15.冒険者の称号プレート
引き続きよろしくお願いします
「うっわ、見事な凶悪ヅラだな…昨日は眠れなかったのか?」
ギルド長室に入るなり、先に来ていたダグラスが目を丸くした。
自覚はあるので、そっとしておいてほしい。
「なんだ、何か悩み事か? お前、顔の割には繊細だからな」
「ダグは顔の割には鈍感だよな」
眉間の深い皺がデフォルトの俺に対して、ダグラスは好青年だ。
顔もそれなりに美形の部類に入るため、モテモテで。
だが、本人の性格はいたってのんびりとした図太い神経の持ち主だ。
討伐依頼で、オークゾンビの群れに囲まれ腐臭を一日中嗅いでいたにも関わらず、焼いた肉がうまいとガバガバ夕飯が食べられるほどのツワモノなのだ。
あの時のパーティメンバーは5人だったが、今でも語られるほど、ダグラスの神経は図太い。
どうしてその無神経さや鈍感さが、女共に伝わらないのか不思議でしょうがない。
初見で悲鳴をあげられ、遠巻きにされる俺のほうがよっぽど気配りができるというのに。
決して、羨ましいとは、言わない…
滅しろ、滅びろとは思うが。
「昨日の報告だが、お前が半魚人どもを連れて行ってくれたおかげで、街の混乱は治まった。市民も冒険者たちも落ち着いて、北門の兵士も眠っていただけで無傷ですんだ。半魚人にケンカを売った冒険者もいたようだったが、そっちは厳重注意しといたからな」
フェーレンには街の中にいる魔族や魔獣に手を出してはならないという条例がある。破れば罰金だ。手を出す前に俺が駆け付けたのだろう。
「ただ、ちらっと深淵の大森林を覗いてきたが、あっちはひどいもんだ。死体がゴロゴロ転がってたぞ」
椅子に座ってダグラスを見上げると、彼は報告書の束を差し出してきた。
ぱらぱらとめくりつつ、必要な情報を拾う。
「人狼の里の襲撃者は10人程度と聞いたが?」
「それ以外にもいたのかもな。まあ、とばっちりを受けた冒険者ということもあるが。出入口付近で5体、少しはずれた場所に8体ほど転がっていたな。ひとまず回収できるだけ回収して、今検分してるところだ」
「ぐちゃぐちゃに食い荒らされた死体を拾ってきたのか?」
「放置しとくわけにもいかないだろ」
これだよ、こういうところが神経が図太いというのだ。
朝飯を思わず戻しそうになりながら、俺はなんとか声を出した。
「で、襲撃者の正体は何かわかったのか?」
「どっかの金持ちか、貴族から依頼された冒険者ギルド所属の者たちだ」
ダグラスは執務机の上に、バラバラとプレートを放り投げた。
中指ほどの大きさで指2本分の幅のある金属の板だ。
白金、金、銀、銅、青銅、鉄と種類は様々、表の刻印もA~Eとある。
冒険者の称号プレートだ。または登録プレートとも呼ばれる。
登録した冒険者ギルドが発行しているもので、魔法で名前などを刻印させている。身分証にもなるため冒険者なら見える位置に提げている。携帯が必須だ。
金属のプレートは何を選んでもいい。そのプレートにA~Eのランクを刻むのだ。
ちなみに、金持ちのドラ息子などがゴールドやプラチナにランクEを刻むことがあり、失笑の的になったりする。ケチなランクSの冒険者がブロンズにSを刻印するのも眉を顰められる行為だ。そのため、大体はランクに合った金属を選ぶ。Eなら鉄や青銅、Sなら白金やミスリルだ。
表のランクはバラバラだが、裏に彫られた刻印は共通している。
『バグロード市冒険者ギルド』
「あんのハゲ野郎、いい根性しやがって」
俺の脳裏に隣の市の冒険者ギルド長のスキンヘッドの男の顔が思い浮かんだ。
フェーレンの冒険者ギルドのギルド長になった15歳の時から、散々難癖つけてきた相手だ。
デミトリアスやグアラニーは銀の巫女が狙われ、攫われたのは自分たちの落ち度だと言っていたが、なんのことはない、俺への嫌がらせだ。
それがたまたまあいつらを巻き込んだだけだったのだ。
「ダグラス、出るぞ。ついでにレミアルも連れて行こう」
「了解」
俺はレミアルの元まで転移魔法で跳んだのだった。
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