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14.続・眠れない夜

作業の都合上3話アップしています。

話が飛んだと感じられる方は2つ前からご覧ください。

よろしくお願いします。


とん、と俺の足が客間の床に着いたとたん、ベッドの上で丸くなっていた塊が大きくはねた。


「夜に突然すまない。泣いていたようだったから気になってな」

「…う、うるさくして、ごめん…なさい」


上掛け布団から顔をそっと出したマヤは、嗚咽の合間から途切れ途切れに謝った。


探究者という職業のおかげで昼間のようにはっきりと見ることができる。俺の瞳には涙で濡れた金色の瞳がしょぼんと眇められるところまでわかった。

だから、ゆっくり近づくと、銀色の頭にそっと手をのせる。


「怒ってないから。なんでもいい、話してみろ。どうした?」


できるだけ、優しく聞こえるようにゆっくりと告げながらマヤの頭を撫でる。さらりとした髪の感触が手に心地いい。


「わから、ないけど…夜になった、ら、急に涙が。止まらない、の」


襲撃されて捕まって助け出されて―――目まぐるしい状況の変化から、落ち着いて考えられるようになって、ようやく張りつめていたものが緩んだのだろう。


「素直に泣いておけ。ここは安全だからな」

「あり、がと」


マヤが俺を見上げてふっと笑った。

どくり、と俺の心臓が妙な脈を打つ。突然、病にかかったような居心地の悪さを感じた。


思わず撫でていた手に力を込めてしまいぐるぐると動かすと、マヤの頭はぐしゃぐしゃになってしまった。


「わ、悪かった!」

「ううん、だいじょう、ぶ。あったか…くて、気持ちいい」


とろんとした瞳で俺の手のひらに頭をこすりつけてくる。

なんだかわからないが、追い込まれた気がする。

マヤの熱を感じようとすべての神経が手に集中しているようだ。


「落ち着いたら眠れよ、マヤ」

「な、名前?!」

「呼んだらいけなかったか?」


目を真ん丸にして飛び上がった彼女は、そのままふにゃりと笑った。


「ううん、うれしーぃ」

「そっか。なら、もう寝ろ。おやすみ」

「うん」


目を閉じて小さくうなずく彼女の頭からいつ手を離せばいいのかわからず、俺はひたすらに撫で続ける。


しまった、別の意味で眠れなくなったじゃないか。

これ、どうなったらやめていいものなんだ?


俺は絶望的な気分で、マヤが可愛い寝息を立てるまでベッドサイドに立ち続けるのだった。




お読みいただきありがとうございました。

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