の場合はどうかというと、人物の名前がわかれば位置を特定することは可能だ。また髪色や性別、職業でも検索できる。
そのため、俺は公園でサーチ魔法を展開する。
頭にサジェストのフルネームを思い描き、魔法を唱える。
だが、反応はない。
基本的には現在位置から市内ほどしか検索ができないからだろうか。
「市内にはいないな。もしくは異空間に閉じ込められているか、魔法結界の中かもしれない」
探知魔法は、探究者であれば得られる魔法だ。
強弱はあれど、簡単な魔法の部類に入る。消費魔力も10ほどだ。
よって対策を立てようと思えば、簡単にできる。
「だが、エサが動いてくれたようだな」
俺はもう一度サーチをかけた。
今度はバグロード市冒険者ギルド長だ。
反応の移動速度から馬車に乗っているようだ。
レミアルがかけた魔法が効いているのか、行動が速かった。彼女は舞踏家で、踊りや舞いで相手に魔法をかけることができる。基本的には支援魔法なので、デバフも可能だ。アベレスには焦るように仕向けた。
しばらく待つと、反応が止まった。
マップと重ねると、市内の中央の東側、貴族や金持ちの住居区だ。
俺は探究者の耳を保護する魔法を解除する。
公園で遊んでいる子供の声、店の呼び込み、主婦の井戸端会議、男たちの怒号。
声・声・声の中から方向を絞って、できるだけハゲの声を拾えるように注意する。
「チュゲン伯爵とウェルシー侯爵?」
ハゲが居所を訪ねている名前を聞いて、俺は思わずつぶやく。
それが限界だ。
すぐに探究者の耳に、防音魔法を施す。
頭が割れるように痛む。声がいつものささやきに変わる。
心臓がどくどくと激しく血液を送り出す。
自分のスキルが強大すぎて殺されそうになるだなんて、シャレにならない。
「ウェルシー侯爵は黒い噂の聞く人物だな、詳細はアリッサちゃんのほうが詳しいだろうが」
ダグラスが考え込みながら口を開く。
ギルド長補佐の彼には、貴族の情報はあまり入ってこない。
依頼があれば別だが、その名前に心当たりはなかった。
どちらかといえばそちらのつながりがあるのは、アリッサだ。
市長付き事務補佐官として、国内貴族の情報を集約している。有能で有用な彼女だ。
だが、サジェストの安全が確認できない以上、時間をかけるのは危険だ。
ただでさえ、サジェストからの連絡を無視して出遅れているのだから。
「直接聞いたほうが早い」
「そりゃあ、そうだ」
「クロゥくん、まさか―――」
俺の意図を察したダグラスが軽快に笑う。反対に真っ青になったのはレミアルだ。
だが、俺は構わずに魔法を唱えた。
『トランスフェレンス』
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