16.大好き飲み会!
毎度お越しいただき、ありがとうございます。
俺が跳んだ先は、冒険者ギルドの受付窓口の前だった。
朝の1番ということもあり、討伐依頼やクエストを受けようと掲示板の前には人だかりができている。昔はフェーレンの冒険者ギルドもランクSの冒険者ばかりだったが、新人教育を始めて、講習会やサポート制度を万端にしたおかげで、ランクA~Eまでまんべんなく登録がある。割合は圧倒的にランクEや冒険者見習いが多いのが現状だ。
「もう、ギルマス! 突然、現れるのはやめてって言ってるでしょ? ダグラスさんも一緒になっていないで止めてよ」
受付のカウンター越しに青い瞳を吊り上げぷりぷりと怒っているのはジェニファーだ。元ランクAの冒険者だったが、今では受付嬢を完璧にこなしている。金茶色の髪はショートカットで、小柄ながらスタイルは抜群にいい。出るところは出て、引っ込んでいるところは引っ込んでいる。
武闘家レベルがすごい数字になっているので、それを知っている男どもは近寄らないが。
初めて彼女に会ったやつらは、たいてい口説いているくらいに愛嬌があって可愛らしい。
「悪かった、緊急だ。レミアルはいるだろう?」
「レミアルなら、さっき新人の団体が来たから研修所のほうへ案内に行ったよ」
「なんだ、研修所のほうか」
転移魔法の欠点は、空間を跳ぶため場所の指定はできるが、人の指定ができないところだ。
俺の場合、最初に探究者が使える魔法、探知魔法をかけて人物の居場所を特定してから空間魔法を使うのだが、レミアルはいつも受付にいるので、転移魔法だけで跳んでしまった。
研修所へ向かおうとすると、ジェニファーが器用に片目をつぶってダグラスに笑いかけている。
「ダグラスさん、また今度飲みに連れて行ってね」
「ああ、またな」
ダグラスが小さく手を振ってそれに応じた。
「待て待て、ダグラス。お前、いつ彼女と飲みに行ったんだ?」
「先々週の仕事上がりかな。他の受付の子らと一緒に。レミアルもいたぞ」
「な・ん・で! 俺を誘わない?」
「お前、9時過ぎたら眠たくなるだろう。睡眠不足だとますます凶悪ヅラに拍車がかかるしな。みんな気を遣って誘わないんだよ」
確かに、俺は睡眠生活を優先する。お昼寝も邪魔されるのを嫌って条例を作るほどだ。ちなみに、夜の8時以降の往来での騒ぎも禁止だ。
だが、遊びに行きたいし、飲み会だって大好きだ。
特に受付嬢はレベルが高い。
みんな元冒険者でランクA以上だけれど。
強さに目を瞑れば、楽しい女の子たちとの飲み会なのだ。
「次は俺も誘ってくれよ」
「次の日、睡眠不足のイライラを俺にぶつけないと約束するなら、呼んでやる」
「わかった、約束する」
俺が真剣に頷けば、ダグラスはくしゃりと俺の頭を撫でた。
了解の合図だ。
こういうところが兄貴分ぽいところだと思う。
そして俺がダグラスに頭が上がらない所以だろう。
俺は足早に外へと向かって進むのだった。
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